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「…はい。
なんでも徳田は相当なエレボス信者のようで。
3年前、テレビ局にトラックで突っ込んで死刑判決になったんですけど…その時に突っ込んだテレビ局が同時刻に放送していた番組が、官房長官の生中継でした」
「官房長官の生中継って?」
「東京湾で水上爆発が起こったんですよ、原因不明の。それについての会見でした」
「…なるほど」
「徳田は、自分はエレボスの一員だと言い張っていて…。話にならないんです」
「一番最後の要求は、今から何分ほど前で、なんでした?」
「…15分ほど前に、日本自衛隊員の情報公開を…」
「自衛隊?」
つまり。
「その徳田の要求、全て飲みましょうか」
「…それは本気でおっしゃってますか?」
「本気も何も大真面目です。
ここは心理戦と行きましょう。勿論、要求なんて飲むふりをすればいいんですよ」
「…え?」
「俺の推測ですが。
要求の電話で犯人の声、つまり死刑囚徳田の声を聞いた人はいますか?」
そう言うとその場の全員は、顔を見合わせ、「いや…」と言った。
「姿は?」
「それが、一度も姿を現していないんですよ」
やはりそこは不自然に感じていたのか。だから3日も難航したのか。
「つまり最後に姿を見たのは3日ほど前か…」
多分予想は外れてないだろうな。
「官房長の娘さんらしき声は入ってますね。
人質の声は確かに聞いているのに、犯人の声、始め以来誰も聞いてませんよね。
電話を掛けてきてるの支配人なんでしょ?つまりこの犯人、いまここに存在しているのかどうか、誰も確認を取れていないってことですよね」
「まぁ、はい」
「俺の予想を話すと。
多分、徳田はもう仏になってるんじゃないかな。俺的には、一流ホテルのフロントがどうしてこんなにあっさり客を残したままホテルを乗っ取られたのか、ここもポイントかなって思うんですよ」
ホテルが外部と接しているのは今俺たちが立ち往生している入り口と、裏口。あと窓。
「裏口の人員配置は?」
「一応裏口にも3人張らせて、待機してるのが15人ほど」
「3日間変わらず、ですか?」
「いえ、交代制ですが、」
「そのパソコン借りていいですか?」
先ほどスーツケースに入れてきたパソコンを取りだし、ケーブルに繋ぎ、FBIに繋ぐ。
「このパソコンに、この事件に関わった者全員の、警察及びマトリの個人データをください。
潤はこっから、ホテルの従業員の当日のシフト、空室状況と客のデータ、これは名前だけで充分だ。あとはこの日に入ってない従業員のデータも出来るだけ調べて。俺はその間裏口に行ってくる」
「あぁ、当日のホテルの空室状況と宿泊客、従業員情報はこちらで押さえてありますよ」
鑑識課の制服を着た男がふと、捜査資料を持ってきた。少し天然パーマっぽい、中年くらいの男だ。がたいがよく、精悍な顔立ちだ。
「申し遅れました。鑑識の猪越《いのこし》と申します。
まずこちらが当日の空室状況とです。官房長一家はこちらで…」
お。
なかなか優秀な鑑識だ。説明が分かりやすい。
だがふと隣を見ると、潤がいなくなっていた。
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