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『お前は母さんに似て綺麗だな』
そう言って身体を舌で舐め回す父親への嫌悪感と。
『お前なんて、死ねばいいのよ』
冷たい目で首を絞める母親への罪悪感と。
『あの人が最後に残した宝だからね、お前は』
父親の葬式で手の平を返したように愛撫する母親の指先が。
もうわからない。
なんなんだよ。
大人って、なんなんだよ。
快楽って、なんなんだよ。
「ぅぁっ…!」
目を開けたら見慣れない天井があった。
夢か。
は?
てか、どこよここ。
「早かったな」
真横から声がして見てみると、赤髪が、俺が寝ているベットに腰掛けてタバコを吸っていた。
いや、これ本当にタバコかな。
「今から風呂入ろうかと思ってたんだがな」
「…どこ、ここ」
「さぁ?新宿」
「んなことはわかってんだよ」
どうやら運ばれてすぐらしい。お互いスーツのままだ。
「お前何したの」
「まだなんも」
「酒になんか入れたでしょ」
「ちょっと気持ちよくなる薬だよ。いい夢見れた?」
「あぁ、最っ悪」
「そりゃよかった」
そう言うと赤髪が俺に覆い被さってきて唇を塞がれた。
酸欠なんだよこっちはよ。
けど自分の嫌いなところの一つ。
離れた顔がいやらしく笑って言う、「案外乗り気じゃん」
「死ねばいいのに」
って、俺は誰に対して言ってんだろう。
「あぁ、じゃぁそうしようか」
赤髪はポケットからさっきの錠剤を取り出して飲み込んでいた。
「風呂入ってくる。ちょっとしないと利かないんだ」
「じゃぁ俺にも頂戴よ」
そう俺がねだると、赤髪はまた笑い、「お前には違うのやるから待ってろ」と言い、風呂場に消えた。
それを見計らってポケットからまずは薬を応酬。そして自分の数少ない持ち物も確認。とは言っても拳銃しかないけど。
どうやら俺は本当に担がれて来ただけらしい。枕元の引き出しに取り敢えず拳銃を隠した。
ヤツの鞄の中を漁ろうとしたところで帰ってきてしまい断念。
身ぐるみは剥がされてもなんも持ってないし、身体が熱いから水でも浴びてこようと思い風呂場に行こうとしたら後ろから抱き締められた。
あぁ、この感覚。
生きてんのな、俺。
死に損なってるのは俺かも。
「勘弁して」
だめだ、聞いてくれそうにない。
欲情しきった赤髪に、どういうわけか手荒く押し倒されベットに戻った。
荒々しくシャツのボタンを外されていく。
あぁ、バカみたい。
普通こんなの、感じないのに、いつの頃からかこーゆーの好きな自分がいて。
アブノーマルはわかってる。ただ、女でも男でも、優しくされるのは嫌いなんだ。
首絞められるくらいじゃないと生きた心地がしない。
俺はいつでも生きていたいから。
「怖いんですけど」
「そのわりには受け身だな」
「強引だな」
「まぁな」
こんな自分が凄く嫌い。
死にたいくらいに。
「…やめてくれないかな」
「身体はそうはいってないぜ?」
「わかってる。でも死にたくなるから」
「面白いやつ。一回死ぬか?」
やめて欲しい。
これ以上嫌いになりたくない。
そう毎回毎回思うのに。
ボタンが全て外れた頃、赤髪がふと目の前から消えた。
鞄から何かを漁ってる。なんだろ、ゴムかな。
予想に反した。
注射器を取り出されて、本格的に絶句した。
「何それ」
「良くなる薬」
「勘弁して、マジで」
ヤバイ。
応酬とかじゃない。
殺される。
殺される?
「いつがいい?」
「せめて中盤」
「通だねぇ」
死ねよてめぇ。
首筋からの嫌悪と快感。
嫌だ、なんでこんな。
「お前、結構ヤバイな」
ホントに黙って。
「うるさい」
そして下半身への衝撃。いつのまにやら自分は、もう。
「泣かせるって堪んないな」
『泣いてる顔が一番きれいだ』
「あぁ…」
うるせぇうるせぇうるせぇ。
「嫌だ、」
助けて。誰か。
首を絞めて、殺してくれ。
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