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捜査車両に戻ると、助手席にイヤホンをした瞬と、どこかに電話を掛ける諒斗がいた。
「あー、はい、そうです、新宿のえっと…3丁目のホテルメルティ?部屋番は…あ、張本人帰ってきたんで、はい代わりまーす」
そう言うと諒斗がケータイを投げて寄越してきた。
「捜査一課さん。カンカンですよ」
え、何がなんだか。
受け取ってみると、「警視庁捜査一課の|五十嵐《いがらし》と申しますけど」と、凄く嫌味ったらしい口調で名乗られた。
なんだこいつ、初めて喋るにしちゃぁなんかウザいし敵意丸出しじゃねぇか?
「…厚労しょ」
「お宅が噂の王子さまですかスミダさん。さぁてさっきの通報についてご説明願いましょうかねぇ!?」
え、何これめちゃくちゃ喧嘩売られてんだけど。
「はい?なに」
「惚けないで頂きたいもんですなぁ、さっきのホテルでの死刑囚殺人、あんた、関与してませんか!?」
あぁ、やべぇ。それか。
ちらっと見ると諒斗は笑いを堪えるように俺を見ている。
この野郎、なかなかな仕返しだな。
「あぁ、そうなんです。ウチの部下がちょっと死刑囚に殺されかけましてぇ、なんかぁ、でもですねぇ、部下助けに行ったらもー死んでましたよ?なんだろー、怖いですねー」
「あぁ!?んなわけね」
「裏付け取れてんのか?ん?
てゆーかぁー、俺を誰だと思ってその口利いてんだてめ」
「あー、流星ちょっと代われ!はい!」
「え?」
政宗に無理矢理ケータイを強奪される。そして諒斗はその腕で肘鉄を食らっていた。
「すみません、お電話代わりました。副部長の荒川と申します。
はい、はい、はい…すみません。こいつバカなんです。はい、いえ、それはですね、本当なんです。はい、取り敢えず死んでました。はい、部下にはこれから聞いてみます。はい、部長にもよーく言っときます。若いんでちょっとね、許してくださいね」
なんか色々聞き捨てならないんだが。
「いえいえもーホントにすみません。お宅もお宅ですがこちらもこちらですので。今後ともあまり関わり合いなく。はい、では、」
そう言ってケータイを切ったかと思えば政宗は開口一番、「諒斗!こーゆー電話はこいつには代わっちゃダメだ!」と叱る。
「え?俺悪いことしました?」
「いや悪いことはしてない。面倒なことをした」
「ちなみにどういった意味でダメですかね」
「二つの意味だ。一に、こーゆー電話はこいつには渡さない、二に、捜査一課には電話をしない」
「えぇー…なんて理不尽」
「それが大人というもんなんだよ、少年」
潤までなんか諒斗に同情的なんだがなんなんだ一体。
「え、すげぇ釈然としない…」
「取り敢えず一回刑務所入ったらいいんじゃね?お前」
「え、俺お前を助けに行ったんですけど」
「あのな流星…。そもそもあそこで死刑囚殺したのが案外マズかったんだよ、常識的にな。わかるか?」
「は?だってじゃないとこいつ今頃死んでるよ?」
「ここはね、日本なんだよ。犯人とかはわりとそんなに野蛮じゃねぇの!」
「え、でもジャンキーだよ」
「うん…うん」
なんか呆れてるけど何故?
「流星わりとユミルのこと言えないと思う」
「え?」
「てか待った、流星さん、あいつ殺しちゃったんですか?」
「え?はい」
「あちゃー…マジか。なんか銃声したから通報したのにマジか。あんた確かに単細胞だわ。正当防衛適応なのかなぁ…」
え?俺がおかしいのかこれ。
「まぁ高田さんに言えばなんとか…なるだろ。
さてそんなことより。
瞬、いま霞は?」
「Hestiaの中ですがあまり収穫は無さそうですね。ちょっと指示出しますか?」
「いや、むしろ早々に退散した方がいいかもな。なんせあちらさんは今頃死ぬ思いだからな。
はい、金が下ろされた銀行リストとs&wの入手ルート。
まぁここは睨んだ通りゼウスの息が掛かってんな。
あとは薬だが、これはどうも、どっちも服用しなきゃ意味ないようだぞ」
政宗は資料を渡しながら言う。
「つまり?」
「アフターピルの方は自律神経系、そっちの粉の方は脳神経系の成分が入っていてな。言うなれば睡眠薬と精神安定剤を飲んじまうようなもんなんだよ」
「はぁ、へぇ…」
全然わかんない。
「まぁいい。
で、こっちの注射器は…っと」
早速薬品試験管を振ってみている。
「ちょっと持ち帰って慧さんに頼んでみなきゃわからんが、血液反応ありだ。こっちの方がエレボスだな」
「…え?」
なにそれ。
「いや、だがなんとも言えないな。前回押収した薬の中に、そーゆーのもあったからな。
お前ちなみになんで帝都大も視野に入れてんだ?」
「いや、會澤組の潜入捜査の時に…」
「なるほどな…。
帝都にいたぞ。箕原海」
やはりか。
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