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「好きでしょ。雪子さん」
「はぁ…」
あぁ、ここまではっきり言われると。
「多分、そうなんだろう…ね…」
「ったく。わかってたよ最初から」
「おぉ…」
言葉にされたらもの凄くはっきりしてきて鮮明で。
「やっば…」
俺なんで…。
「なんで抱きつかなかったんだー!」
「えぇぇ!何それっ!?」
立ち上がったが思い直してまた座る。
「いや待て、違う違う」
「は?え?おーい…帰ってこーい…」
「いや…」
やっぱ、ダメなんだよな。
俺はどうしたって敵わないんだ。
「はぁ…」
「え?え?光也?」
「あのさ…」
「うん、どうしたんだ…?」
「うん、ちょっと一人にして」
「待った、ここ、俺ん家、OK?」
あ、そっか。
「ごめん、そうやった。じゃぁ、また明日」
「いやちゃうねんちゃうねん!わかった、うん、俺出てく!」
「いや、いいよ…」
なんだ俺どうしたんだ。おかしいぞあきらかに。
「…なんだよ暗い顔しやがって」
「取り敢えず飲むわ。うん、飲む」
「はいはい」
まるで子供をあやすように頭を撫でられ、どこからか赤ワインを取り出してきて目の前に出された。
ロマネ・コンティだと?なんなんだこのおっさんは。
上手そうにおっさんが飲んでるのを見て、俺も一口飲んだ。
やっぱワインはあんま好きじゃないな。
「はいはい、取り敢えず飲んで話せや。俺今の状況だとお前の気が触れたようにしか見えんわ」
「うん、はい…」
取り敢えず酒を挟みながら話したので最早何を話したか自分でもわからなくなった。だがおっさんはそっから情報をうまく拾ったようで、
「つまり雪子さんには旦那がいたが死んでしまった、それにお前はモヤモヤしていると…言うわけですな?」
と言われた。俺の労力が一言でまとまるなんて。
水がテーブルに置かれていた。取り敢えず飲んで落ち着く。
一呼吸してふとおっさんを見ると、何か考えた表情で。相談する相手を間違えたと今更ながらに気が付いた。
「うん、くだらない話してごめん」
「いや、超楽しいよ」
「それはそれでムカつくな…」
「お前のもやし根性はこんなとこでも生きるんだな」
「…わかってるよ根性ないのは」
「でもね…お前のそんなとこも俺はわりと好きだよ、イライラは確かにするけど」
褒めるか貶すか、どっちかにしてくれないかな…少しへこんできたぞ。
「ラッキーじゃん。ぶっ潰す相手いないんだろ?」
「だから、」
「うん、わかるよ。雪子さんは永遠に、生涯を掛けているんだろうな」
「…うん」
「でもそれは確かに捨てられないだろうね。
じゃぁ付き合うくらいは良いんじゃね?」
「え?」
感覚ズレてない?
「それってなんか不倫っぽくない?」
「なんで?相手いねぇじゃん」
「いやいやいや…」
「多分付き合ってってさ、その旦那の記憶を塗り替えるのは無理だよ?しかも罪なことに美しい記憶を残してポックリなんだろうからね」
「そう!そうなんだよ!」
「じゃぁ別に光也は光也なりの思い出の最高を作りゃよくない?」
「お?」
「付き合っていってもし、雪子さんが結婚したくなったら結婚するんだろうし。
相手ばっかり思ってんのはただの押し付けだし独りよがりだよ」
まぁ確かに…。
「お前さ、人のこと人のこと言う前にまず自分をなんとかしろよ、全体的に。自分を持ってから初めて本当に相手に必要なことがわかると思うんだが。
確かに自分のことばっかのやついるけど、お前はそうはならないじゃん?それは充分自分でわかんない?だったらたまには自分からスタートしてみてもいいじゃん」
「ん…?」
話が見えなくなってきたぞ。
「まぁいい、寝よう。明日もあるんだから」
確かにそれが良いかもしれない。
「ありがと…。取り敢えず風呂借ります」
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