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見た目以上に真里が重くて思わず衝撃で咳き込む。
「ごふっ!」
「二兎追ったのに一頭捕まえたー」
「重い重い重い!」
逃げようとするが動けない。てかがっつり腰辺り捕まれてんのがなんか…。
「お前卑猥!」
「あら、なに想像してるの?」
言わなきゃよかった。調子に乗った真里が俺の上に登って来て鎖骨辺りを触られたら硬直するしかない。
「た、助けて小夜!俺食われる!」
「マリちゃん、みっちゃん食べないでー!美味しくないよ!」
そーゆー問題じゃない。けどいいや。
ベットにクマ2匹ぶん投げて手を空けると、俺が伸ばした手を引っ張ってくれている。痛い。そして小夜怖い。
「んあ?子供は早く寝なさい」
「みっちゃん!」
てかこれあれか、必殺をお見舞いしてやるか。
必殺、チン蹴り。と思ったら逆に脚をがっつり捕まれてしまって余計情けないことに。
「うわああ!もうごめんなさい、真里さんごめんなさい本気で許してくださいぃ!」
とかドタバタ暴れていたらついにピンポーンとチャイムが鳴ってしまった。
「あっ」
三人で思わずハモり、取り敢えず一番近くにいた真里が出てひたすら相手に平謝りした。
「食べられなくてよかったね」
「うん…」
まぁ小夜が思ってんのとはまた意味違うけどね。
謝り終えて真理が戻ってくると小夜は両手を広げて俺の前に立ちはだかる。
「食べちゃダメ!」
なんて可愛いんだ小夜。あぁ、世の中に味方はお前だけだ小夜。
「うぅ…小夜、なんて可愛いんだよお前」
思わず抱っこ。某沈没船映画のワンシーンみたくなってる。
「はっはっはー、二人まとめてかかってこいやー!三枚卸にしてくれるー!」
それさっきのネタだろ。
そのうち真里と小夜は二人でふざけっこを始め、最終的に小夜は遊び疲れて寝てしまった。
小夜が寝た頃には俺たちもだいぶ疲れていたので順番に風呂に入り寝る支度を始める。
真里が、風呂に入っている間、歯を磨いて明日の準備をする。漸く風呂からあがった頃には、もうすっかり酒は抜けているようだった。
小夜の頭を撫でていると小夜が寝返りをうってこっちにくる。あーあ、寝るスペースちょっと狭くなったな。
「なんかホントさ、親子みてぇだな」
「そうか?いやー幸せそうに寝るもんだなぁと思ってな」
クマを抱えながら寝てる。今日はどうやらピンクを抱えて寝ているらしい。
「名前聞いた?クマの」
「え?聞いてない」
「ピンクがりんごで、青が確かわさびだったかな」
「何で!?」
「ほら、ちょっと前に好きな食いもん聞かれたじゃん?多分それ。ピンクは光也さんが取ったから光也さんが好きな食いもの、青は俺が取ったから俺が好きな食いもん。だって俺聞かれたときわさびって答えたもん」
「あー、言われてみれば俺もりんごって言ったわ。幽霊子育飴とか答えてたらそれになってたのかな」
「なにそれ」
「なんか京都の飴」
「設定もあるんだぜ。りんごとわさびは先輩後輩で、夫婦なんだって。子供はできにくい体質だからまだいないらしい」
「なにそれ、怖っ」
「体外受精も考え中とのこと」
「え、マジなにその心の闇感」
「多分この前のワイドショーが原因だな」
子供はホントに何でも吸収しやがるなぁ。本気で一歩間違ったら幽霊子育飴にされてたかもな、りんごよ。
りんごを抱えて眠る小夜はとても健やかで伸び伸びとしていた。
「前はさぁ、こんな幸せそうじゃなかったなー」
「よかったじゃん」
「うん。ホントになー。いつまで一緒にいれるかわからんけど、いるときくらい幸せでいて欲しいよなー、なーんてね、考えちゃった。
じゃ、寝るわ。明日のオープンだから」
「あ、あんたそっか」
「お前明日大輔に謝れよ、入ってたら」
「やだよ」
「…まぁいいけどね」
広がった小夜の手を少し退けて隣に寝転んだ。
「あ、そうだ。
今週の土曜は祭り、来月はね、花火あるみたいだよ。小夜連れてこうぜ」
「…」
「光也さんが土曜休みなの確認とってあるから。あとは来月休み取ってね。じゃ、おやすみなー」
相変わらず用意周到だな。
「おやすみ」
と返すと、真里は電気を消した。
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