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それから三日間、代わる代わる病院に通いつめた。代わる代わると言っても、規定でICUには一日6時間しかいられなかったけど。
三日目には脈も正常になり、顔色も血の気を帯びてきて、見るからに回復していた。
だけど意識が戻らなかった。
遥子お姉ちゃんがようやくこっちに戻るという連絡があったけれど、やはり伝えてみればなかなか浮かない。
そう思っていた三日目の昼下がり。
「よう、交替!」
マリちゃんがやって来て交替しようと席を立った時だった。
「あれ?光也さん?」
そうマリちゃんが言ったので振り向くと、みっちゃんは目を開けていた。
「あっ…」
「お…、小夜!看護士呼んできて!そして柏原さんに連絡!あぁ、あとねぇちゃんにもしなきゃ…」
「わ、わかった!」
急いでその辺にいた看護士さんを呼んだ。
「志摩さん?わかりますか?」
みっちゃんは横目で看護士さんを見て、小さく頷いた。まだ少しぼーっとしているみたいだ。
「よかった…みっちゃん!」
マリちゃんはそのまま外に出て二人に連絡を入れた。
「小夜……?」
「みっちゃん!?わかる?」
捻り出すような小さな声。聞き逃さないように近付いた。
「…怪我は?…してない?」
「私は大丈夫だよ、みっちゃん」
みっちゃんの手が右耳辺りに伸びる。弱々しいけど確かに生きている。
マリちゃんも電話をすぐに終えたようで戻ってくる。
「柏原さんが今から来るよ。ねぇちゃんも来てくれるよ」
「真里…」
「なんだよ…よかったよ」
「…そうか」
それから脈とか血圧とか、色々計って取り敢えず大丈夫ということで、すぐに病室を一般病棟の個室に移動した。
そのころには柏原さんも到着。今日の夜の営業はお休みすることになった。
一般病棟に移ったころにはもう、意識もはっきりとしていた。
「おっさん、マジで今回はごめんなさい」
「…おぅ。治ったら鬼のようなシフトにしてやる」
へっへと笑って、あーいたた、とやってるみっちゃんを見てやっと安心した。
「はー、俺生きてんだね。」
「ああ、ちゃんと生きてますね」
「あの女お客さんだよね?」
「そうですよ。俺が悪いの。自棄起こして一回ね。
…この女誰でもいいんだと思ったから。俺もなんでもよかったし。そしたらこんなことになってた」
「バカですねお前。大バカ野郎ですね」
「うん。まさかこんなにね、思い入れられてるとはね…だってあの時、あの女小夜をぶっ刺そうとしてたからね」
「うん」
「てか光也さんさ、あれって…」
そこでマリちゃんは言葉を濁した。みっちゃんがマリちゃんを少し睨んでいた。
「…あの女怖かったでしょ、前から」
「…次から気を付けます。マジでみんなごめんね」
なんかスッキリしないな。何か隠してるな。ピクピクしてるし。
「まったく。モテる男は大変だなぁ」
「ちょっとのことで生死をさ迷っちゃうなんてね」
「お前が言うなや!」
とか言って笑い合っているのを見ると、これでよかったのかなとも思う。
「でもホントによかったよ。お前がいないとあの店売り上げ傾くんだからな」
「はーい」
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