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留まらない。
ただ、垂れ流されて行く日常がどうしてこうも濁流のように見えるのか、意味がよくわからない。
季節はただ過ぎ四季折々が多分、そこにはあり、環境も変わって行くのだろう。
心機一転はある意味狭苦しくて閉鎖的だがそれはそれで居心地を作る良い口実。
偏見や差別を取っ払っいきれないような疑心暗鬼が結局鎮座してしまったような、そんな新境地にまた辟易としてしまい、結局他者を受け入れられなかったのかもしれない。
噂は当初から、真しやかにそこに早くもそこに存在していた。
どうやら、今年の1年生はヤバイらしい。
なんでも、中学の頃にヤンキーをやってた狂犬みたいな奴と、それとつるんでる茶髪の台湾人、定時制に犯罪者がいると。
その噂だけでもわりとどうかしているが、噂は噂である。しかしながらそれは、何かがなければ立たないのも事実である。
いくら偏差値がケツ上等、しかし申し訳程度で腐っても県立高校。しかも進学校と唱ってはいる、こんなところにそんな奴らが何故、来たのか、そもそもの謎だ。
確かに高校は出ておいて損はない、というより経歴である。本当にここはその程度の高校でしかない。
いや却って。
そいつらはこんな高校にしか行けなかった、それが正しい見解なのかもしれない。
田舎から出てしまえばこんなところは一応、県立の進学高校。親の判断が正しいと言えば正しいか、などという共通認識が教師の中には生まれ、結局そいつらは拒まず受け入れる、その体制になったのだと、大人になれば大口を叩けるような状況。
しかし当時の、件の犯罪者と台湾人と狂犬にはその見解は持ち合わせてはいなかった。
|一重《ひとえ》に、つまらん。くだらん。来るべき場所を間違えた。これがあった。
この退屈をどう凌ごうか。彼らの考えはこればかりに凝縮したのだった。
各々他の生徒たちは皆、入学式の段階でなんとなく、噂の全てを察することになる。
まず、県立の進学高校の入学式で茶髪の奴は、一人しかいなかった。
その男子生徒は確かに日本人離れした顔立ちの長身で、そもそも指定の学ランも着る気がないようだ。だらしなく全開けでシャツ出しにTシャツ。
一目だけでは先輩である。
狂犬野郎はというと、まず目付きが尋常じゃなく悪かった。切れ長、と一言で片付けるにしては凶器じみている。
こいつは最早指定ワイシャツなど着ていない。バンドTシャツだろう派手な赤シャツを見せるかの如く、こいつも上着を前開け。長すぎる前髪は輪ゴムかなにかで止めて後ろに流していた。そしてオレンジのクロックス。
これも見た目は上級生である。
そしてその二人の真ん中にいた、犯罪者らしいやつ。
これが一番よくわからなかった。
学ランに灰色パーカー、上着前開け。着崩しよく、ある。
奇妙なのは、学ランだが正直見た目だけでは男子か女子かよくわからない。
色白で目が二重の可愛らしい、何より、二人と並べば頭一つ分くらい身長が小さい。
最早こいつは二人の先輩にカツアゲでもされているのではないかという見映え。しかしどうも、なんとなく3人の中では一番堂々と身構えてるような雰囲気は漂っていた。
そんな三人が、校長の話の最中に悪びれもなく遅れて体育館に入ってきて、新入生の一番後ろの、遅刻者用の席に纏めて座ったのなら、誰もが察するのは当然である。
新入生同士は最早それっきりその三人組と目を合わせるのは止めた。恐らく襲われてしまう。
しかしバカ高校の上級生達はまた別である。
あれが噂の一年坊かと動向を眺めていればどうも、真ん中のチビは首から下げていた青いヘッドフォンを耳にして最早校長にケンカを売っているとしか思えない。
たまに茶髪にヘッドフォンを貸していて、意外にもその二人を嗜めているのは狂犬野郎で。しかもその狂犬のなんという優しい笑顔。
つくづくこの三人組の関係性がよくわからん。誰が見ても得てして奇妙であった。
いくらバカ高校と言えど入学式からそこまでバカそう、というよりは抜け感のある生徒はなかなかいない。
何故ならここはバカ高校。たまにこうしたやんちゃな奴が出てきてしまう。もしくは一年からやんちゃだったとしても大抵は上級生の高校デビューのヤンキー紛いに叱咤を受けてしまうものだ。
「お前ら名前は?何組だ、ん?」
休憩時間だった。
三人がまず叱咤を受けたのは体育会系な、スポーツブランドを着た若手教員だった。両サイドの剃り込みは最早なんのために入れているのか、理解が出来ない。
果たしてこの教師、恐らくいっても30代だと思うが、年配の体育教師(三人の中で最早彼は“たいいくのせんせー”になった)に、「んなん頭丸めちまえよ」とか言われないだろうか。と考えたのは真ん中のヘッドフォンチビだった。
「わかんねぇっす」
そう教師に答えたのは茶髪だった。それに教師は興味もなさそうに、しかし嘲笑だけは浴びせ、「そうか、頭どうしたんだお前」と言った。
何故か、教師の視線は茶髪本人でなくチビに向けられている。確かに、三人の中ではある意味このチビが一番目立つ存在だが。
しかしチビは教員の目を見ない。ただ、チビは件の茶髪を見つめていたが、「ハゲてないよね?」と掠れた声で茶化すように茶髪に言えば、「うるせぇ」と優しめに叩かれ、頭を撫でられていた。
よく見れば茶髪の学ランの裾を掴むチビの手が、微かに震えていたのだ。
「これ地毛なんですよマジで。脱色とかそーゆーのもしてない。ほら、俺の国ここより少し気候が暖かいから」
「は?」
そこで教師は漸くピンときた。
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