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依田弟がふぅ、と一息吐いて変態要因、勇咲くんを見下ろしたかと思えばふと、勇咲くんの前にしゃがむ。
しかし勇咲くんは飛び退くように後ろへずざっと手をついた。
頬杖付くように眺める依田弟は「あんたってバカよね」と突然なるカマ口調。
マジかー。
弟なんてトリッキーなの。
「待った、待った、ナニソレ俺全くの飛び火。凄い意味わかんない何この被爆感。俺そーゆーんじゃないやん、ねぇ!」
「あんたこの期に及んでまだ言います、全く」
次の瞬間。
依田弟、着物を捲し上げ見せつける。
初めは「うわっ、」となった勇咲くん、しかしすぐに「は?」と、マジマジと依田弟の股間を見つめ、真っ青な顔で見上げては
「え、女装癖なの?」
「バカぁ。良く見てよないでしょ?」
「うんない。なんで、え?」
「なんならほら、手を貸してよ涼一さん」
「嫌だよ止めて本名も止めてようぇぇ、やべぇシュウマイショック気持ち悪い、帰りたいぃぃ」
ムリヤリ手をとられ懐に誘われてしまった勇咲くん。「ひやぁぁ」言いつつ「ん?」着物からでもわかる。明らかにもみもみしている。
「…え、なにこれ」
「ちょっと出てきた。
皆様黙ってましたけど僕、性転換手術したんで一門に黙っててくだ」
「待った春暁、ここは一門の本拠地だよ!」
依田、ツッコミが違うと思うが。
若干顔が蕩けたところで依田弟は「あのぅ、」とゲロ甘。
「あんただってゲイなんでしょ兄さん!」
「は、へぇ!?」
試しに母を見てみたら。
失神してるんじゃねぇかと言うくらい目をかっ開いてビビっている。
目線を戻せば弟、懐に突っ込んでいた勇咲くんの手に、明らかなる婚姻届けを握らせて言った。
「これ、あんたの直筆でしょ?涼一さん」
「は、待って、本格的に覚えが」
「しかもよく見てよ、これコピー。つまり、もう出しちゃったからね」
「え゛っ、」
驚愕していた。
師匠、恐る恐るその紙を隣から覗いて「あっ、」と言った。
「勇咲、お前この前の忘年会、花に言われて酔っぱらって婚姻届け書いてなかったか。誰かと結婚するとき用とか言って」
「え゛っ、なんで、ちょ…。
あっ、思い出してきた待った、ならこの妻の欄、まだ名前なんて」
「そのあと然り気無く僕がパクって、花師匠から上手いこと言って実印を借りて僕がここに書いてお役所へ」
「なんでっ!?なんの恨みなのっ!?」
「こんな形で申し訳ないけど、僕貴方のことが」
「いやめてーぇ!マジでやめてー!」
「凄く好き。男らしくて」
にやっと笑ってその手を握り、すりすりしているのに、
泣きそうな勇咲くんが依田と私に助けを求めるように見た。
ぽかんと口が開いた依田、取り敢えず唖然としたままぱち、ぱちと力なく手を叩いた。
「正直ビビった」
ですよね。
略奪というか、血は争えないとかそんなのまず置いといてなにそのぶっ飛び方。いま思考回路が超高速で脳内くまなく三週くらい旅してるけど。
「えっ…と、つまり俺の夫は弟の夫で俺にはまず弟がいなくなり女形を務めてだから長男が俺しかいなくなってそこのババアがいま衝撃で死んじゃうんじゃないかみたいな」
「依田ちゃん!混乱は俺の方が凄いから一回黙って!」
「えつまり君は俺のおとう…い、妹とは遊びだと」
「違うんだって覚えがないって」
「覚えなく襲っちゃった訳え!?ねえ!」
「違う依田ちゃん!」
「いや若干強引でしたよ、僕が」
「はぁ!?」
「春暁、僕っていうのどうかと思」
「そこじゃないよね依田ちゃん!」
「てぇか」
一言漸く言ってみることにした。
「え?あたしらとそれ変わんなくね?」
シーン。
え、的を射た気がしたんだけどダメ?
「…それなら勇咲くん、責任を取るのが男かと」
「違ーう!
まず弟ぉ!お前何してくれてんだわれぇぇ!」
「仕方ないじゃない好きになっちゃったんだから!お母さんの教訓よ?「欲しいものはなんとしても手に入れる」って!」
「ろくでもねぇよあんたらぁぁ!
待って、俺確かに変態だけど凄いノーマル。いや、ノーマルじゃないけど凄いそーゆーの普通!だから絶対過ってないんだけど!」
「あんたがノーマルっぽいから取ったんだけど」
「待て待て待てぃ!何故だ、何故俺なんだ」
「兄さんの物は僕の物的なヤンデレ攻め」
「良くわかんないけど怖い!依田兄助けて!」
「でも結婚したんじゃ」
「離婚してぇ、お願い僕お前みたいなバカ嫌い〜!」
理性をなくしたらしい勇咲くん。
言われて「ふざけないでよ!」とキレて勇咲くんの首を絞めかかる弟にまわり騒然。
仕方ないわね。
「うるさいわぁぁこの豚共ぉぉぉ」
立ち上がり障子を蹴っ飛ばして倒す。皆ストップ。
バカ共。
あたし、女王なんだからね!
「はいぃー!ぶっ飛ばされたいやつ並べぇぇ!つーか、なんなんだお前らぁぁ!
いーかシャバ僧、てめぇなぁ、んなんで家督破棄ならあたしもするわぁぁぁ!あたしを誰だと思ってる、その変態三味線のただのレズビアン同居人だわこのクソぉぉぉ!」
色々何かを蹴っ飛ばした。障子はとっくに外れて倒れた。
一同、腕組みあたしを女神のように見上げている。気持ちい。なかなかキテるぞ依田家。
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