7
青柳本家に着き青柳は真っ先に倉庫だかなんだか、そこへ二人を連れて行った。
雪は生まれて初めてこの家に来た。だが思うこともないまま倉庫の方からはすでに、打撃の音やら何かを喋る声やらが聞こえてきて、嫌でも状況はわかった。
手に手錠をかけられた浩は、3人くらいにリンチされていた。
二人が着いた頃にはもう、抵抗するほどの体力、それどころか喋ることすらしなくなるほどだったらしい。
倉庫を開けた青柳は開口一番で「死んでねぇだろうな」と舎弟たちに言い捨てた。
ぼんやりと見上げた浩の視界に雪が映ったかどうかは不明だが、まぁ、恐らくは認識したようで、何かを、恐らくは助けを請おうとするのだが、その浩の眼前はしゃがんで覗き込む青柳で占拠され、痛み、皮膚感覚は損なわれているようだが頭をひっ掴まれ「生きてんなぁ、」と吐かれた。
「さぁて、一銭にもならねぇしさっさと済まそうか、てめえらノミ持って来てんだろうな、あと医者呼んどけ。
よかったな森山。お前の弟たちのお陰で金はなくとも死なねぇみてぇだわ。今時こんなヤクザいねぇぞ、感謝しろよシャバ僧。
まぁ、一生出てくんなよ、ブタ箱よりか良い暮らしさせてやるからよ」
後ろ手に舎弟からノミを受け取った青柳は二人に振り返る。
先程までと打って変わり、酷く凶悪な殺人犯のような目で二人を見ては「やるか?」とノミを見せつけて言ってくる。
二人とも顔を反らせば「あぁそうかい」と返ってきた。
浩の断末魔のような枯れた悲鳴が響いていた。それだけで目を閉じる。
歯を食い縛って聞いているが、はっきりわかったのは「痛ぇ」だかなんだか、それがわかった単語で事を知るくらいだった。
本当にすっぱりと済ませてしまったようだった。それは行為を目撃したかどうかよりも、遥かに恐ろしい心境に至った。いっそ見た方が怖くなかったのではないかとすら、思える。
浩の悲鳴の合間に「よぉ、」と、やはり冷淡な青柳の声がした。
「こんな一銭にもならねぇもん、いらねぇからどっちかこの小指持ってけ」
そう言われてしまっては、つくづくこの男は、もう生きる世界すら違っていたのだと二人は悟った。
糸が、ぷっつりと、切れたような気がした。
- 44 -
*前次#
ページ: