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 青柳本家に着き青柳は真っ先に倉庫だかなんだか、そこへ二人を連れて行った。
 
 雪は生まれて初めてこの家に来た。だが思うこともないまま倉庫の方からはすでに、打撃の音やら何かを喋る声やらが聞こえてきて、嫌でも状況はわかった。

 手に手錠をかけられた浩は、3人くらいにリンチされていた。
 二人が着いた頃にはもう、抵抗するほどの体力、それどころか喋ることすらしなくなるほどだったらしい。

 倉庫を開けた青柳は開口一番で「死んでねぇだろうな」と舎弟たちに言い捨てた。

 ぼんやりと見上げた浩の視界に雪が映ったかどうかは不明だが、まぁ、恐らくは認識したようで、何かを、恐らくは助けを請おうとするのだが、その浩の眼前はしゃがんで覗き込む青柳で占拠され、痛み、皮膚感覚は損なわれているようだが頭をひっ掴まれ「生きてんなぁ、」と吐かれた。

「さぁて、一銭にもならねぇしさっさと済まそうか、てめえらノミ持って来てんだろうな、あと医者呼んどけ。
 よかったな森山。お前の弟たちのお陰で金はなくとも死なねぇみてぇだわ。今時こんなヤクザいねぇぞ、感謝しろよシャバ僧。
 まぁ、一生出てくんなよ、ブタ箱よりか良い暮らしさせてやるからよ」

 後ろ手に舎弟からノミを受け取った青柳は二人に振り返る。
 先程までと打って変わり、酷く凶悪な殺人犯のような目で二人を見ては「やるか?」とノミを見せつけて言ってくる。

 二人とも顔を反らせば「あぁそうかい」と返ってきた。

 浩の断末魔のような枯れた悲鳴が響いていた。それだけで目を閉じる。
 歯を食い縛って聞いているが、はっきりわかったのは「痛ぇ」だかなんだか、それがわかった単語で事を知るくらいだった。

 本当にすっぱりと済ませてしまったようだった。それは行為を目撃したかどうかよりも、遥かに恐ろしい心境に至った。いっそ見た方が怖くなかったのではないかとすら、思える。

 浩の悲鳴の合間に「よぉ、」と、やはり冷淡な青柳の声がした。

「こんな一銭にもならねぇもん、いらねぇからどっちかこの小指持ってけ」

 そう言われてしまっては、つくづくこの男は、もう生きる世界すら違っていたのだと二人は悟った。

 糸が、ぷっつりと、切れたような気がした。

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