セミ×赤トンボ


 緋色の蜉蝣が、眩暈に散らばって。
 地平線なんて向こうの向こう。あの線のように見える、世界の果てまで翔んで行けるか陽炎に問う。

君、どうやらここまで来たらしいよ。

 その機翼のような観念が胸に押し寄せる最後の季節。ざわざわ、漣に立つのはあの蒸せ返る蝉が降る季節。

来年、また来れるのかな。

 壁は狭く白い、
いまは健やかに健康を待つ君に僕はまたこれが言えずにいる。今年は君が言う「蝉ころり」も見ることはなかったね、あとは君が嫌いな「ギョロ目」を待つしかないよ。

何年先はわからない。
だから少し先の、線を君と思い描きたかった。

 僕が君といてここで出来ることは、海とは遠い物語をこうして、君が眠るまで側にいて、一緒にあの地平線ほど遠い窓枠を眺めて

「綺麗だね、きっと暑いんだ」

と、強がりを言うだけなんだけど。

 君の浮遊は夢の中だけであって欲しい。そこは現実と掛け離れているはずだから。どんなに透明な翅で翔んで行くんだろう。

 ねぇ、いつから啼いているの。僕にこっそり教えて欲しい。
 二人だけになったこの白い箱なら、誰にも聞こえないから。

 耳鳴りに似たその一線から漣が退くように。
 また今日も、道路に蝉ころり。消灯時間で、一人の帰路が蝉騒。季節が、変わってしまった日本の夏に。

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