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「Kei=Aragami and Lucana=Campbell !」
朝の、光の中。
騒がしい。
君は穏やかな表情で眠っていた。
僕は凍えそうなこの場所でそれを見つめている。生臭い。
生臭い。
警察が介入したところで僕の薄ぼんやりとした意識が少しは覚醒した。
痛い。
「くっ、」
痛い、
「C'est…」
痛い、痛い?どうして、息が苦しい、苦しい?
歯を食い縛る、感覚もなく。
一体ここは、どこなんだ。
風呂場で。
覚えている、僕は、
「…ぅか、」
ユカ。側にいる。抱き合っていたい。僕はもうすぐ飢餓に飢えた子供たちが寂しい目をして僕を見ている、ユカ、僕は大丈夫だよと答えてきたけどユカ、知っているんだこの子達が何処へ行くのか髪が、綺麗、
僕のこの手は何故血塗れなんだ。
待て、僕のユカは、今ここに穏やかな顔をした僕の天使は金髪が、踞るように丸まっているこの白い肌は赤茶色、少し開いたその唇は血の気がない、どうしてナイフ。
僕はどうしてナイフを今この少女から引き抜いたと言うんだ、
「Est-il en vie?」
どうして。
悲しいほどに抱き合った君は、一体誰だと言うんだユカ。
「お前が荒神恵か」
警官がしゃがみこんで聞く、ユカに手を伸ばそうとするそれを払おうとするけれど「オピオイドだ、」もう一人の警官がプラスチックボトルを手にする、待てと抵抗をしようとするが「お前がルカナを拐ったのか」…。
「は、」
「キャンベル協会から。隣の廃教会で死んでいた仲間はお前が殺したのか」
「なっ、」
廃教会で。死んでいた仲間?
痛覚もないままユカは僕の手から離され──
血塗れで眠る少女の腕が僕から剥がれ落ちた。
「え、」
「お前が殺したのか、おい!」
傷に響いた。
「彼女は一体誰ですか、」
「このイカれ野郎、お前が教会から拐った孤児だろうが!!」
「こ、」
孤児、
血反吐が腹から逆流した。
ユカ、
「ユカは死んだんですかっ、」
「はぁ?」
ユカは、ユカは、壊されていく。血塗れで裸のこの子は僕の、なんだったんだ、一体なんだった。僕の憧れで恋人でそれはとても綺麗な金色の、太陽に透ける髪で、目は真っ青で白い肌。
刺繍しかない純白でふわふわなワンピースを来た君は過去に、僕へ振り向いて笑っていた、あの恍惚を粉々にしたような純真な母に見せられた絵本の天使は。
あぁ、そうか。
なんの意味もないと、知る。
朝がきたんだ。
また僕らは空っぽになって。
奇声が聞こえた気がした。それに黙れ、だとか、憎しみのような表情だとか、そうか僕はあの孤児たちと、嘘を吐いてきた善人面に遥かに、疲弊していて。意識も呼吸も浅いんだ、そうか僕は嘘を吐いて吐いてわからなくなっていた、僕はひとつも善人なんかじゃなかった。
悲しいほどに、満たされて、空っぽになる。
一体ここは、どこなんだろう。
「お前、」
痛い、痛いよ。
「やめろ、おい!」
なにかが腹に、ああナイフだ。ぐちゃぐちゃ、ぐちゃぐちゃ、身体が勝手に動く、あぁ抜かれる。警官かな、僕のナイフを抜いてくれたのは。滑り落ちたら少女の足が側にある。ねぇ君はどうして僕についてきたんだろう。あそこで汚されていた君はきっと悲しかった、そう思いたい。恍惚なんかじゃなかった、じゃぁ天使でもなかったんだ。きっと孤児院からこの足で逃げ出してきたんだろうね。
なにかが聞こえる、なにかが聞こえるけど僕は善人でもなかったし君は天使でもなかった。
だけど悲しいほど満たされていた。
悲しいほどに抱き合って。
「おい、お前、」
遠くなる。
朝が来たらまた僕は、一人になる。一体ここはどこだったんだろう。
「…ユ、」
一体君は、誰なんだ。
「Adieu」
と。
後に「またね」だと知る僕は、もしかすると、泣いてる君に会いたく、なった。
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