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 新撰組も、最近人員が減った。あの殺伐とした空気は一層濃くなるばかりで。

 以前いた半数が伊東と共に離脱したと、沖田から聞いた。最近、一人で暇らしい。言葉は少なくなったが、それなりに話してくるのだ。

 顔を覆う布を持参するようになった。はっきりと、土方直々に沖田の治療を任されたからだ。
 つまり、労咳だとはっきりとわかったのだ。それは、生前に藤嶋が耳打ちをしたらしい。

 沖田も当たり前に自覚を持っているから、隠さず布を覆って治療をしている。こうして生計を立て始めた。

 頼んできた土方自身はそんなわけで忙しく、すれ違うことはあれど、面と向かって会うこともなくなってしまった。

「今日も来たの?薬屋さん」

 不思議だ。
 皆こうして死にそうに笑うのだから。

「はいはい、来ましたよ」

 まずは窓を開ける。
 日課になっていたが「別に、いいのに」と、今日はやけに陰鬱そうだ。
 三日前はそうでもなかった気がするが、病は気から。「出稼ぎですよ」と軽口を叩くに留める。

「…寺、二人になっちゃったんだっけ?」
「ええ。せやけどまぁ、坊主丸儲けですよ、土方さんがたんまりと握らせてき」
「斬っちゃったぁ、山南さんなんさん」

 ふと言った一言に振り向けば、沖田は陽の光から顔を背けている。

 翡翠は沖田の側、薬箱の隣に座り、薬剤を選びながらふと、床の間を眺めた。
 刀が、ない。

「…あれ?」
「あー、いま一本、修理中なの」
「もう一本、あの刀は?」
「んー、ついでに溶かそっかなって」

 毎回通り、沖田の腕を握る。1,2,3…。

「溶かす?」
「先、折れてたからね」

 24。

「…あぁ、そう言えばトキさんの錫杖刀もついに錆びましてな」

 108、良し。
 脈を測り終え、出る前にこっそり拝借した錆刀を見せる。

「え?」
「いやぁ、元からなんやあのハゲ腐り坊主が昔トキさんの父上のな、首を落としたもんやったらしく、縁起でもないしわての墓の卒塔婆にしてやっとったんですわ」
「…ナニソレ斬新」
「けどまぁ…たまーにこっそり磨いとったんやけどやはりあかんようやね。今朝方、埋めてたところがパキっと」
「…小刀くらいにはなりそうだね」

 何故か沖田は急に目を光らせそう言った。
 「まぁ、なるんやない?溶かせば」と特に考えずに答えたが、「じゃあ守り刀にしちゃいなよ」と提案してきた。

「…ん?」
「まぁあんたいっぱい持ってるだろうけど、あのぼーさんは丸腰でしょ?」
「んーまぁ……」
「まぁ、でも嫌か。打ち直したらと思ったけど…」
「…あんさんもいま、そんな気分で?」
「え」
「いやぁ、あんなに気にいっとったやないですか、あの槍みたいな刀」
「……そうなの〜っ!でもさ〜」
「魂抜きしました?」
「え」
「あしてないんや?なるほど……」

 沖田が咳き込み始めたので、さっと手拭いを渡し、そういえばと思い出した翡翠は、「少々失礼しますね」と、沖田を置いて厨房に向かうついで、極悪顔の土方の部屋を訪れた。どのみち許可が必要だ。

 ガラッと、無礼も何もなく襖を開けた翡翠に驚き、「…んだよ!」と言った土方に「刀と厨房」と言えば、土方の眉間の皺はより深くなった。

「…あぁ?」

 喧嘩腰の土方に言葉少なく説明をしたあと、「じゃ!」と厨房を借り米を炊いておいてやった。

 目的の物を手に入れた翡翠は沖田の部屋に戻り、薬嫌いの沖田に、問答無用で磨ぎ汁と一緒に飲ませた。
 鼻をつまんでグッと飲む大男。これが道場一だった男だ。

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