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「あぁ、まぁなんで昨日来たんややのなんやの勿論朝から言われましたんで、ウチに遊びに来たやらなんやらと言うときましたわ。わてはトキさんと逢い引きしにと」
…あぁぁ、嘘じゃないようなだってあの店行ったしただ、あぁでも確かに面倒ではなくなったような気はしなくないけど…。
「…もー少しなんかなかったわけ?別に良いけど複雑じゃんそれ…」
「あ!土方さんがものっそい嫌な顔してましたよ!はは!ざまあみろ!と思いましたら…。
最近自分が作った規則が厳しすぎて衆道が蔓延しかけているらしいです。どうしよって……っはは、あー思い出したら笑えてきた、あの顔!藤嶋さんがウチの店に流しとるらしく」
…えぇえ…。
「ふっ、」
意味が染みてきたらやはり「っはははは!ナニソレおもろっ!」と笑えてしまった。今朝の、あの疲れ顔が浮かんでくる。
「アホなんかあの集団っ!」
「いやぁでも今回大業やったみたいでっせ。お金も出るからなんとか遊郭解禁しよかなって」
「は!?んな縛ってたの!?あの、あいつらが!?」
「そうそう」
「うわぁ調子に乗りすぎだなぁ。欲はかかんのが一番良いな。
あ、そうそう俺、離宮行ってきたよ」
「……は!?
いやぁまぁええとこ連れてかれたんやろ思たら…離宮!?離宮って、あの!?」
「そう。そして会ったわあの、さ…えっと佐久間象山に」
「なして!?」
「わからん。けどお前の気持ちはわかったわ、あれ眠いし狂ってんな〜。
まぁ要するに一橋慶喜になんか、船やら開国論やらもう何言ってんのかわからんかったわ」
「うわぁ……いなくてよかったぁ。なんやそれ不思議空間やん」
「本当になんか…あぁまぁわかったのは察しの通り将軍が死にそうで、まぁ、あの人がなったら解散だってよ、幕府」
「えっ……」
大分端折ったがまぁ、事実だ。
なるほど、昨日のこともあり離宮なんぞだったのか。というか、将軍すらいなかったのか。
それでもいたら大事だったな、確かに。
「…それって、」
「あぁそうだな。不毛だ…と、こんなの多分、本人と佐久間象山しか知らないよ」
「…じゃぁ、いまやっとることって、なんなん?あん人らも…」
「…先が見える見えない、どちらが良いかは見て考えた者次第だな。言ったよ、あんた将軍向いてないなと。
でも、逆説な気がしてな。矛先はそれなら慶喜に向く、と」
「…そんなん、」
「わかるよ、穢れるよな、心が」
誰しも、誰のためだかわからぬ供物を捧げている。
「…早くしないとな。神様、仏様なんて必要ないかもしれないわ」
時は、それでも流れていく。我々は見守るしか出来ない。
手紙の返信を考えた。
自分はどこかに…石を投げているのかもしれない、それは一体どこなのか。
だからこそ“無”でしかなかったと、思い知った。
数日後、佐久間象山が暗殺されたという話は、世の中を震撼させたのだった。
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