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「…ははは!その気になってきたね?」
「…えぇ、」
的を射られればあぁもう、何をごちゃごちゃ考えているのか、考える必要もないまま彼は乳首を吸い始めるし、項に唇をソフトタッチで這わせてくるし。
男だ、間違いなく。
暫くそのままでされるがまま、体温が当たり前に上がっていって。それは自分ですらわかるくらいの物。互いの体温にこの肌の裏側は、と感じたくなる、気がしてきて。
…なんだか、頭の血管切れて死んだらどうしよう。
社長のギラギラな目は、仕事のそれともまた違う。明らかにもう少し本能的で…こちらをじっとり焼き殺そうだとか、そんな感じの。
現にどんどん、膝が焼けそうに熱い。
自分も染み付いたものだ、考えなくてもベッドの側にあるローションやコンドームを漁って手に取る。
その手をふと取られ、「あぁ、なるほど」と言った社長にまた一度我に返る。
「準備って、心の準備じゃなかったのか」
え?
……あ、そっか。
そーだよね、この人ノーマルだったわ…とまるで変な瞬間で完全に現実が迫り始めたが、まず社長は律からローションを取り上げ勝手に開けながら「やらせてやらせて」と、結構真剣に言ってきた。
「自分でする気だった?もしかして」
「え、あ、」
「まぁ俺男って初だけど女とはあるからダイジョブ安心して。こう……筋肉解せばいいんでしょ?」
え。
何その取扱い説明書。
……男女ってわかんないけど、それ、普通なのかな、え。
いや、手間を考えたら多分そうでもなくないか、え、例えばハプバーの人たち……は、置いといて。街歩いてる人とか、あるもんなのかな…。
と、無駄になりそうなところで穴がなぞられ、ビックリして力が入ってしまった。
「あーダメあーダメ。力抜いて」と、何故か受けた指導に「あ、はいぃ…」と従ってしまうのがなんだか不思議だった。
なんだろうこの人…と上から眺めているのに何故か社長は嬉しそうに、「よしよし」と髪を撫でてきて、そのまま流れでキスをして。
…何故だ、初で、行きずりで、あれ?何故か凄く愛されている感がある…前からあったっけ?社長と?
どこかで考えているうちに、それも溶けそうなほど…急に気持ちよくなった。
終わるまでの記憶はほぼ、そこまで。
あとはどうしてどうなったか遠慮がちもどこかにすっ飛び、ハナちゃんママ直伝、晃彦訓練の“コンドームを口で付ける”で、かなり喜ばれた、の記憶が強烈でしかなく。
気付けばどうにかこうにか絶頂まで互いに掛け上ったようで。
…すごっ、マジで、すごっ、ワケわかんないけどかなりよ……ヤバかったぁ…。
と放心状態でベッドの屋根を眺め火照るそこに社長が「はぁっ、」と落ちてきて熱いなぁ…うわぁドキドキしてる、粉々になりそう…と息を整えて……。
あぁ……。
夢のようだけど、どうやら生きてるみたい…。
「……おーヤバっ…明日、金曜日じゃん…」
社長の視線の先、1:23に、覚めないまま気付いた……。
やばっ。
うわっ、マジか。やってしまった……!
こんな焦燥感も初体験で、あぁ、ヤダ、どうしよ、え、こういうのってなんとなくヤバイってことを未体験なまま知ってる、え?嘘、なんなのこの昼ドラ。あれ、でも何がマズいかいまいち理由はわからないけどとにかくヤバイと思う!
急にテンパり「…社長ぉおっ!」と雄叫びをあげてしまった。
社長は凄くキョトンとする。
「えっ、何。どしたの急に…」
「いや、えっと、や…ヤバくないです!?」
「は?何が?」
…うっわぁ急に冷てーっ!
「いや、だって、なんか、色々、」
「うーん、ヤバかった、確かに。
明日も頑張ろうね。君の方が若いから大丈夫?いや、無理してない?大丈夫?」
「むり…とは…っ、」
「痛くない?大丈夫?でもなんか、元気そうだね」
「しゃ、社長は!?」
「はっ飛ばしちゃったみたい。初めてなのにかなり久しぶりだったの……あれ?」
何、どうした?と思えば社長は布団をめくり「ヤバ…」と自ら引いた声。
全然元気そうだった。
「……は?」
「すげぇ俺……初めてでこんなハマるなんて何これ18歳みたい…」
…言われてしまえばなるほどこのノリ、ティーンズテンションなのか…と血液が下がって行く一方で。
「……まだまだ俺も捨てたもんじゃなかったね、どうやら」
「ですねぇ……いや、まぁ、社長は全然捨てたもんだと思ったこと、ないですけど…」
「あそう?マジで?」
「はい…」
俺なんて、かなりもう無理…。
あれ。
なんでこうなってるんだっけ?
…あぁ、そうだった、けど…。打ち砕かれたの、心じゃなくて腰だった…。
社長は見つめてきて「いける?ちょっとは」と聞いてきた。
「…いやぁ…多分無理…」
「逆とかどう?」
「いやぁ…」
「使いたくならない?それ。ちょっとだけ」
何そのおっさんノリ…。
しかし見れば確かに、テンションとは裏腹な自分のそれ。
「…でも…」
「あ、なら風呂入ろ一緒に。教われば良いんだ」
「え」
「人生常に勉強ってね!」
変なテンションで馬乗られた。
マジか。なんで?
…ヤバイ、殺されるかもしれない。
…しかし何故か「受け入れられたのかも…」と、受け入れる側なのに思えたのが不思議で、この感情の正体を、律はまだまだ知らなかった。
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