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 宇賀神うがじん夫妻は、火曜と木曜日の夜に現れる。
 あの後の日曜日くらいからそれを再確認のように考えていた。

 研修を終え何も考えずに店に向かった19時。夫妻はすでに飲んでいた。

「あ!あっちゃん!」
「あれ?また来たの?学生にはキツくない?ダイジョブ?」
「どうもです」

 「モスコミュールをお願いします」とオーナーに頼んだ。

「あっちゃん、引っ越しはどうなったの?」
「引っ越し?」
「あっちゃんね、遊び歩いてるの親にバレちゃって出てけって言われてるんだってさ」
「うっはは!でも来てるじゃんっ!」
「だって、ぶっちゃけ今しか社会勉強?出来ませんし。もうすぐ勉強漬けですよ。
 今日も今日とて早く決めろ、不動産屋行ってこいと…もー高くても良いからって」

 はいよ、と無口なオーナーは薄いゴールデンの飲み物とピーナッツを出してくれる。
 乾杯して一口飲んだ、やっぱりちょっと甘い。

「なんで、今日は『6年制に編入したい』なんて嘘吐いて意地悪を言ってしまったところです。バイトしろとか言われるかと期待したんですけどね」
「贅沢だなぁ。ま、俺も言えないけど。
 なんでそんなんなってるわけ?あっちゃんなんの大学行ってんの?」
「生物系ですね。今日は病院でひたすら、手足拘束された透け透けの写真を眺めましたよ」
「あははは!意外、ナニソレ!隠語?
 ムラムラした?あっちゃん一発どう?」
「犬猫なんで流石にしませんね。オスでもメスでも」

 タカシさんはごく当たり前に奥を親指で指す。
 そうだ、思い出した。

「そうだタカシさん。この前の子、あれからどうでした?」
「この前?」
「先週の木曜日の…俺と同じくらいですかね?綺麗めの」

 タカシさんは少し考え「ああ!あの大学生か!」と思い出したようで。
 サブリミナル効果、あの情景が浮かぶ。

「いやぁ可愛らしかったな。なんで?」
「…見ちゃったんで」

 普通見ちゃならんところでね。
 マリコさんがちらっとタカシさんを見る。
 タカシさんは嬉しそうに「いやさぁ、」と話し始めた。

「もう超エロい…エロいっつーかなんだろ…こう、…慣れてないのに慣れた技を懸命にしてくれようとしてさぁ。初な感じが…調教ってか、男心を擽られたわ」
「え?そんな子いたの?なんで呼んでくれなかったのよ」
「お前そんときあっちゃんと一緒だったもん」

 この夫婦は変わっている。かなり奔放だ。

 元はマンネリから通い始めたそうだが、旦那はいつの間にか男にハマりつつあり妻は若い男にハマったらしい。

 常連だからと勧められた最初、まずタカシさんから「妻を殴ってくれ!」と無邪気に言われたのにはかなり驚いた。

「ウチの妻、綺麗だろ?君みたいな子に妻が良いようにされるのはかなり抜ける!」

 なんて、多分CTに写らない頭のネジが飛んでいると、ぶっちゃけ心配した。
 流石に、女性を殴るのに抵抗があり断った。

 二回目は「妻にめちゃくちゃにされる俺を見てくれ!」と持ち掛けられた。
 それは少しわからなくもない、と返答に困ったが、あまりの圧に「そろそろ出禁を考えようか」とタカシさんはオーナーに窘められていた。

 三回目、「堂々と見ていてくれ」これは性癖に一致したかもしれない、と了承をして今に至る。

 最初は「どういうことだ」と思ったが、遊んでいるうちにここではわりと普通なことだと知った。

「相手の子、いまいちわからないが一応ゲイだと言ってたから」
「あー、それは確かに無理ねぇ」
「そうか、大学生だったのか…。無理させました?」
「ん?別にだと思うよ。普通だった至って。なんで?」
「いや……タカシさん、やらかしたんじゃないかなって…。でもそうか、場所を移したんですか?」
「流石にないわ。そうだよ」

 よく言う。

「珍しいね、そんなに聞いてくるなんて」
「ん?あっちゃん、私とお楽しみだったのになんで知ってるの?」
「たまたま見えただけです」
「…もしかしてさ」

 オーナーが口を挟んだのにタカシさんが「何っ」と焦ったようだが、オーナーは特に気にせず「ハナの友達?」と言った。

「え?」
「大人しい感じの…左の…首筋に黒子ある、髪の毛さらっさらの。今時の草食系というか薄味そうな…」
「マジか、ハナママが!?」

 うわぁマジかぁ、とタカシさんは微妙な反応。

「納得なような…いや、意外ではある…ハナママのタイプじゃないだろ…貰っちゃったくらいしか思い付かねぇ」

 初見で俺の腹筋を触り「そこそこね」と微妙な評価をしたオカマを思い出した。

 あの人確か、どちらかと言えばマッチョ系が好きだったような。あんな女顔というか薄味系なんて…。

「ありゃ磨けば光るってハナも言ってたけど。晃彦もタカシも面食いだもんね。気になってんの?」
「えっ。まぁ…」
「如何にも好きそう。ハナに聞いてみたら?穴捧げる気で。あんま来ないし来ても飲んで帰るよあの子」
「あ、そうなんだ」
「一人暮らしらしいからねぇ」
「あー、なるほど…」
「りっちゃんってハナが呼んでるよ」

 りっちゃん。大学生。一人暮らし。
 今日の収穫はこれだ。

 「で、一発いっとく?」と言うタカシさんには「抱かれてくれます?」と曖昧な返事をしておく。

 タバコを一本だけ吸った。

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