6
「そうだね。
あと誰がいい?最近ご新規の辻元さんでいく?」
「うーん、じゃ、はい」
「会社の副社長さん。今迷走中。折り目正しい、劣等感の強い人。奥さんに浮気されてて、そもそも長年いるから家族、て感じで、なんか違うんだって」
「あぁ、なるほど。副社長って何すんだろ。新規でそんな聞き出せたんかお前」
「なんで人の性癖なんて」
そこで押し倒された。
なんだ、このタイミングは!
と思えば、彼は顔を近付け「舌、舌」と要求してくる。
素直に従えば丁寧に絡め取られ、ついでに、手もやんわりと繋ぎ直される。
確かに、これが一番気持ちが良い。
煽るように下を擦り舐め、絡めたかと思えば、急に引っ込めて求めるようだから。
「おっさんらじゃねぇんだよ。お前のことが知りたかった」
「…なんで?」
「さあ?」
「…じゃあ教えて、あんたは例えばどんな人なの」
「んー、さぁなんだろ。身長は180センチ」
「高」
「ホントは174」
「高くはない…?」
「お前よりは高いな」
確かにそうだけど。
ぴちゃぴちゃ、耳のあたりを舐められる。
鳥肌が立った。
こんなの、されたことがない。
「……!なに、してんの?」
「今からセックスするところ」
「わかってるけどっ!」
「何?初な反応すんなよムカつくな」
「何っ?なんで?」
「なんか、こいつこんなんも知らねーのかよって殺したくなる、世界中の誰かを」
「えぇぇ……」
…勝手に見えない敵と戦ってるぅ…。
寧ろ宇宙人はこの人なんじゃないかと思っていれば「あ、さみーよな起きろ」と、一瞬桜木は我に返ったらしい。
やっぱりよくわからないまま、側にあったブランケットをさっと下に敷き、「はい、もっかい寝ろ」と、いくらなんでもマイペースだった。
「…ごめんね確かに俺が抱けって言った」
「何?怖い?」
「うん、ぶっちゃけあんた変」
「よく言われる」
そうだったっけ。
あ、そうだったような気がするけど……。
ぼんやり窓を見上げた。スモッグガラス。
ちゃっかり前もシートを貼っている。この人こんなんでも、こうなんだよなと思い馳せたけど。
首筋に舌が這い、手がシャツの中に侵入してくる。
まるで肋骨を数えるように触る桜木の癖、これはいつもこそばゆい。
まぁいつも通りか…と少し力を抜くと、「道徳の授業を続けるけど」と、よくよく考えたらこんなに喋ってるの、聞いたことないなと気付いた。
「へ?」
「俺が無性愛者だって話な」
「いや、嘘じゃん、これ」
「あぁ、ったく妖怪社長め、可哀想に」
注意力散漫なようだ。
痕の付いた手をまるで慈しむように舐めてきた桜木は「腹立つんだよ」と、また同じことを言った。
「こんな小さな、ウサギみたいなやつに、どうして誰も気付かないんだろって」
ウサギ…。
「知ってるか?あいつら寂しいとなぁ、首のスイッチ切って死んじまうんだからな」
「…スイッチ?」
ゆっくり、ゆっくり裸にされてゆく。
快感というかもうそんな問題じゃなく「ひぃ、」と声が出てしまった。
この人の情動は一体なんだ。
「そう。いきなりなんだよ」
ただそう言って急に優しく髪を撫でてくる。
怖い。怖すぎるんだけどこの人、なんのスイッチが入ったの。
おかしい、恐らく「水曜日」の件からだ。なんだろう、オーナーに何か、言われたんだろうけど。
「愛は楽しみなさい。キリストが言ってそうな言葉ね」
変な人……。
そんなの聞いたことも…言われたこともないし、知らない。
ただなるほど、この男でイケる理由はわかった。同業だったのか、だから上手いんだ…と、わりと早めに一度イカされてしまったが、「ドライは身体に悪ぃんだぞ」と止めてくれなかった。
少し頭痛がした。それすら感じてくれたようで「どうした?」と即聞かれる。入れる前だった。
「…いや、入れて。がっつりいって、頭痛い」
「…意味わかんねぇけど痛くなったらすぐだっけ」
多分そうじゃない。
すぐにガム入れから薬を出して飲ませてくれる。
そんな人だったっけ。そんな人だったのかも。
顆粒なんて、ざらざらして舌が痺れるだろうに。
少し落ち着くまでは抱えられたままだった。
そうしてみると、あぁ、無理矢理進めない方が実はいいんだなと、少しマシになったあたりで桜木にペニスを握らせた。
ついでに両足で桜木を捕まえ、「これが話題の…足」と、そのまますりすりよがってみた。
「へぇ」
まるで甘やかすかのように持って遊び気持ちよくしてくれる。
「相性いいし、いいんじゃねぇかな」
なんか、多分入れながらそんなことを言われたけど、いつもそう、質量があって一気に息が苦しくなるのだ。
一回考えるのは止めた。それどころじゃない。
ささくれではない、それは何かのざらざらしたスイッチ。
確かに、力はやっと抜けたし、安心したのかはわからない、ガツガツ激しく突かれている。
満ち足りてやっと射精が出来た。
もしかして客でダメなの、こいつのせいかも、と気付いた瞬間にはまたぐちゃぐちゃゆっくり混ぜられ、「うぅ…、」と泣きそうになっていた。
はぁ、と桜木が苦しそうに息を吐く。
熱さを身体の中に感じて。
何故、この吐息は溶けていきそうでそれを怖いと思うのか。
全くわからない。が、もしかしてキスが多いのかもしれない、わからないけど。
なんだ、この恋人感やら…愛されてる感やら。わからないけど満足して、満足したことに疲れてしまったのだから、どうなんだろうと、酸欠の頭に流れ込んだ。
- 20 -
*前次#
ページ: