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「えっと…てことは、何がきっかけで?」

 あぁそれも来てしまったなーと、明らかに怪訝そうな半井と黒田に、アルコールの力を借りようとグビッと一口飲み「いやこの前のこれで…」と首を指しつつ、凄く説明難しいな、と更に苦笑。

 明らかに半井と黒田が複雑な顔をしている。
 が、まず一個説明せねば。

「あのー、この人がなんかヤバイ性癖ではなく…」

 寧ろ一番多分普通…。

 濁らすのを新は助けもせずに横目で見るのみ。
 「え、」と、疑惑がひとつ消え今度は深刻そうになった半井と黒田に「いやマジで「死んでやるー!」て事務所に来られた」とあっさり新が掌を明かしてしまった。

「うわっ」
「めんどくさっ」
「でも恩人?」
「あ、確かにそうなるな!?」

 疑惑を晴らした本人はどうやら面白いらしい、ハイボールのグラスが若干ぷるぷるし始める。

「うわぁマジかその節はどうも…」
「いえいえ」
「うわぁ末永くバ……慧を…」
「はいはい」

 答えつつも耐えられなそうに新はこちらを見て「ダメだ我慢できない」と口を抑えて笑い出した。

「まぁ…あの、はいぃ…」
「思いきったなバカ……違、慧め」
「あー、えっと何くんだっけこの人」
「…ベースの黒田です」
「黒田くんか。俺も「こいつバカだな〜、路線じゃねぇほどパンクじゃん」と思ったからバカ慧で不快にならないから大丈夫」
「あ、すんませ…寛容だぁ」
「えじゃあもしかしてもしかしちゃうとあれからの慧の数々のヤツは把握」
「やめて半井〜、流石にそれは」
「いや…」

 複雑な目で新と見つめ合う。
 うん確かにあの…4年の複雑さは出していいかわからない内容ですねと「…んまぁ俺もヤクザ屋さんなんでお互い漸くだから…」と濁してくれた。

「あ、なるほどっすね!なぁんだそっかそっか、実は慧、俺たちは波瀬くんかマトリさんかと…」

 てんてんてん、となり、ふと真鍋が「結局ずっと聞きたかったんですがシルバさんは」と勢いよく言うのに「あー!ダメその話題!ダメな方!」と焦る。

「…いや、え?波瀬も平良も知ってるぞ俺」
「え、うん」
「シルバ?」
「あれ、」
「たまには空気読んでよ真鍋くんっ!!
 えっとはい、説明しますと新さんもご存じな方ですが俺は本名を知りません、ラッシュの」
「あー!田中新太郎か!!」

 そんな名前だったの!?と三人はそんな文字数までハモれるのだから凄い、なんたるチームワーク……と頭が遠くなりそうだ。

「え、」
「そこには色々事情がありますがツッコミを入れないでくだ」
「はいはいはいはい俺わかってきちゃったぞ慧。お前と夜に消えたバンド系はシャバにいないと専らの噂だったがシルバさんはそっち系だったんだ」
「…なにそれ!?」
「さながら今では『インディのモズ』と呼ばれてるんだぞ慧」

 再び新がハイボールを震わせ「い、インディのモズ……!」とツボに入っていた。

「やっぱバレるもんだな慧!ははは!」

 バシッと叩かれ「うぅぅ」と肩身が狭い。

「はーぁ、おもしれ、」
「…あ、そーゆー話もいける感じなんすねえっとアラタ…兄貴?」
「うっわ兄貴とか久々聞いた。まぁまぁ多分大体把握してると思」
「なるほど〜、じゃああの失踪事件は裏でアラタの兄貴が」
「中には知らない方が良い話もあるぞ」

 シーンとした。
 それに新が「にゃっはははは!」と一人笑ってる。
 あれは自分でもあまり記憶にございません状態だったから気になりつつも聞けないヤツだった。そういうものだったのだ、いままでは。

 あ、これ言っちゃならんやつだったね〜というしれっとした空気が流れる中「刺身盛り合わせと串の盛り合わせです〜」と料理が運ばれてきて、一度場は収まった。
 はぁぁ〜、と胃が痛くなる中「あれ、てゆーかみんな何杯目?」と、飲み終わった新が気を遣う。

「みーんな3くらいでーす」
「あそう…すんません|鍛高譚《たんたかたん》の水割り」
「俺も!それ!」

 酒に流すことにした。

 「え、」と驚く新に変わり「チェイサーもひとつお願いしやーす」と然り気無く半井が水を頼んだ。

「でた、水係半井」
「水係?」
「あーはいなんか、アラタの兄貴大丈夫そうなんで言いますけど、言って良いんだか…」
「いやそれ言えよ」
「ダメ!」
「まぁヤクザ屋さんの方が強いんで慧は無視しますけど半井は慧が潰される前に水を頼む係なんです〜」
「…偉いなぁモヒカン」
「うぃっす、光栄っす」
「まぁでもさとちゃんは後から聞くと、寝落ちしてあんま意味ないらしいですよ。ホテル代穀潰し的な」
「え」
「そうなの、俺らすら知らねぇけど」
「はい、先輩方から聞きまし」
「みんな本当にやめてー!」

 「慧が悪いよね」「慧が悪いじゃん」と半井黒田から正論が投げられる。

「慧は薬関係であれなくせに断れないせいかやったろ先輩達にすぐなんで、可哀想だから水係になりやした兄貴」
「…偉い、偉すぎるモヒカン」
「まぁ漸く肩の荷が降りたな半井」

 二人ともうん、と一度深く頷いた。

「慧もしっかりしなよーマジ」
「…はぁいすみませーん皆さんー」
「お前よく苛められるもんなー、メンバーとしてマジ大変」
「うわぁなんかバンドコミュってスゲーんだね…ヤクザみてぇ…。すんませんねウチのが」
「いえいえ」
「慣れました」

 結局水と水割りと刺身を流し込んでやり込んだ。

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