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 さっきまで熱かったお腹の中が少し冷え、彼が来るまで毛布にくるまりなんとなく調べた。

 ノンカフェイン、効果、安眠。原産国、南アフリカ……。あ、全然関係ないじゃんアイルランド。

 セブンまであと何時間だっけな、今回の言い訳を考えよう、うーんぼんやりする…そんな瞬間が一番まともじゃないんだよなと、一瞬サブリミナルのように浮かんだあの男の変態面にビクッとなったが、ダルさが勝った。

 少し目を閉じると、シャワーのみの彼はすぐに帰ってきた。

 確か楽屋入り早いんだよな、MCにバレちゃいけないから。
 俺も再びシャワーを借り、わりと間も無く平仲くんの家を出た。

 局に着いても挨拶もなしですぐに楽屋入りし、番組から貰った質問に対してや、今日のドラマの件については二人でどう眞田さんに言おうかなど…。

 多分…お説教はあるだろうし長いだろうな…そういえば忘れていた、芳明にメールしてないじゃん、夜勤明けだから休日だよなと時刻を見れば18時。

 …買い物、行っちゃってたら申し訳ないなと思いつつ、一応メールをしておいた、「トラブル処理で遅くなりそう」と。

 芳明からは「無理すんなよ」と返ってくる。

 そういえばお弁当あったなと、用意されていたお弁当を見て思い出し、芳明が渡してくれた方を食べることにした。

 発散したせいか、互いに頭がスッキリしていたようだ。
 謎の一体感もあり案を話し合っても「あ、それいいんじゃない?」と調子良く意見が飛び交った。

「あの質問つーかマジで俺が回答してよかったの?」
「え?逆に誰が回答すんのよ」
「え、あんたとか」
「前はそうだったの?」
「俺この問診票みたいなやつ、問診票以外で書いたことないよマジで」
「アンケートねアンケート。そうだったんだ」
「中身見たっしょ?」
「え、全然」
「……マジで?」

 なんだ、見た方がよかったんだろうか、でも番組スタンス「爆弾発言を引き出しちゃえ」みたいな感じだしなぁ。

「見て欲しかったの?」
「いっやぁ……え?逆に何でそんなにフリーダムなの?」
「あーまぁ…スターライト厳しいもんね。なるほどマネージャーが対応してたのか。俺の考えだと別に君に来た質問だから、かなぁ。
 セルフプロデュースしたいなら、どんな方針?てのは、逆にこの番組終わってからかなって考えてたけど。敢えて今の“平中レイア”の印象を伝えると、クール路線というかストイックって言ったらいいのかな。ただまぁ、そういう系の俳優一杯いるからねー…。
 数年後似たような俳優と名前間違えられそうな。まあ名前は変わってるから見込みありではあるか……」
「…なんか、すっげ、」
「え?」
「そんなに分析すんの!?」
「そりゃぁ。管理者ですから」
「えー…いや、そんなんされたの初めてだけど」
「なるほど、だから自分の中で方向性ややりたいことの統合が出来てないんだ。
 んー、じゃあ正解かな、この番組。出しちゃって出しちゃって」
「…お、」
「大丈夫だから、まずは。前回の宮殿の反省だと思って。
 どうせ顔出ししなくなるんじゃ、逆に何言ってもいいかもよ?10代特有のカオスさはミステリアスに繋がる。そうすると幅は広くなるんじゃない?声優なんか…詳しくないけどさ。
 一回キャラクターを固めるのもありといえばあり」
「…なるほどね…」

 丁度ADが現れ「出演者が揃いました」と声が掛かり、番組セットの裏口へ案内される。

 少しだけ出演者たちがミニコントみたいなやり取りをして「さて、今回のゲストは」で、ぽん、と背中を押して送り出した。

 セットの外に出て、スタッフ側で彼を見守ることにする。

 …少し楽しみだ。出演者たちと番組打ち合わせをしていないので、何が起こるかわからない。テレビの視聴者って、多分こんな気分のはずなんだ。

 …しかし、敢えてこの番組に関して出演者とセッティング無しにやってしまったから、エピソードトークなど特に決めてあげていない。

 喋れるといいけどな、今の子ってみんな台本あるもんな。

 最初の第一トーク、「緊張してるでしょ?」に「はい、」と言っただけで「めっちゃ声いいね!」と滑り出してくれた。

 そこから声優トークやらSNSラジオやらと、ポンポンと自然体で話せたようで盛り上がり、予定は多めに2時間収録とされていたが、なんとそれも押した。残念ながら後半は収録が出来ないくらい。

 これは、大成なんではないかと俺は捉えた。

 戻ってきた平中くんも少し興奮気味に「あー勿体なかったなー」と言いつつ、最後に二人で出演者に挨拶をして収録を終えた。

「いや、こっちも盛り上がっちゃって、纏めきれなくて悪かったね〜」

 総合MCの芸人さんが平中くんの肩を叩き「頑張ってな」と言ってくれたことも、例え定型的な挨拶だとしても、彼にとって自信に繋がったようには見えた。

 これはこの後の…本人も出席することになった事務所夜会議(お叱り)も、この事を押せばいいのではないかと戦略を立てた。

 彼は彼で凹んだ点もあったらしい、「噛み砕くってちょっと大変だね」と、事務所への送迎中に言ってきた。

「はは、あの長いテロップ、俺も面白かったけどね。あれは印象付け?」
「いや、素で…」
「ははは、多分“案外面倒臭いキャラクター”で編集されそうだね」
「…まぁ実際」
「そうだねぇ。でも、良いところだよ」
「……んーでも俺思った、纏めたりさ、伝えたりっていつも難しくて、いままではちょっと、惰性になりがちだったんだなって」
「……じゃあ、番組の感想は?」
「楽しかったかも。なんか、やんなきゃなって目標が出来て」

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