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休み時間にタバコを吸って気持ちを紛らわせることにした。
向かいの大学の生徒が女をナンパしている。まんざらでもなく喫煙所にくる女。だけどそんなことは日常なので、今さら何も思わない。
ビルみたいな大学の上には、灰色の曇り空が広がっている。今日は降るなぁ。そう言えば加賀ちゃんは空気の匂いで雨が降るかどうか分かるとか言っていた。
あ、この空、タバコの煙に色が似てる。
そしてこの煙は、ヤニクラの微妙な頭痛の感覚と似ている。
頭痛にぼんやりとしていると、鈴村が喫煙所に来た。同じクラスの男子で、私の彼氏だ。
「あぁ、来たんだ」
「うん」
返事だけしてタバコを一本ソフトパックから出して火を着けた。
火って不思議だなぁ、てゆうか指が細くて死にそうだな、コイツとか思って眺めていると、「ん?どうしたの?」と尋ねられる。目が合うのは嫌だな、と思ったけど、結局目を合わせてしまって、どうしようかと思った。
凄く、目が綺麗だな。
黒いような茶色いような、だけど凄くはっきりとした色。何だろうな、これは。
引き込まれたら最後のような気がする。
「ん?何?」
うわぁ、露骨に見つめてしまった…。何とか、話をしなくては。
「いや、火って不思議だなぁと」
そう私が誤魔化すと鈴村は、その目のまま明らかに「ぜってー違うこと考えてただろ」という顔をした。
「何で?」
「とくにライターの火は。消えそうで消えないじゃん?」
「消えたら困るよ」
そう言ってニコッと笑った。何も聞いてこないのは鈴村の優しさだ。私は人生初めて、本気で人を好きになっている。
いままでの男はみんな、セックスさえあればよかったようで、私のことを知らなかった。だけど鈴村は、付き合ってちょっとしか経ってないけど、極限になっても私にそういった手を出さない。
「ねぇ今何考えてんの?」
「え、だから火のこと」
「何か、隠してない?」
そう言われて、やましいことなど(浮気とか)していないのに、何故だか言葉の重さを感じた。
「隠してないけど」
「…」
隠してないのは嘘だ。
いや、男性関係の話は隠していない。お互いに不利なことは。
だけども、言っていないことがある。
「このあと授業出る?」
「なんで?」
「いや…
出ないなら、公園行こうよ」
「いいよ…」
乗り気のない授業と、彼といることを天秤に掛けたら、断然後者の方が今の私には有意義だ。
私も彼もタバコの火を消して、公園の方へ歩き出した。
私の髪を撫でる彼の指は、折れそうなんだったっけと、無駄なことを考えるようにして。
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