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シャクシャクシャク…。
右手でくすむシルバーリングと土に汚れたその手に握るスコップ。

AM2:40。
元婚約者の次ぐはずだったレストランの前で私は今、人類最大級のブス顔で植木鉢に土をひたすら掛けている。

泥で拭った涙の湿る植木鉢。
結婚式の予定だった春に、薺でも咲けば良い。掘る。掛ける。

婚約破棄の要因は至ってシンプルだった。
今日、彼は、私の目の前にあるこのレストランの厨房で、誰だかわからないこじゃれたミニスカの女と良い感じだったのでした。

そこは野菜を切るシルバーであり、そんな風に人が寝る場所じゃないだろ、と、怒りを通り越して唖然としてしまったのだった。

驚愕だった。しかし見たくもないのに立ち尽くしていれば当たり前ながら、バレてしまう瞬間はあったわけで。そこで揉み合い、言い合いになり、女なんかはぶっ叩いて追い出し、絵に書いたような修羅場になって二人で話し合った。

今日来たお客さんだそうで。仕込みをして仕込んだ所に私は遭遇したらしい

しかし私は受け入れなかった。
あんな女に負けてたまるか、それが勝ったが何故か彼の方が呆れていた。

呆れる筋合いなんてねぇじゃん。

暴れた。手当たり次第に物を投げた。この時点でブス顔だったと思う。

何故ブス顔かって。

その場にあった出刃を「君なんて」と言う彼の喉元に刺したから。

あぁ、人生詰んじゃった。
血圧上がってしゃぁないわ。

本来ここは食材を引き裂くとこだし、さっさと済ませよ。そう冴えていた。

これも一種の贖罪よ。

首だけ持って唖然としたまま、店先まで持ってって、咲いてた植木鉢を引っくり返して今に至る。

ここのチューリップ、春先に綺麗なのよ。私ここのチューリップ、好きだったのよ。

なんなのよ一体。何摘んじゃってんのよ。

あーしんどい。
いいや、もうあんま意味ないし自主しよ。極刑でもなんでもいいや。

女は去った。
嵐はわずか41分。6ページの追憶。
またそこにいつか、土を被せるように。完

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