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「おとーーー!」

 はっと目覚めた。

 露が台所に立ち「ごはーーん!」と叫ぶ。
 着物に帯がしてあるが、結び目がずれている…。
 「おはよう、」と起き、結び直してやった。

「あ、ありがとう。難しいねこれ!」
「……いいえ、よろしいですよ。寝坊しました…飯を盛りますね…」
「はぁい」

 稗入りの飯に…結構細かく刻んだ栗。昨日の栗きんとんの余りかな…と茶碗に盛り「そろそろ栗を狩りに行こうか…」と提案する。

「脚絆も新しくしたし」
「あそうそう、言ってたお人形さんも昨日ね、見たの」
「昨日まで『当日まで楽しみにする!』って言ってたもんね」
「うん。
 ハチさんにも文吉さんにも見せた!あれ、凄いね…着物もちゃんとしてたけどさぁ、」

 吸い物を盛り、膳台に乗せ「さて、頂きましょー」と居間に運ぶ。

 …最近祝い事やら自分のために良い物を作ってくれたおかげか、今日は少し節約料理だ。

 パッと見ると、畳まれた昨日の着物の上に小判が一枚置いてあったので「…こら、」と、懐に閉まっておいた。

 …誰から貰ったんだ?

「…あれは誰が」
「あの人だよ、多分」
「え、あぁ…そうなんだ、なるほど…これ、お金だからね?」
「えっ、そうだったんだ…工芸品かと…ごめんなさい」

 初めて見たのか。それならば仕方はない…。

「まぁ、貰った物の一式を出しておいたんだね…一度全部しまおう…人形以外は」
「はぁい…」
「まぁ、でも全く使わないのは勿体ないから、着物もたまに着よう。少し良い物だから何か、気分がいい時に…。
 あ、そうだった、それで、人形はどうだった?」
「うん!凄い…飾っておく!
 見たんだよね?なんとなく嬉しそうな顔してるの」
「見たけど…そっか…」

 膳を食べ終えた後に「少し見せて」と人形を借りた。

「…本当だ…言われてみればそうかもしれない」

 あぁ、多分これは。

「……人を想って作ったんだろうなぁ」

 …ちぐはぐな印象があった子だけど。
 想い人はきっと本当に…色羽が言っていた嫁入り道具の子なのかもしれない。

 なんだかんだであの人も、子供に愛情を注いでいるじゃないか。

「あ」

 思い出した。あの時何を言った…いや、私じゃなかったか。
 自分にまだ自覚もなくて、何も決められない優柔不断さがあったから兄はああやって挑発をしてきたのだと今ならわかるが。

『かいしょーって、なんですか!!』

 そうだ、そう叫んで泣いた露を見て自分は…露を抱きしめ「大丈夫だよ」と宥めただけだったけど。

「私も生きているので、お引き取りください」

 そう返したんだ。
 はは、甲斐性のない一言だったなとつい「ははっ、」と笑ってしまった。

 兄の言葉の意味もわかる。だから今こうして露といるのだ。
 今回は、兄を受け入れることが出来たから。

「…どうしたの、おとう」
「いや……ははは……私は随分と、甲斐性がなかったなって。
 実は、昔の夢を見たんだ」

 背中をぽんと押されたのは自分だ。
 「どんなー?」と聞く露に「兄と大喧嘩した夢だよ」とだけ返す。

 …流さん、と言ったか、あの木工細工師。

「………」

 きっと、前途多難だろうけど。
 「さてさて」と籠を用意する露を見て思う。これ程繊密で温かいものを作り出せる子なんだ。

 まともな感性なら、逃げてしまう家柄だった自分たち。

「露、」
「ん?」

 新調した長草履の紐を縛る露を見て、「良い人が出来たら、絶対私のところに連れてきてね…」と、またつい言ってしまった。

「…どんな理由でも、まずは聞くから」
「だから、おとうもね!」
「…はぁい」

 さて、と。自分も準備を始めた。

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