見透かされる。

 わたしの彼氏である白石蔵ノ介は、よくモテる。街に出れば逆ナン、普通に学生生活を送っていれば呼び出しなんてしょっちゅう。しかしわたしが彼に「モテるよね」と言えば否定要素が一切ないにも関わらず当の本人は「そんな事ないけどなあ」なんて呑気に笑っている。
 本当に、本当によくモテるのだ。白石蔵ノ介は。彼女がいながらも関係ないと言うように呼び出しの嵐。本人も優しいからそれにひとつひとつ丁寧に答えているのだから、キリがない。そんなのだから女の子の方だって調子に乗るんだ。

 はぁ、とため息を零せば心配そうに覗き込む蔵ノ介は、ため息の原因なんて理解していないのだろう。

「どうしたん? なんかあった?」
「なんでもないよ」
「ほんまに? ……なんかあったら言いや」

 そう心配そうな視線はそのままに優しく頭を撫でられて、恋に落ちない女がいるのだろうか。いたらいたで少し気になるけれど。
 大丈夫だよ、と言うと腑に落ちないものの深く聞いてこようとはしない。そんなところももちろん好きだ。好きだけれど、この件に関しては別でしかない。何が悲しくて彼氏が告白されると分かっていて送り出さなきゃいけないんだ。
 けれど、モテることに関して蔵ノ介が悪い、というのも違うので声を大にして言うことすら出来ない。ああ悲しい。嫉妬なんてとうの昔に通り越している。
 はぁ、ともう一度吐き出したため息に、撫でる手を止めない蔵ノ介がぽつりと呟いた。

「可愛いなぁ」

 ……ああもう! 全部わかっているんだからタチが悪い!


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