あなたと恋する6日間
あなたと恋する6日間
ドキサバDLコンテンツ配信前に妄想で書いたので、設定全然違うかもしれません。
小日向は誰かを手伝ってくれと言われているので、何の作業になるかは相手次第だ。
しかし釣りは手伝えることが少ないし、薪割りは力不足と言われるし、食材を採取するくらいしかない。
食堂に設置された、簡単なスケジュール表にそれぞれ名前と作業予定が書いてある。
それによると、今日の採取系は……財前だ。
気さくに接してくれる人ばかりじゃないが、特に財前は苦手だ。嫌われているのかと思うくらい素っ気ない。無関心とはある種のいじめかと思う。たいていの場合、共同作業では多少相手に歩み寄るものじゃないだろうか?財前には一切それがない。見かけるといつもイヤフォンをつけたままで、話しかけるなオーラを出している。
「…まぁ、お互いに嫌な思いしてまで手伝うこともないよね」
話しかけるのも気が重く、つぐみは自分自身に言い訳して他の人を手伝うことにした。
「ちょお、あんた。暇なら手伝うてほしいんやけど」
低いトーンの関西弁がすぐ後ろで聞こえた。
びっくりしすぎてつぐみの肩が跳ね上がる。まさか向こうから声をかけてくるとは思わなかった。
「ひ、暇って…なんだか失礼じゃない?」
「ほな、忙しいん?」
「いや…忙しくないけど…」
「だったらええやろ。山菜採りはプロに任せて、俺らは果物やな」
「えっ?プロって誰か大人が見つかったの?」
「ああ…、うちの白石部長や。あの人毒草とかやたら詳しいねん」
「…そうなんだ。毒草…なんのために覚えたんだろ」
「さあ? ほな、そろそろ行くで」
財前が歩き出すので、慌てて籠を持つ。
青学の部員たちが作った竹で編んだ丈夫な籠だ。
「お、財前やないか」
「まためんどくさい人が…」
謙也の姿を見ると、財前は露骨に嫌そうにした。
「小日向さん、こいつがキツイこと言うても気にせんといてな。先輩の俺たちに対しても同じやから、しょーもないねん」
「あ…はい…」
どうやら謙也は気にして声をかけてくれたらしい。つぐみにだけ態度が違うわけじゃないと聞かされて、少し気が楽になった。
「謙也さんと違って、いちいち女子に気ぃ遣うてらんないっすわ」
「その言い方やと俺がタラシみたいやん。女子には優しく…ガキの頃から侑士のねーちゃんに叩き込まれとるんや」
そうだった。氷帝の忍足とは従兄弟で、侑士の姉には頭が上がらないと言っていた。小さい頃、よく面倒を見てもらったのかもしれない。
「あそっすか。ところで謙也さんは何担当なんすか」
「俺か?俺は金ちゃんと貝の早採り対決や!」
「また二人でアホな競争するんすね…」
「アホとちゃう。スピードを懸けた真剣勝負や!」
「ま、夕飯に困らんからええけど」
はしゃいでいる謙也はとても楽しそうだった。呆れ顔だった財前もつられて微かに笑みを浮かべている。
……財前とつぐみよりひとつ年上なのを忘れそうになる。
「ケンヤー!はよしーや!不戦勝でワイのリードになるでー!」
「あかん!なにゆーてんのや、金ちゃん!」
ほな仲良くな、と言って謙也は慌ただしく走っていった。
その後姿をなんとなく見送る。
「──なぁ」
「あ、ごめん。早く行かなくちゃね」
のんびりしていては日が暮れてしまう。
促されたのだと思い振り向いたが、
「いやいや…。あんた、謙也さんのこと好きやろ」
財前の口から出たのは意外な言葉だった。
「なっ──なんで?!」
「はぁ…。ベタなリアクションやな、シラケるわ」
「リアクションとかどうでもいいでしょ、それよりなんでわかったの?!」
リアクションでボケている場合ではない。つぐみに笑いはわからなかった。
「めっちゃわかりやすいわ。思いっきり顔に出とるやん」
「ええっ?!ど…どうしよう…謙也さんにもばれてるかな?」
「あの人自分のことには鈍いから、気づいてないみたいやけど」
「よかった…」
ホッと胸を撫で下ろすつぐみを財前が不思議そうに見ている。
「脈ありかどうかわかるしええんちゃうの?」
「嫌だよ、気まずくなるじゃない。財前くんは告白する前に相手にバレてても平気なの?」
「なんで俺に聞くん。告白なんかせえへんし」
「ふーん…モテるんだね」
「は?どういう理屈や」
「言われることがあたりまえすぎて、言う立場を想像しないんだと思って」
「曲解しすぎ。てかあんた、謙也さんに告る予定なん?」
「まさか。…よく知らない子に言われても困るでしょ?」
「あー確かに。好みやない人に言われても迷惑やんな」
今、ちらっとつぐみを見たように思うのは気のせいだろうか?
財前の言うことはもっともであり、胸に刺さった。
しかし謙也の好みを聞いたところで、どうにかなる話ではない。
「う……。そういえば財前くんは、どういう人が好みなの?」
「せやからなんで俺に聞くん」
「財前くんみたいな人が好きになるのって、どんな女の子かと思って」
ドライな財前でも好きな人に対しては優しかったり甘かったりするのか、少しだけ気になった。
「みたいな人…って、なんか引っかかるけど。ま、感性の合う人がええかな。…おんなじもん聴いて感動したりとか………っ」
「…?どうかしたの?」
「いや…ないない。あんた相手に何言うてるん俺…恥っずいわ」
「え?ロマンチックでカッコ」
常に音楽と共にある財前らしいなと思っていると、なぜだか慌てふためいている。
「あーあー!マイクのテスト中!聞こえん!なんも聞こえん!」
財前は居たたまれないというように無意味な仕種を繰り返す。耳は真っ赤だ。かなりめずらしいものが見られたのではないだろうか。
「誤魔化さなくたっていいのに」
「あんたがあんまり自然に入り込んでくるからつい…。好みやらなんやら、聞かれるのも話すのも嫌いやのに…」
「言われてみれば私も。あんまり突っ込んで聞いたりできない性格なんだけど…」
話しかけるのも躊躇うほど苦手意識を持っていたはずが、いつの間にか恋バナ的な会話までしていたことにつぐみ自身も驚く。
「イレギュラーってやつやな」
「……」
「…例外とか予想外って意味やで?」
財前がわざとらしく小声で囁く。
「それくらいわかってるよ!そうなのかなって考えてただけ」
つぐみの胸の中で何かが弾ける。昨日までとは違う景色が見られそうな予感がしていた。
2026.9.27
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