出会い、愛


禁じられたら甘くなるセオリー


仕事の都合で少しの間だけ出張中。
彼と同棲しているお家を離れて、気付けば3日過ぎていた。
そういう時って、ほら。密に連絡ってするものでしょう?

丈くんはほとんど連絡をしてくれなかった。

束の間のホテル住まいは、非日常感が味わえる貴重な時間。
生活するものも全て揃っている。何不自由ない場所なのに。
やっぱりどこか探してしまう、大好きな彼の背中を。

持ち帰った仕事を程々にして、少しばかり寝ようと思ったとき。
スマホが震えて画面には「丈くん」の文字があった。


「もしもし」『…俺やけど』

知ってるよ。知ってるも何も、一番聞きたかった声だよ。

「連絡遅くないかな?」『はぁ?俺の気も知らんで…』
「もう3日経ってますが」
『忙しそうやからあえて連絡せんとこ、ってことやんか』

分かります?この、彼独特の不器用な優しさ。
そんなことだろうと思ってたけどね。

でもそれよりも私が嬉しかったことがあって、
それは丈くんから電話をかけてくれたこと。


「丈くんからの電話、珍しいね」
『ええやん、たまには』「丈くん、もしかして甘えてる?」

悪いんか、と言わんばかりに口を尖らせた丈くんはどこか幼く聞こえる。
おかしいな、いくつか歳上なのに。思わずくすり、と笑った。

『はよ帰ってこいよ』「分かってる」
『お前が居らんと、全然ちゃうねん』「例えば?」

つい興味本位で聞いてしまった。
だってこんな、こんな可愛い彼はあまり見ないから。



『寝る時、隣に居らんと寝られへん』
『ご飯食べてる時も静かやな、って思う』
『部屋に笑い声が無いのは、だいぶしんどい』



流れる様に、迷うことなく出てくる言葉に胸がいっぱいになった。
「ごめん、もういい」『なんやねん、言わせといて』
これ以上聞いてしまうと、丈くんに会いたくなってしまうから。
会えないこの状況がとてつもなく辛く思えてしまうから。



『○○が思うてる以上に好きやで、俺』
私の心臓にトドメを指すかの如く落とされる、甘い言葉に。
普段聞きなれない、切なげな彼の声色に。
涙が出そうになるのを必死に堪えた。

ねぇ、丈くん。今どんな顔してるのかな。
毎日当たり前に一緒にいると、すぐ確認できるのに。
離れた途端、気になって気になって仕方ないんだよ。


私も好きだよ、と伝えるのと同時に頬が少しだけ濡れた。



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