さて、あのお祭り騒ぎから一夜がが明け、入隊初日の朝です!

一応朝の5時に起床。
家に居た時も朝稽古があったからこの時間に起きて、1時間の稽古。

その後、皆の朝食を作ったりしてたから、こんなに朝早く起きてもだいじょーぶなのであります!

なんて、早朝から意気込んでいたら、隣からガタガタと音がしてきた。
ポルターガイストかっ!? 土方さんの部屋の方だ……。

もう、朝っぱらから煩いなぁ。

「おいぃぃ!! お前、朝から大声でうるせぇよっ! 初っぱなから迷惑掛けてんじゃねぇ、こちとら徹夜で疲れてんだよ!!」

鬼の形相で土方さんが私の部屋に入ってきた。
しかも、物凄く怒ってらっしゃる。

『ちょ、土方さん。乙女の部屋にノックも無しに入るなんて、最低ですよ』

蔑む目で土方さんを見つめれば、顔が更に怖くなった。

てか、何で怒ってるんだ土方さんは……。
朝からそんなに頭に血を持ってくと倒れちゃいますよーだっ。

「おめぇが朝から大声で独り言言ってるから起きちまったんだよ!!」

心の中で言っていたつもりが、声に出ていたらしい。
だか、そんな事で引き下がる和葉ちゃんではありません!

『……土方さん、朝っぱらから煩いんで自室に戻って下さいよ。着替えたいし』

土方さんって本当に気が利かないよねぇ。
こんなんじゃ、結婚なんか出来ないですよ。

「殴られてぇのかお前。昨日は近藤さんに言われて、仕方なく見逃したが本当にしょっぴくぞ!」

え、私、近藤さんが言ってくれなきゃ捕まってたの?
それって、やばくね? ここで土方さんに捕まったら、銀魂ライフ送れないじゃん!

『え……、なんかすみません』

寝巻きのまま頭を下げ、謝る。
その行動に驚いたのか、土方さんは「分かれば良い」と言って部屋から出て行った。

『……何だったのさ! 朝から無駄絡みで30分無駄にした!!』

土方さんに朝練の時間を潰されたため、仕方なく制服に着替えて女中のおばさん達に挨拶をしに行こうと思う!



……と、意気込んで自分の部屋から出て来たものの、食堂の場所が分かんない。
ここ何処だ! 広すぎるんだよコンチクショー!

昨日、自分の部屋と隊士達の部屋、トイレ、お風呂、客室等々教えてもらった。
なのに! 何故に食堂は教えてもらわなかったんだ!

でも、私のせいじゃないよね。教えなかった土方が悪い!!
って言う事で自分の部屋まで戻って、土方さんに案内してもらおう!

『たのもー!! 土方氏は居られまするかっ!!』

「うるせぇえ! お前は普通に入ってこれねぇのか!」

『そんなに怒らないで下さいよー、昨日土方さんがちゃんと屯所の案内してくれなかったのがいけないんですからね!』

「それは、お前が何となく分かるから大丈夫です。とか言ったからだろ!」

はれ? わたくしそんな事言った覚えないのでございますが?

「訳が分からない敬語になってるぞ」

『はっ、またエスパー土方!?』

呆れてしまったのか、土方さんは私を睨むだけで口は挟まなかった。
なんだよー、突っ込めよ土方コノヤロー。
つまらないじゃない!

『で、取り敢えず食堂連れてって下さいな!』

「お前、食堂に何しに行くつもりだ?」

『え、一緒に働く為に取り敢えずお世話になる女中さんにご挨拶をと……。それから朝食食べに』

何言ってんだこいつ。
っていう感じで土方さんに睨まれてる。

私、悪い事してないよね? 寧ろまともな事言ってるよね!? 怖いんだけど!!

『何ですかその眼は! 私はなかよしこよししたいんですよ。あと、土方さんの眼は元々でした!』

「お前みたいのなんかと仲良しこよしする必要はねぇ。あと、最後のは余計だ!!」

べっ、別に土方さんとなかよしこよししたいなんて言ってないし!

それに、地味に傷付く……。

『いいから! ご飯も食べたいんで連れてって下さい!』

何度もしつこく言ってみたら、連れてってくれる事になった。

丁度土方さんも行くところだったらしい。
だったら素直に連れてってくれれば良いじゃない! 意地っ張りなんだからぁ。



……来たばかりなのにキャラが情緒不安定過ぎてヤバイ。

そんな事を思ってると食堂に着いた。

「おい、着いたぞ。厨房はあっちだ、取り敢えず挨拶だけ、してこい。余計な事は言わず、戻ってきたら飯にするぞ」

なんか、凄い挨拶だけという事を強調してきた。
そんなに女中さんと私が関わる事が嫌なのか?

はっ、若いからっていびられると思って、心配してくれてるのかっ!?

……土方さんに至ってそれはないか。
自分で言っていて少し悲しくなりました。

あれ、作文?


『すいませーん。昨日からお世話になってます、須永 和葉です。これからよろしくお願いします!』

厨房の入り口からひょこっと顔を覗かせ挨拶をすると、一番年輩だと思われる優しい顔をしたおばさんが返事をしてくれた。

「こんなおばちゃんばっかだけど、仲良くしてねぇ」

『こちらこそ、こんな小娘ですがよろしくお願いします!』

取り敢えず女中さん達に自己紹介を済ませ、言われた通り土方さんの所まで戻ってきた。
さあ、朝ごはんだ!

そして今、ドS、私、ゴリラ、マヨの順番で並んで朝ごはん中……。

食べにくい! 一言それに尽きます。
まあ、土方さんの隣で犬の餌を見なくて済んだだけマシだと思ってたけど、近藤さんはやっぱりゴリだった!

ヨーグルト+バナナ。
健康的だと思うよ? でも、ヨーグルトとバナナって美人なお姉さんが摂る食事だよ!!

ゴリラが美容気にしてどうすんだ!
寧ろ米食え! 米!! そんなんで真選組局長としてどうなんだ!

なんて、思いながらもぐもぐと自分の朝ごはんを堪能する。
美味しいなー、この漬物。今度作り方教えてもらおう。

「そういや、和葉ちゃんの服はそれしかないのか?」

それしかとは、下校中だった私はセーラー服のままなのである。
こちらで言うとコスプレ的なものになるらしく、挨拶した時も視線が凄く痛かった!

こんなうら若き乙女を穢らわしい目で見やがってっ!

『そうですね。これしか持ってないと言うか、持ち物という物がないですね』

冷静に言ってみたけど、大分可愛そうな子じゃね?
私、めっちゃ惨めじゃね??

『近藤さぁあん! 私何も持ってないよぉおおぉお!!』

未だにヨーグルトとバナナを頬張っている近藤さんに泣き付いた。

その顔が酷かったのか、近藤さんに凄く引かれてる。
ゴリラに引かれるとか凄い屈辱!

「ちょっ和葉ちゃん!? 嬉しいけど、おれにはお妙さんっていう人がっ! いやでも、それでもいいかも……」

「近藤さん、戻って来てくだせェ」

ちょっ、私そんなつもりじゃないから!

お妙さんも嫌だろうけど、私だってゴリラ落ちとか期待してないよ!?

「と、取り敢えず! 今日は非番という事にして、買い物しておいで」

そう言って微笑む近藤さん。お父さんみたいだな、なんて思ったのは近藤さんには内緒で。

絶対図に乗るから。

『あ、でも私、お金持ってないです……』

そう、何も持ってないって言う事は、お金もない訳で……。
それに、もし財布を持っていたとしても、この世界で諭吉さんや他の皆々様使えるか分からないし。

「ああ、その事は俺に任せておけ! 俺がローンを組んでやろう」

えっへん! そんな感じに腰に手を当て偉そうな近藤さん。
でも、言ってる事はよく分からないよ、流石ゴリラさん。頭はチンパンジーより劣るよね。

「近藤さん、それは俺達にもよく分からないんだが……」

久しぶりに出て来たと思ったら、アンタも分かんないのかいっ!
普通なら土方さんが近藤さんの通訳でしょうが!

「そうですぜィ。近藤さんはローン何か組まなくても持ってるじゃねぇですかィ」

総悟はいやらしく笑うと手でお金のサインを作る。
同い年の子のする反応じゃないぞ!

「いや、俺が組むというか、今回は俺のポケットマネーを貸すが、それを働いてもらった分の給料から少しずつ返済してもらおう! って言う近藤生活安心ローン! 的な?」

それで俺がローンを組む、だったのか。略しすぎだよ……。
それに分かりにくいよ!

「説明略しすぎだろっ! 俺が立て替えるから買い物してこいでいいだろ!?」

「あ、成る程。流石トシだなっ!」

がははと笑うと近藤さんはお財布から適当にお札を出すと私に渡してきた。

あの、せめて後にしてくれませんか……。
他の隊士からの視線が痛いし。現ナマ諭吉様が10枚て、てか、諭吉なのかよっ!

「ついでに、今日トシが非番だから江戸を案内してもらいなさい!」

「何で俺がそんな事しなきゃなんねぇんだ!!」

スッゴく嫌そうな顔をしましたね、土方さん。
酷くない? 私、これでもヒロインなんですけど!

「何でって、和葉を拾ってきたのが土方だからだろィ」

「おい、テメェ……。誰を呼び捨てにしてんだ? あぁ?」

ああ、犬と猿の喧嘩が始まったよ……。

「誰が犬と猿だ!」

『またまたエスパー!?』

「お前が声に出してるからでさァ」

呆れた声で総悟に言われた。
てか、私どんだけ口が緩いんだ。思考と口が繋がってるのかな?

「和葉がバカだからじゃないんですかねェ」

『あれ? 私今は声に出してないよね?』

「今度は顔に出てやした」

私の心は隠せないって事か!

「下らねぇ事考えてねぇで早く食って支度しろ。さっさと買い物をして戻ってくるぞ」

『え、でも2人とも休みなだからゆっくり出来るじゃないですか』

ついでに色々と江戸を案内してもらって、そして偶々、ぐーぜん万事屋ご一行に会えるっていう下手な展開を期待したい。

「何で俺の休みを丸一日お前の為に使わねぇといけねぇんだよ!」

そう言うと、土方さんの鉄拳が私の頭に落ちてきた。
痛いっ! 手加減とかなんもなしに、普通に殴られた!!

『近藤さん! 土方さんのパワハラです!! 部下を大切にしないなんて、今すぐ逮捕しましょう!』

「和葉の割には良い事言うじゃねぇですかィ。部下を大切にしない土方の代わりに俺が非番を貰いまさァ」

何故か総悟が便乗してきた。
でもこれ、総悟が私の買い物に付き合わないで普通にサボるよね?
仕方ない土方さんで我慢しとこう……。

さ、片付けしたら買い物だ!!

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