「響っちー! どっか寄ってかないスか?」
『お前、モデル業は……』
「今日はないんスよ」
まるで尻尾を振っているかのように見える黄色いのは黄瀬涼太。入学式以来、何故か懐かれてしまっている。二年になった今でも、何でこんな俺と一緒にいてくれるのか理由はわからないけど。
嫌な気はしない。初めこそ緊張してがっちがちに固まっていたが、時の流れとは恐ろしいもので。むしろ、嬉しかったりもする。
元々部活なんかやる気が無かった帰宅部な俺は、当然放課後は暇だ。本当は入らなきゃいけないんだろうけど、先生も何も言ってこないしいいかな、なんて。
ちなみに涼太も、曲がりなりにも帰宅部だ。
こんな閉鎖的な性格だから、未だに友達が涼太だけなんだよな……あはは……。否、笑えない。
「どうしたんスか?」
ボーッと涼太を見ていたら、その視線に気付いた涼太がこちらを向く。
何でもないと首を振ると、さして興味が無さそうな返事が返ってきた。自分から訊いといて失礼だなこいつは。
さっきの曲がりなりにも、という理由は、何でも真似してしまう涼太の特技にある。と言っても涼太の身体能力がついていける範囲らしいが。その為度々他部の助っ人に駆り出されている。
どちらかというと身体を動かすより頭を働かせる方が得意な俺には、一度として来た例しがない誘い。来たら来たで上手く応えれる自信がないからそれでいいんだけどさ。
「何か最近さー」
不意に涼太が喋りだした。
『何だ?』
「何もかもがつまんないんスよね」
何もかも、か……。
それを聞いて黙り込む俺を余所に、涼太は言葉を続けていく。
それって、俺といてもつまらないって思ってるのかな。
ツキン。そう考えたら胸が痛んだ。
何故痛むのか、その理由もわからない。……でも、つまらなかったら、一緒にいてくれないよな。
そうやってプラスに物事を考えようとしても、胸の痛みは止まらない。
だから、何なんだよ、これ。
「響っち?」
静かになった俺にやっと気付いた涼太が不思議そうな顔をする。
むかつく、むかつく、むかつく、おさまれよ。
ふわりと吹いた風にのった涼太の香りが、また昨日とは違っていて。甘い香りにまた、胸が締め付けられた。
0408