『あっ、高尾! 清志知らない?』
「宮地先輩? や、知らねっすよ」

 ふーむ、そうか。
 時は放課後、場所は生徒玄関。秀徳高校バスケ部の一年、つまり私達の後輩に当たる高尾を発見。
 彼なら探し人である清志がどこにいたか、どこに行ったかを知っていそうだったのだが、やはり予想は予想だったようだ。
 携帯を取り出し、ディスプレイに映る時間を確認する。部活が終わってからそれなりに時間が経っている。いつもなら私の所に来るはずなのに、あいつは一向に姿を見せない。

 そういえば、今日の朝登校する時もそうだった。いつもなら、いつもなら私が迎えに行って一緒に行くのに。今日は私が清志の家に行った時には、もう清志はいなかった。
 私、何かしたのかな。
 部活中の態度とかには、何ら変わりはなかったと思うけど。

「溜め息なんか吐いて、どうしたんすか名前さん」

 一人で悶々と悩んでいたら、高尾が顔を覗き込んできた。
 いくら私の方が歳上と言えど、身長は高尾の方が上だ。男女差もあるし、彼はバスケットプレイヤーだから背が高くて当然である。
 そんな高尾に顔を傾けて、知るはずのない彼に

『……私さ、最近清志に何かしたっけ?』

と訊ねた。

「よく分かんねぇすけど、俺の知る限りでは何も」

と間髪入れずに高尾が言う。
 やっぱり何もしてないよね。

「何かあったんすか?」
『そう、何かあったんだよ』

 不思議そうに私を見る高尾に、今日の朝の事と今の状況を説明する。
 高尾は口を挟まずに聞いてくれた。そっちの方が有り難い。そして口を開いたのは、話し終えてすぐの事だった。しかも高尾にしては珍しく、やけに言いにくそうに。

「実は、名前さんには言うなって言われてたんですけど、」

 一度溜めて、再び口を開く。
 否、正式には開こうとした。
 高尾の言葉を遮って出てきたのは、きっちりとテーピングされた左手だった。それを辿って見上げると、眼鏡の奥の緑の双眼が高尾を睨み付けている。
 待たされてか、はたまた別の理由か。彼の眼は苛つきを隠せずにいた。

「貴様は目を離した隙に……」
「でもよ真ちゃん、宮地さんから言われるよりましじゃね?」
「どちらにしろ同じだろう、彼女が傷付くことに変わりはない」
「なら、俺が言っても同じだろ」

 話が読めない。読めないが、嫌な予感と緑間が押されているのだけは確かだ。
 好きにしろ、だが俺は何も知らんぞ、ため息混じりにそう言うと緑間は踵を返して外に出ていった。
 高尾ははいはいと笑うと、緑間が来る前の様に私に向き直った。

「んで、さっきの続きなんですけど」

 固唾を飲む。
 変に緊張してしまう。

「実は宮地さん……」


241203


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