何、彼女とか。
何、清志を奪わないでよ。
何、何で清志なの。
何で、あの娘なの。
足取りは重く、歩く度にアスファルトに染みが残る。それをゆっくりと太陽が乾かしていく。
見たくなかった。何となく教室から窓の外を眺めていたら、見知った黄色と知らない黒髪が歩いていた。
手、繋いでた。……当たり前か、恋人同士なんだし。
あぁ、見たくなかった。
知らないけど、知ってる娘。誰にでも優しくて、女の子らしくて、可愛らしい。あの娘は私なんかと大違いだ。
はぁ、つら……比較したっていいことないのに、何やってんだもう。でも、私だってずっと前から好きだったんだ。片想いの長さでは勝ってる。嬉しくないけど。
あー嫌だな、これからあの姿をずっと見ていくのか。いちいち泣かないようにしないと。
幼馴染みの私でさえ知らない顔を見て、声を聞いて、話を聞いて、温度を知るんだろうな。優しい清志は私だけの特権だったのに。
それを考えたら、あの娘が羨ましくて、妬ましくなった。胸の奥にどす黒い感情が渦巻いている。
嗚咽が酷くなる。道に誰もいないことが唯一の救いだ。
ヴヴヴと携帯が制服のポケットの中で振動している。
家に帰って、落ち着いてから見よう。そう思って無視するが、振動が消えることはない。電話だろうか。
鼻をすすって涙を拭う。それでも次から次へと零れ落ちる。
一度振動が消えて、すぐまた揺れ始めた。
あーあ、こんなことになるなら告白しとけばよかったかな。それならまだ割りきれたかもしれない。
今度はさっきよりも長く振動が伝わる。
宮地、宮地、宮地、清志。小声で呟く。言う度にポタポタと涙が落ちた。
もうそろそろ泣き止まないと。このまま家に帰ったらお母さんに心配かけちゃう。それは駄目だ。
少し乱暴に携帯を取り出して、相手を確認せずに電話に出た。
『宮地!!』
「は、え、すいません宮地さんじゃなくて」
練習してたら間違えてそのまま出てしまった。ごめん誰かさん。とっても恥ずかしい。
『ごめんなさい、今のは私が言い間違えた……』
「否、別にいいっすけど」
『……ってあれ、高尾?』
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