目の前で繰り広げられた一瞬に、口を塞ぐことができない。
そこにいた誰もが、まさかと自らの目を疑った。
本当に、まさか、あのオフィシャルネットバトラーで名高い伊集院炎山のナビが、一瞬にして消えるなんて。
彼、ブルースはデリートされてしまったのだ。
「私、の……せいで」
メディがぽつりと呟いた。
俯いた彼女の表情は窺えないが、明るいものではないことだけは確かだろう。
しんとした電脳世界には、その一言を拾ったナマエの声だけが響いた。
『貴女、今がどんな状況か解っててウラに行こうとしたの?』
ビクリと俯いているメディの肩が震えた。
勿論彼女達だって、理解していなかったというわけではないだろう。
だがしかし祖父を助けたいという想いがそれを勝り、ウラに行こうとしていた。
こんな状況じゃなければ、ウラに行こうが行かまいが自己責任なので誰も構いはしない。しかしメディとジャスミンは民間ナビと民間人だから、必然的にオフィシャルの保護対象となる。
ブルースは自分の仕事を全うした。
そう言ってしまえばあっさりと終わってしまうが、今のナマエはそれだけで終わることができなかった。
『今のウラに行くってことは、自分から死にに行くようなもの。それくらい理解できない訳じゃないなら、今後こんな軽はずみな行動は控えなさい……もう、ブルースみたいな犠牲を出したくなければね』
「っ、言い過「ナマエ、そのくらいにしなさい」
ナマエの言葉がメディに突き刺さると同時に。呆然と見ていたロックマンが喋ると同時に。ナマエのオペレーターである名前の制止の声がした。
確かに自分のナビが言っていることに間違いはないのだが、さっき微妙に聞こえた声のように、些か言い過ぎではないだろうか。
名前はそう思いながら、プラグアウトの指示をだした。
後で、謝っておかないと。
『名前ちゃん……なんで止めたの?』
「あれ以上は駄目。ロックマンの言うように、言い過ぎよ」
それを聞いたナマエが、ぐっと押し黙った。彼女もなんとなく自覚していたからだ。
「炎山の所に行くよ」
『……うん』
しばらくしてナマエの泣き声が聞こえたが、名前は何も言わなかった。
なんだかメディとロックマンが可哀想なだけの話になってしまった。
title by 「確かに恋だった」様
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