さっきからずっと睨んでいるのだが、まったく動じない蘭丸にそろそろ怒りが爆発しそうだ。
 余裕そうな表情しやがって、こいつ。心で悪態を吐きながら蘭丸のマークから逃れようと動くのだが、さすがは雷門のディフェンダーと言うべきか。むかつくやつだが、実力は本物である。

「どうした? 今日はぬいてみせると意気込んでいたお前はどこにいった」
『ま、まだ、ここにいるわよ……!!』

 隙の一つや二つができても変じゃないのに、蘭丸はいまだにその隙を見せたことがないのだ。それどころかそれを探すことに夢中になっている私に隙ができてしまうという始末。
 本当にむかつく。なんとかしてギャフンと言わせてやりたい。
 ……事故にみせかけ足をひっかけ転ばせるとか、どうだろうか。単にぬくだけじゃつまらない。うーんなんだか狩屋みたいな感じだが、まぁいいだろう。きっと転ぶはずだ。大怪我しない程度なら多分大丈夫!
 ふふん、と笑みを浮かべる。蘭丸はそんな私を見てか、どことなく不思議そうな表情をしていた。
 よし、今なら油断してるな。行けるっ!

『(覚悟!!)……ってあれ?』

 おかしい、なんで私、傾いて? もしかしてひっかけるつもりがひっかかった!? やばいやばいなんか体勢が危険な気がする!!
 咄嗟にぎゅっと目を瞑った。しかし次に起こったのは、私をより驚かせる事態だった。

「おい名前、大丈夫か!?」
『蘭、ま……え?』

 がっちりと固定された体勢。背中に回された思ったよりもしっかりした腕。そして何よりも、ち、近、近い!!
 この体勢って少女漫画とかでよくあるやつじゃないか。そしてこのまま恋に落ちるとか、そんなパターンじゃないか。残念ながら、私はそんなパターンには、

「怪我がないならよかった」

 パターン、には……。

「……#名前?」

 あああああああもう違うときめいてなんていない! まったくない! 五月蝿い違う少し黙ってろ心臓!!
 悔しいのか、なんなのか、赤く染まってしまった頬を無視することにして、ただひたすらに蘭丸を睨んだ。

『い、いつかギャフンと言わせてやる!!』
「……ギャフン?」
『そんなお決まりな回答はいらねええええ』

 やっぱり凄くむかつくこいつ!!


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