『アーイチッ!』
「わっ!?」
少しだけ助走をつけて飛び付く。
アイチは傾いた自分の身体を、右足を前に出して踏ん張ることで支えた。そして、びっくりしたと苦笑混じりに呟いた。
いつものことなのにまだ慣れないんだ。私も少し苦笑をする。
「嬉しそうだね、ナマエ。何かあったの?」
私がしっかりと抱きついているので振り返ろうにも振り返れないアイチは、回っている私の腕をやんわりと握る。
……まさかこいつは自分の誕生日を忘れているのか?
はぁ、そう溜め息を吐くと、ビクッとアイチの肩が揺れる。
「い、いきなり耳元で息吐かないでよ……!」
私はそれをスルーして、
『アイチったら、自分の誕生日忘れちゃった?』
すると今度は固まって動かなくなった。変なことは言ってないと思うけれど。
横から顔を覗くと、嬉しそうで、少し困惑しているような表情をしていた。頬が紅潮しているのだけはよくわかる。
なんだ照れてるのか。やっぱり可愛いなぁ。
私がふふっ、と笑うと再び動きだす。
「忘れてたわけじゃないけど、きっと誰も覚えてないと思ってたから」
『……何言ってんの。覚えてるに決まってるじゃない』
そこまで言うとアイチの首に回していた腕をほどいて、向き合うように前に回り込んだ。
『アイチは、私の大切な人だもの』
言ってみるとやはりどことなく恥ずかしくなり、だんだん声が小さくなる。どうしよう、私も赤いだろうな。
顔を俯かせて何をしようか迷っていたら、アイチが勢いよく抱きついてきた。
珍しいその行為に、ついに頬が真っ赤になる。どうすればいいかわからず、おずおずとだが彼の背中に腕を回す。
その瞬間私の耳元で、僅かだが声が聞こえた。
「ありがとうナマエ」
本当に小さい声だったが、それが愛しくて。
『うん、愛してるよアイチ』
アイチ君ハッピーバースデー!
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