眼鏡を外した大人びた素顔、少し伸びた髪。ちょっと前まで私と同じ目線だったはずなのに、随分と高くなった身長。
 かっこよくなったと思う、凄く。これ以上私を惚れさせないでくれ。
 そんな彼はヒオウギのジムリーダーを任されているんだから、幼馴染みとして凄く自慢である。鼻が高い。
 前にこの話をしたら、あいつの方がよっぽど凄いよ、と返された。
 確かにそうだなあ。なんたって皆が憧れるチャンピオンなのだから。
 てか、ベルもアララギ博士の助手してて、もう皆私の自慢だよ。

『こうして話すと、私は何もしてないね』

 そう自分をけらけら笑い飛ばすと、はぁとチェレンが息を吐くのがわかった。
 ヒオウギジムはトレーナーズスクールの奥にあり、チェレンはジムリーダーだけでなく先生も務めているのだ。本当に尊敬。
 今は生徒さん達が机にノートと本を広げて調べものの真っ最中。私は空いている椅子に座って、チェレンの邪魔をしているのだ。
 これは俗にいう公務執行妨害なのかもしれないが、チェレンは気にしていない様子なのでよしとしよう。
 チェレンは昔から要領がいいんだ。面倒見もいいし。だからしょっちゅう世話になってる私がチェレンを好きになるのには、時間はかからなかった。

「ナマエも何かしたら?」
『えー……その何かが分かんないからこうやってるんじゃない』
「君は考えてないだろう」

 それに、分かるものではなくて見付けるものだよ。
 次々ぶつけられる言葉に何も言えなくなって黙ると、図星だねと言われた。
 チェレンは続けてちゃんと考えないと、と言うと生徒さんの方に行ってしまった。
 仕方ないじゃないか。探したって今一ピンと来るものがないんだから。
 かといってこのままだらだら過ごし続けたら、私のポケモン達も可哀想だし、お母さんが怖い。

『あ、そうだ』

 いいこと思い付いた。
 ガタッと席を立つと、早足でチェレンの元へと行く。そして、生徒さんに何かを説明しているチェレンの腕を引っ張った。

「だからこれが、うわっ! 何なのナマエ!」
『チェレン先生! 私チェレン先生の助手する!!』

 ぽかんと口を開けて固まったチェレン。そんなに吃驚することだろうか。
 まあいいや。助手になればもっと一緒にいられるし。
 そう思っていたら、目の前にいるイケメンがくすりと笑った。

「そんなに僕と一緒にいたい?」

 更に小声でそんなことを言われてしまえば、今度は私が吃驚する番だ。

『……チェレンってエスパータイプ?』
「ここはノーマルタイプだよ。ていうかナマエの考えてる事なんて、エスパーじゃなくても分かる」
『えー何そ……っ、じゃあ』

 もしかして。もしかして。
 あの気持ちも。

「ナマエが僕を好きってことも知ってるよ」


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