別れよう。
 その詞を聞いてズキンと胸が痛んだはずなのに。それは自然に、まるで流れる水のように、はたまた吹き逃げる風のように、当然のように心に落ち込んだ。
 私が今どんな顔をしているのかはヒロトにしかわからない。苦しそうな表情なのか、悲しそうな表情なのか。若しくは怒った表情、嬉しそうな表情をしているのかもしれない。

『うん、わかった』

 だがそれは去るまでのこと。この場から一歩でも、動く前のことだ。
 半端な覚悟だったという訳じゃないんだ。だってふられたら、友達にさえ戻れなくなるかもしれないから。
 さっきまで幸せだった愛という感情が、ころころと溢れていく。拾おうとしても手をすり抜ける。
 好きだったんだ。

『……』

 確かに愛してたんだ。

『……っ』

 ヒロトだって、確かに愛してくれたんだ。

『う、ぁっ』

 私の知らない間に何かが狂ったのだろうか。
 一つ歩く度に涙が溢れてくる。
 ヒロトがそれでいいと言うなら、別れたって構わない。そんな嘘を吐けるほどの余裕はない。ぐるぐるぐるぐる、頭の中がいっぱいではち切れそうだ。
 一昨日という日の話。
 今日という日の私は、ヒロトへの愛を捨てれないまま過ごしている。
 ずっと持っていても苦しいだけだなんてわかってはいる。
 でも、だけど、もう貰ってくれる人はいないじゃない。
 考えなければいいんだと思うほど考えてしまう。考えなければいいんだと考えている時点で、考えてしまっている。

『駄目、だよ』

 私はまだヒロトを求めてるんだよ。
 でも縛っちゃ駄目なんだよ。
 私はまだヒロトが好きなんだよ。
 でももうただの知り合いになっちゃったんだよ。
 ヒロトはどうなんだろうか。やはりもう、知り合いだと割りきっているだろうか。
 あぁ、せめて友達に戻れたらいいのに。
 そしたらもう何も望んだりしないよ。
 昨日の私は涙を拭うしかできなかった。
 今日の私は、涙を拭いながら、想いの焼却炉を探し続ける。


120121



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