(※ちょっとグロ)
タッタッタッタッ。
嫌になるくらい響く足音。もうずっと聞いていて耳にインプットされてしまっている。
一体今は何時ぐらいなのだろうか。外は晴れているのだろうか。私は日を見ることが出来るのだろうか。
額から溢れて頬を滴る汗を拭いながら考える。それもこれも全て、出れたらわかる話なのだが。
もうすっかり暗闇に慣れてしまった目で周りを見回す。
空気が変わった。淀みが濃くなった。
僅かな変化だが、判るようになってしまった。喜ぶべきか悲しむべきか。こんな状況なら、きっと喜ぶべきなのだろう。
スピードを落として耳をすませる。
何かがいる。それだけはわかった。
腰についているホルスターから銃を取り出して構えた。
今ここにいるのは、私とあと一人、吹雪士郎だけだ。そこから考えると、吹雪しかいないわけだが。
それ以外の人はみんなとうに生きてはいない。
ここに来てから嫌でも鼻につく死臭が、より一層増した気がする。
『吹雪なの?』
「……うん、僕だよ」
相手が確認できてからやっと落ち着けた。はぁ、息を吐き銃を下げる。
この場では吹雪と私はちょっとしたコンビを組んでいる。そっちの方がいろいろと楽だし、戦うときにも有利になる。
しかし問題はこれからだ。
この空間からは、生き残った一人しか出ることができない。つまりどちらかが死ななければ出られない。とすると、私か吹雪かが死体の仲間入りしなくてはならないわけである。
勿論私はそんなのごめんなわけで、吹雪だってそうだろう。
だから二人で出れる方法がないかを探し回っていた。
今のところ、方法は見つかってはいない。もしかすると、そんなもの存在しないのかもしれない。でもすがらずにはいられない。
死にたくはないんだ。私だって自らの命は惜しい。
それは、吹雪に背を向けて周りを確認していた時の事だった。
『っ!?』
横腹が熱く、じわじわと痛みが広がる。
まさか、息を飲んで振り向くと、笑った吹雪と目があった。
ぞっとした。身体中鳥肌が立ち、身動きがとれなくなる。
いまだに熱をもつそこに手を当てると、べっとりと赤い液体がついた。それが血だなんて言われなくてもわかる。
そこでやっと身体が動いた。
再び銃を構えて発砲する。
パァンパァンと打つ音と足音、金属の壁に跳ね返る音。全てが吹雪の笑い声と私の息に飲まれていく。
全く当たらない。なぜだ、確実にそこにいるのに。
舌打ちをしたと同時に、右足、左足の順で感覚が失せていった。
『あ゛ぁぁぁ゛ああぁ!!!』
あまりの痛さにがくりと膝をつく。
しまった、もう動けない。
死ぬとしか思えなかった。
なぜ吹雪は笑っていられるんだ。やつは裏切ったんだ。いや、やつははじめから仲間なんかじゃなかったんじゃないか?
頭の中を猛スピードで駆け抜けていく。
はじめから、私は死臭にまみれる運命なのか。それこそ吹雪にとっては笑い者だ。自分のシナリオ通りに動く駒だったわけだ。
もう二回銃声が響いた。
私の身体は二度跳ねて地に伏した。どくどくと流れる血は止まらない。
そこからはもう何がなんだかわからなかった。
吹雪が笑う度に私の身体は跳ねて、血を撒いて、臓器を飛ばして、ぐちゃりと可愛いげの欠片もない音をたてた。
昔憧れていた可愛らしい、白雪姫のようなドレスなんてもう着れないわね。
その時、それしか記憶になかった。
*
『あーぁ、またか』
ヘッドフォンを外してチョコを頬張った。
何度やっても吹雪に勝てない。電話越しに文句を言ってやろうと思い携帯を取り出す。
パソコンのディスプレイにでかでかと映る悲惨な姿をした“私”を眺めながら吹雪が電話にかかるのを待った。
ほどなくして、こんにちはとうざったらしい声が脳に響いた。
『手加減くらいしなさいよ』
「“駄目だよ、手をぬいたら僕が負けちゃう”」
何言ってんだか、呟きながらもう一つチョコの包みを開けた。
「だから殺される前に殺さないと、ね」
開けただけで、そのチョコは食べられることはなかった。
実は大分前に書こうと思ってた(だけの)バトロワ的な内容の長編、の最後の部分
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