まさか、まさかまさかまさかのまさか。予期せぬ出来事が発生した。
 あの悠太が、彼女? あの悠太に、彼女?

『いつどこでなんでどうしてどのように』
「ちょっと落ち着きなよ名前」

 どうしようもなく祐希の肩を掴むと、やんわりと頭を撫でられた。
 見下ろされてるのはしかたがない、私の方が背が低いんだから。自然の原理だ。
 しかし今優先されるべきはそんなことではなくて、

『私聞いてないんだけど』

 弟なら知っているだろう。きっと私は、そんな確証のない自信を含んだ目だったのだと思う。
 だから祐希は溜め息を吐いて、俺だって驚いてますと呟いた。
 今度も私が驚く方だった。
 なぜなら知ってるとばかり思っていたから。
 なぜなら滅多なことがない限り表情という表情を表さない彼に、表情が表れていたから。
 なんだ、二人とも同じなんだ。はたしてそれは安心だったのか、落胆だったのか。
 どうしようもなく祐希の肩を揺さぶったことに謝った。
 そうだよね。知ってたら、何かしら言ってくるだろうし……周りの、要達も。
溜め息を吐いて座り込んだ。
 
『……結局こうなるのね、私って』
「なにが?」
『昔からさ、好きになった人が必ず誰かとくっつくんだ』

 あと一歩だったかもしれない関係で、なかなか進めないでいたら、その人はもっと先に行ってしまった。
 失恋に定評がある名前、なんて友達からからかわれたことがあるけど、正直笑い事ではない。辛い。とても。
 いろいろ思い返してみた結果、やはり涙しかなかった。
 別れるかもしれないのに。一度相手が誰かと付き合ったら、もう駄目だなってそこで必ず諦めてた。
 自分で言うのもなんだけれど、たいした恋じゃなかったのかもしれない。何度も思った。
 自分のせいで自分はへこんでいたのだ。
 だけど今回は、別れるかもしれないとはなかなか思えないけど、でも、諦めたくないって思ってる。

『……たし、私、こんなに……悠太が好きなんだ』
「……見てたらよくわかりますよ」

 祐希がしゃがんで私と目を合わせる。
 そうして言った言葉に、泣き笑いしかでてこなかった。

「いっぱい泣くといいよ」

 祐希らしい、ひどく優しい一言に、私は心から感謝した。


111210
修正:120129




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