おかしいなぁ。
 そう首をかしげたのはいつの話だっただろうか。
 彼の様子がいつもと違うことに気付いたのは、毎日観察してたから、見つめてたから。そうでなくとも気付けるぐらい、彼には異常が発生していた。
 ナマエは最近、彼、先導アイチに違和感を覚えていた。
 暗くなった、という訳じゃないし、積極的になった、といえば少しそうかもしれない、と頷ける。しかしそれよりも、強さをより求めるようになり、それに溺れている気がする。
 だが今、それが"少し"でなく"大いに"に、気がするではなく事実に変わろうとしている。彼女の目前で。

『アイ、チ』

 名前の主によって壁に縫い付けられた腕を動かそうとするが、全く動かない。
 はて、アイチの力はこれほどまでに強かっただろうか。もしかしたら、普段彼が出していないだけで、これが本来なのかもしれない。
 そう冷静に考える暇さえないくらいびっくりしている状況下で、ナマエは冷や汗を流した。

「ナマエ、僕は君が好きなんだ」
『っ!!』

 妖しく笑う顔を前にそんなことを言われたら、嫌でも反応してしまう。
 ぴくりと揺れた肩を見たアイチはクスクスと笑うと、ナマエの上唇を舐めた。そしてそのままキスを落とす。
 抵抗しようにも腕が動かないからできない。足ならいけるかと思ったが、ぬけかけた腰を支えるのに必死で地から離すことができない。
 つまり、されるがままの状態である

『ふ……ぅん、あっ』

 アイチの舌が、ざらり、ざらりと容赦なく口内を犯す。
 反動で出てきた涙が床に跳ねたとき、やっとナマエは解放された。
 もうその時には腰は完全にたたなくなっていて、股の間に入り込んだアイチの足に座るかたちになっていた。

「愛してる……櫂君には、譲らないよ」


120207




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