しゃんと伸びた背筋、しっかりと整えられた髪。

「あなたがコナー?」
「はい、貴方は……名前・名字巡査部長ですね」

 真っ直ぐにこちらを見据える澄んだ瞳、落ち着いた声、隙のない表情。アンドロイドということを抜きにしてもハンクと相性がいいタイプではないな。それがコナーの第一印象だった。

「私のことは名前でいいからね」
「ですが……」
「私はあなたの主人ってわけでもないし、ダメかな?」
「……では名前、以後よろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしくお願いします。……それで、」

 小さくお辞儀をし合った後で、示し合わせたように私たちの視線がハンクのデスクに注がれる。
 「アンドロイドなんかと組めるか」だとか「どうにもいけ好かない」だとか昨夜電話で話していた彼は案の定というか、未だにここに姿を現していなかった。まだ酔いが覚めていないのか、そもそも来る気がないのか、どちらにせよまあいつも通りといえばいつも通りだ。だけどこんな日くらいちゃんと出勤してくればいいのに、なんてハンクがそんなこと考えるわけないか。

「まさかとは思うけどハンクから連絡もらってたりは」
「いえ、ありませんね。先程メッセージは残しておきましたが」
「そっか、ありがとう」

 コナーにお礼を言ってから、抱えていた書類を自分のデスクに下ろす。私の行動をじっと見守っていた彼はゆっくりと近付いてくると一呼吸置いてから口を開いた。

「私は、アンダーソン警部補と貴方と三人で変異体捜査をするよう命じられました」
「私もそう聞いてる」
「名前は嫌ではないのですか。私と……アンドロイドと組んで捜査をするのは」
「ハンクには嫌がられた?」
「それはもう」
「でしょうね」

 躊躇いもなく答えるコナーについくすくすと笑い声が零れてしまった。
 市警には、アンドロイドが捜査官なんて、と思っている人もたくさんいる上に特にハンクはアンドロイドのことを快く思っていない。その辺りの事情は私も知っているから咎めたりするつもりはもちろんないけど、コナーにとっては理不尽極まりないだろう。

「私は嫌だとは思わないよ」
「それなら良いのですが」
「……皆に色々言われた? ごめんね、気にしなくていいから」
「気にはしていませんが……何故名前が謝るんです?」
「ここにいる皆は私の仲間だから。……もちろん今日からはコナーも仲間」
「仲間……」

 ぽつりと呟いたままコナーの言葉が途切れる。相変わらず無表情だけど何かを思案している様子だ。
 しばらく黙ったままで見守っていると伏せていた視線を上げた彼としっかりと目が合う。

「それでは最良の"仲間"になれるよう努力します」

 そんなに畏まらなくても、とつい思ってしまうけど彼にとっては畏まっているわけではなく、至極普通の返答なのだろう。

 事件の捜査は本来楽しむものではないけど、ハンクとコナーと一緒にする仕事は何だか楽しくなりそうだ。──そう思っているのは私だけかもしれないけど。
 右手を差し出すと、コナーもどこかぎこちないながらも右手を差し出し握手を交わす。彼の手は大きくてしっかりとしていて、しかし私の手を握る力は加減が分からないといった感じでひどく優しかった。

back
home