姿
↓イチャつき度低め
フラグ程度のNCです
彼女の姿
あまり口数の多くなかった清水が谷地さんの入部以来声を聴くことが多くなった気がする。なんてぼんやりと考えながらオレは彼女がマネージャーとして働いている様子を目で追っていた。三年間共に排球部で活動してきて何でもそつなくこなし、落ち度がないように思われていた彼女だが、最近になって気付いたことがわりと多い。部活帰りにコンビニのお菓子売り場に立ち止まっていたりとか、練習中にちらっと微笑みを見せたり、その他諸々。あまり表には出さないが排球部を誰よりも気遣っている。その情熱はきっと誰も気付かないところで燃えているのだろう。
いつからかオレは彼女の姿を好きになっていた。人として、女子としてというわけでもなかった。目が合うと何事もなかったようにそっぽ向かれるけれどそれでもいい。マネージャーとして頑張ってる姿が好き。知っていることが増えると嬉しくなる。特別な何かだとは思わない。
「何してるの」
部活終わりの人の少ない体育館でオレは座ってトスのイメトレをしていた。オレの上げたトスが弧を描いて旭の手元まで飛んでいく。上手く決まると大地を始めとするチームメイトの労いの声が飛んでくる。
「ねえ」
トントンと肩を叩かれてようやく清水に気がついた。
「ああごめん、イメトレしてたら遅くなっちまった」
ここの所しょっちゅうイメトレしている気がする。授業中や練習の合間の休憩時間、帰りの電車など暇があると脳内でトスを上げている。
「疲れてるでしょう。早く帰って寝た方がいいと思うよ」
「そうだな」
こんな風に心配してくれる清水が掛け替えのない存在に思えたのはわりと最近のこと。部員のことをよく見ていて、すごく気が利く。
「もう真っ暗だな。駅まで送っていくよ」
こんなに暗い田舎の道を女子一人で歩かせるのはいただけない。
「ありがとう。嬉しい」
頬は薄ら紅潮して曇った眼鏡の奥に笑みが見えた。こうも嬉しそうな清水の顔を見たのは初めてな気がする。
駅までの帰り道、何を話したら良いのか分からず戸惑った。こんな風に女子と二人きりになるのは初めてだ。三年間排球部で共に活動してきたとはいえ清水とて立派な女子だ。側から見れば彼氏と彼女のような並び方で歩くのは緊張する。
「もうすぐ駅だよ」
だと言うのにほとんど喋れていない。今更排球に関する話しでは在り来たり過ぎる。おやつの話題はもうネタ切れだ。白線を踏みながら歩くオレは彼女の小さな後ろ姿に心を奪われていた。
「もうすぐだね」
「何が」
「何でもない。じゃあね」
清水は小さく手を振って去った。
「もう駅か」
清水の後ろ姿が少しずつ小さくなっていった。
いつの間にか清水の姿に心を奪われている。もしかしたらオレは恋をしていたのかもしれない。
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