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君たちを憎むことも、誰かに感情をぶつけるのもすべてお門違いだとわかっていた。だから、静かにこのまま生きようと考えてた。君に会うまでは、彼らに会うまでは。
「鬼怒田が忙しいから私が来たが…これはどういうことだ?敵の侵攻じゃないだろうけど。」
訓練室に穴が空いたというわけのわからない話を聞きつけ、駆けつけた。入隊した訓練生の訓練中と聞いていたがいったい何があった。
「ミレアさん、珍しいですね。」
「はぁ、珍しいも何も私の仕事だろ。現場にいたお前らの話を聞けば、この子が穴を空けたことになる。」
大砲で穴をあけたような空洞が壁にできている。もし、これが目の前で怯えている少女がしたことなら…。ちゃんと力の使い方を教えないと、とんでもないことになる。
「ほんとうに、ごめんなさい……。」
「大丈夫だよ、責任は現場監督の佐鳥が取るから。」
「ひええ!?東さん!?」
「意地悪をいってやるなよ…、東。佐鳥隊員、この件は鬼怒田さんに報告しておく。それでなんか言われた時は私が適当に何とかするよ。」
「マジですか!!ありがとうございます!」
ポケットから飴を取り出す。鬼怒田に報告へ戻ろうと去ろうとした時、足音が聞こえる。報告しようとした人物のお出ましだった
「なぜ穴が開いとるんだ!?誰がやった!?」
「鬼怒田、これは事故だよ。彼女のトリオン能力が高かったから穴が空いた。怪我人は無し、近隣住宅への被害もなしだ。怒るなよ。」
「あの…玉狛支部の雨取千桂です。すみません!わたしがカベを壊しました!」
あまとりちか、その名前を聞いた瞬間…電撃が走る。思考回路がフリーズする。口に加えていた棒つき飴を落とした。
「ミレア…ミレア!!」
「悪ぃ、聞いてなかったわ。壁の補修のことか?」
「どれくらいで済む?」
「急ピッチで私がやれば1時間くらいで。」
棒つき飴を拾い上げ、答える。
「お前に頼む、はずせない用事があるからな。」
「わかった、終わったらデータを送っておくよ。」
鬼怒田が彼女、雨取千桂に話しかけている様子を見ていた。読みが同じ名前なだけで、彼女とあの子は別人だ。同じ名前の読みってだけで反応するのも私もダメだな。
あの子は自分のやったことを謝りはしたが、許してもらえるとわかってるのか心から反省してない素振りだった。
作戦指揮を無視して単独行動をよく起こし、1人で敵の部隊を壊滅させてくる。
「あの、さっきはありがとうございました。」
鬼怒田は持ち場に戻ったため、話は終わったらしい。彼女が話しかけてきた。
「…………、いいよ。大したことじゃない。それが私の仕事だから。」
「名前、教えてもらっていいですか!」
「ミレア・アシーネ、本部直属のエンジニア。」
ポケットから何個かあった飴を取り出す、それを彼女の手に握らせる
「気にすんな、雨取。」
「ミレア〜!!」
「陽太郎、またほっつき歩いてんのか?」
「きょうはあめないのか?」
「あめはないんだよ。売り切れた。」
自販機のボタンを二回押す。紙パックのオレンジジュースを陽太郎に差し出した。
「これで我慢しろ。」
「おれはかんだいだからな、きょうはこれでゆるす!」
「はいはい、ありがとうございます。」
子供は嫌いではない。このアルパカのような動物に乗っている子供は陽太郎。
「ミレアはいいやつだが、かわいげがたりん。」
「奢ってもらっててそれかよ。」
生意気だが、5歳の子供に分別をつけろっていうのが無理がある。
「そういえば、雨取千桂って子…あの子って、前から玉狛にいたのか?」
「いや、しんいりだ。」
「なるほどねぇ…。」
指導の方は心配する必要はないだろう。あれだけのトリオンの持ち主が自衛手段がないのは不味い。なので、少し心配していたが玉狛にいるなら懸念することはない。ただ、最近本部の方が慌ただしい、何か起こるのか?
私は何も聞かされてない。これでも旧ボーダーがある頃からいるんだがな。
「陽太郎、お迎えが来たぞ。」
「むかえなどいらん、まだあそぶからな。」
「おっ、ミレアさんじゃん。久しぶり。」
「久しぶりじゃねぇよ、迅。玉狛の連中はこのお子さまを放置してていいのか。まぁ、勝手に抜け出したんだろうけど。」
声をかけてきたのは迅だった。彼も陽太郎と同じ玉狛支部の人間だ。陽太郎を迎えに来たわけじゃないだろうな、私にも用があるんだろう。
「玉狛に寄ってかない?」
「陽太郎を送っていくだけなら。それ以上は他の仕事が立て込んでる。」
トリオン体の換装をほどく。
「陽太郎、ミレアさんが玉狛に寄ってくれるって。」
「そうか、ようやくミレアも玉狛にはいるきになったか!!」
「あのなぁ、送ってくだけだっての。」
子供は無邪気でいいな、なんて思いながら足を進めた
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