語り継がれる
この国のほとんどの魔法使いや魔女たちは
とある城にて魔法の技術や知識を学ぶ。
その城のどこかには
選ばれたものしか入ることの許されぬ
幻の空間があるとか。
その空間には
失われた歴史や改竄された過去の真実が眠るという。
その空間には
忘れ去られた古の魔法や絶滅したはずの植物が今なお生きているという。
ありとあらゆる書物が収められたその場所は
過去と未来が共存している。
その空間に辿り着けた者は
この城の長い歴史の中でも50人に満たないらしい。
確かに存在していると辿り着いた者は言うが
そこへの行き方は誰も口を割らない。
ただいかにそこが素晴らしい空間であったかを語るのみ。
誰も知らないこの国の全てがそこにはある、と。
人々はその伝説を語り継ぎ
深く閉ざされたその空間を"深淵"と呼んだ。
深淵は人間の進化の終着点である―――
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