※ヘアバンドが気になる。



「露伴先生いっつもそのヘアバンドだね」
「ぼくのアイデンティティと言っても過言じゃないからな」
「ふーん」
「何だその興味の無さそうな返事は!」
「べつに〜」
「(カチン)」
「ねー、ヘアバンド取ってみてよ〜」
「知らないね」
「ねーってばあ〜」
「……」
「ねえ〜、無視しないでよ〜」
「…知らないって言ってるだろう!」
「あー、わかった!取ったら誰かわからなくなるから取らないんだ〜」
「君は!ぼくを!怒らせに来たのか!」
「違うよ〜。露伴先生と一緒にいたいから来たの」
「え……。……ふ、ふん!」
「ねえ〜、取って見せてよ〜」
「…ぼくがこのヘアバンドを取るタイミングは3つだけだ」
「ほー」
「風呂に入る時と眠る時」
「あと一つは?」
「君を抱く時だ」
「えっ」
「誘ったのはそっちだからな。さあ寝室へ行くぞ」
「さ、誘ってないれす…」
「ヘアバンドを外した所を見るんだろ。さあ行くぞ。それともここで抱かれたいのか?」
「ち、ちが…。あわわ…」
「寝室まで待てないとは中々せっかちな人間だな、君も」
「せんせ、人の話聞いて……わあー!」
「君ってばさあ…もっと色気のある声出せよ…」









※露伴のてって。


「どれどれ」
「……」
「ほお〜」
「……」
「ふむふむ」
「……いい加減手を離してくれよ。鬱陶しい」
「露伴くんの手きれいだね」
「誰と比べて言ってるんだよ君は」
「そゆ訳じゃないけどさ〜。指長くてきれい」
「何だよ、手フェチって奴か?」
「うーん、そうかも!」
「ほお〜。君ってば随分と厭らしいなあ(ニヤニヤ)」
「…露伴くんがろくでもない事考えてる顔してます!」
「そんな事言う君はこうだな」
「いででで!すいません!頬っぺたつねるのやめて下さい!」
「ふん」
「くぅ…。でも何で手フェチだと厭らしいの?」
「男の手は生殖器の象徴らしい」
「……前言撤回します。手フェチじゃないです」
「その上、指が長い男は陰茎も長いらしいぜェ〜?」
「……どうして距離を詰めるのかな、露伴くん」
「なあ、どうなんだよ?」
「…何が」
「さっきぼくの手を見て指が長いって言ったよなァ〜?」
「……だ、だからどうした」
「実際にぼくのが指の長さと比例してるか君ならわかるだろ?」
「わかりかねます」
「ほお。まあそれなりに長さが無いと毎晩あんなに君を喜ばせてやれないよな」
「わかりかねます」
「なら、今から確かめようじゃないか」
「え、遠慮します!」
「おいおい、遠慮するような仲じゃないだろ」
「ひ、ひぃっ」







※犯人その1


「ぐすんぐすん」
「え、泣いてんすか?え?え?」
「うぅ…、仗助くん…」
「ちょ、ちょっとどーしたんすか?」
「あのね…、どうやら下着を盗まれたみたいなの…」
「え!」
「ベランダに干しといた下着が無くなってたの…」
「まさかの下着ドロボーって奴っすか?」
「ひどいよ、ひどいよぉ…」
「あー、もう泣かないで下さい。よしよし」
「うわああん、仗助くん」
「よしよし、かあいそ〜に」
「ひっくひっく…、お気に入りだったのに…」
「下着ドロボーとか人の風上にも置けないっす」
「最近買ったばっかだったんだよぉ…」
「あの可愛い奴っすよね?ピンクの奴」
「うん…。ピンクの奴…。…ん?」
「まあ確かにあれ可愛かったもんな〜。ピンクのストライプに真ん中の緑のリボンが何とも言えないっすよね〜」
「…仗助くんはどうして盗まれた下着の事知ってるの」
「あっ、やべ」
「………」
「ち、違うっすよ!俺が持ってるのはブラの方だけっす!」
「でも持ってるんだよね」
「いや!持ってるけどブラだけだから!セーフっす!」
「アウト」
「ぎりぎりセーフ!」
「アウト」
「………」
「…返してよ」
「えっと、」
「返して」
「し、使用済みでも良いなら…」
「………」







※犯人その2


「ぐすんぐすん」
「何泣いてるんだよ」
「露伴くん…、ぐすん」
「鬱陶しいからぼくの前で泣かないでくれないか」
「ひどい!うわあああん」
「少しは静かに出来ないのか君は!」
「うっ、うっ…。露伴くんが酷い事言うから…」
「全く君って奴は…。ほら頭撫でてやるからこっちに来なよ」
「ひっくひっく…」
「で、何で泣いてるんだよ?」
「下着が盗まれたんだよぉ…」
「下着?君の?ハッ、とんだ物好きもいたもんだな」
「露伴くんひどいよぉ…、本当にショックだったんだよ…」
「あーもー、頭撫でてやってるんだから早く泣き止めよな」
「だって、だってぇ…。最近買ったばっかりだったし」
「また買えばいいだろ」
「そーゆー問題じゃないよぉ…。ふえぇ…」
「泣くなって…。…ほら、これで涙拭えよ」
「んぅ、ありがとう…。…ん、露伴くんのハンカチ随分と可愛いね」
「あ、」
「……、ていうかこれ、私の下着…」
「しまった、ぼくとした事がポケットに入れたままだった」
「………」
「言っておくが返すつもりは毛頭無いぞ」
「なんで」
「これは君のベランダからぼくが盗んだものだから今はぼくのものだ」
「言っている意味がわからない」
「相変わらず頭が弱いな君は」
「………」
「まあ、ぼくはショーツの方しか持ってないからセーフだよな、なっ?決めたね?」
「なにが?なにが決めたなの?返してよ」
「…仕方ないな。今日の夜に使用予定だったから明日返す」
「………」







※メガネイベント発生の件。(連載夢主ちゃんと露伴)


思わず愕然とした。何故ってそれは。今日も今日とて学校を終えぼくの家を訪ねた彼女がいつもと少し違っていたから。

身に纏うセーラー服はいつも通り。少々スカート丈が短いような気もするがそれは敢えて言わない。というか以前軽く言ったが「そうですかね?皆これぐらいですよぉ」と言いながらスカートをくいくいと引っ張る仕草が妙にぼくの心を揺さぶったのでそれ以上何も言えなくなったという方が正しい。

髪型もまあいつも通りと言えばいつも通りである。強いて言えば片耳に髪の毛をかけてピンで固定しているというのがいつもとの違いといった所か。いつもなら絹のような髪の毛で隠れてしまっている耳が見えただけで少しばかり卑猥な気持ちになるのは何故だろう。ほんのりと桃色に彩られた小さな耳を見ているだけで何だかムラムラする。遂にぼくも耳だけで欲情する領域まで達したという訳か。相当なレベルに達していると思う。何のって、それはほら、あれだ、あれ。言わせるなよ。

じゃあ何がいつもと違うのか。大きなくりくりとした丸い目と視線が合うがそれはレンズ越しにであった。レンズ越し。そう、これがいつもの彼女との最大の相違である。思わず視線を逸らせなくなってじいと見つめれば少しだけ恥ずかしそうにはにかまれた。

「やっぱり、変ですか?メガネかけてるのって」

そ ん な 訳 が な い 。

めがね。メガネ。眼鏡。思わず頭を抱えた。おかしい、ぼくにはメガネ属性は付いていない筈だがどうしてこんなに心がときめく。メガネなんてそんな物は所詮は視力補正の為の道具。決して萌えオプションでは無いのだ。

そりゃあどのギャルゲーにだってメガネキャラは付き物だがこれといってそそられた記憶も無い。何故ならぼくはメガネ属性では無いのだから。それにメガネキャラってのは大体がメガネを外すと急に可愛くなるっていうのが相場だろう?外すと可愛くなるんなら最初から付けなけりゃ良いんじゃないかと思うね、ぼくは。

でも目の前の彼女はどうだ。メガネをかけてなくても可愛い。メガネをかけても可愛い。何だそれは。ぼくは一体どうすれば良いんだ!

「あのね、本当は目が悪いんですけどコンタクト買うのを忘れてて。だからそれまでの間はメガネ生活なんです」

何だと。暫くはこのメガネイベントが続くというのか。耐えれるだろうか、いや耐えてみせる。何とか耐えてこの姿を写真に収めなければならない。ああくそ、しかし可愛い。ダークブラウンのセルフレームが彼女の少しばかり薄い色素の瞳と相まって、その姿で見つめられるだけでどうにかなってしまいそうだ。くっ…、耐えろ、岸辺露伴。せめてここで息絶えようともタダでは死なん。せめて写真を撮ってから、あわよくば動画を撮ってからぼくは死にたい。

「メガネかけてたらちょっとは賢く見えますか?」

ああ、とてもエロく見えて良いと思うぞ。わざとらしくメガネを上げて「どうですか?」なんてぼくを覗き込んでくる様はいつもよりもずっと挑発的でいて厭らしく見える。そんなにぼくを挑発してどうしたいんだ。まだ辛うじて健全な付き合いだと言うのに。それともそんなにぼくと先へ進みたいのか?そんなにぼくと大人な関係になりたいのか?まさかこれが噂の処女ビッチとかいう奴なのか?あああ、けしからん。実にけしからん。何なら仕置きの一つでも必要なんじゃあ無いのか。その小さい口の中に膨張しきったぼく自身を半ば無理矢理埋め込んでやりたい。苦しそうに眉間に皺を寄せながらも頑張って奉仕する彼女の顔面目掛けて全ての精を吐き出してしまいたい。メガネからどろりと垂れる様はきっととびきり厭らしいだろうな。考えただけでもムラムラする。呼吸も荒くなる。やばい、少しだけ前屈みにならないときつい。



つう。何かが垂れた。



「わああ!露伴先生!鼻血垂れてます!」
「…ん、ああ本当だな。いや、でもこれで良いんだ。そうじゃなきゃ一か所だけに血液が集まって大変な事になるからな」
「えっと、えっと、とりあえず上向かなきゃ駄目ですっ」

そう言った彼女に無理矢理体制を変えられ仰向けにされた。ふかふかと後頭部に感じるこの感触は、ふ、太ももじゃあないのか。

「露伴せんせぇ、大丈夫ですか?」

膝枕状態で覗き込まれて、至近距離にあの可愛いくて挑発的な(当社比)顔があって、心配そうに優しく頭を撫でられて。気付けばぼくはそのまま意識を手放していた。


「わあああんっ、露伴先生が起きないよお…っ!先生死んじゃやだあ…っ」










※どう転んでもただのバカップルな件。(連載夢主ちゃんと露伴)


「君さぁ、苦手な教科とか無いのか?」

何となく興味本位で聞けば「ありますよ」と即答されてしまった。それと同時に興味が湧く。一通りの事は出来る彼女が苦手としている事とは何だろうか。やはりここは彼氏として把握しておかなければなるまい。

「…美術がね、苦手なんです」
「美術?」

寄りによってぼくが最も得意とする分野じゃないか。まあそうはいっても学校で習う美術なんて所詮は頭でっかちな教科書に載っている芸術家についての薀蓄(うんちく)を暗記しときゃどうにでもなるような其れだろう。あんな紙切れに書いてある言葉だけで芸術の何が理解出来ると言うんだ。やはり先人達が残していった作品に直に触れてこその芸術なのだ。紙切れを見るだけよりよっぽど何処かの美術館にでも赴いた方が授業になると思うがな。


「あの私、絵心ないみたいなんですよね」

もじもじと制服の裾を弄りながら言う彼女を見てははあ、と納得する。彼女が苦手なのはいわゆる実技の方らしい。高校で習う物だから恐らくは簡単なデッサンとか油絵とかあの辺りだろう。

「じゃあ、試しに何か絵描いてくれよ」
「えっ、や、やですよぉ…。絵心無いって言ったばっかりじゃないですか」
「ンン〜?別に良いだろ?それに君ってば何でも器用にこなすんだし、絵心が無いってのは自分が勝手に思ってるだけで案外そんな事無いかもしれないぜ?」
「そうなのかなあ…」
「ほら、特別にぼくが見てやるって言ってるんだから適当に好きな物描いてくれよ」
「………」

適当に千切ったメモ用紙と鉛筆を渡せば何処か腑に落ちない表情ながらも彼女は鉛筆を握り締める。まあどうせ女子高生が描くような落書きだから猫とか犬とかあの辺だろう。デフォルメされた其れらの隣に「ニャー」とか「ワン」とか書いて誤魔化す様な奴。他の人間がそんな落書きをぼくに見せよう物なら百ほどの言葉で罵ってやるが彼女ならそれすら可愛いのである。何と言葉を掛けてやろうか。「案外上手いじゃないか」なんて褒めてやれば素直な彼女は少し照れたように笑うだろう。

そして「でもこうした方が上手く描けると思うぜ」なんて彼女の手を握って後ろから抱き締めるような体制でアドバイスしてやるのも良いんじゃないだろうか。髪の毛の匂いを嗅ぎながら首筋に顔を埋めて舐め上げれば「あ、露伴せんせ、だめです…っ」なんて柔らかくぼくを拒むかもしれない。そうしたら「何が駄目なんだよ。このぼくが直々に絵を教えてやってるんだからちゃんと集中しなよなァ?」って意地悪く耳元で囁けばそれだけで身体を震わせるに違いない。「露伴せんせぇ、意地悪しないで下さい…っ。からだ、反応して描けないよぉ…」全く、何を厭らしい事を考えてるんだよ君は。そんなに身体を反応させて一体こっちの具合はどうなってるのか確かめる必要があるよなァ?どれ、ほらスカートは自分で捲ってなよな。

なーんて、なーんて!


「露伴先生、描けましたぁ」

良いタイミングで絵が仕上がったようだ。どれどれ、と意気揚々で紙切れを手に取って見ればそこに描かれていた物は。

………?………かかし?あの、田んぼとかにある鳥なんかを追い払うような、あれだろうか。そうか、猫や犬を描くだろうなんてぼくは何て短絡的だったんだろうか。まさか、かかしを描くとは。

「ろ、露伴先生が好きな物描いて良いって言ったから」

そうか、この子はかかしが好きだったのか。例えばこれから記念日や誕生日なんかを迎えた時にはそれなりのプレゼントを、と思っていたがもしやかかしをプレゼントした方が喜ぶのだろうか。くそ、ぼくは彼女の事を知っているようで何も知らなかった。かかしが好きだなんて、くそ。しかしこのかかし、よく見ればとてつもない強風に晒されているのだろうか。髪の毛の様な所が左から右へと流されている。そうか、そういうリアリティを求めるのはとても良い。かかしは野外にいるから強風に晒されていても可笑しくは無いよな。

「好きな物って言われて、露伴先生が思い浮かんだから露伴先生描いたんですけど」
「ああ、上手く描けてると思うぜ。このかかし…ん?」

……ぼく?この強風に晒されたようなかかしがぼく?…いや、でも待てよ。「好きな物を」と言われて思い浮かんだのがぼくだと?その言葉を聞いた瞬間にこの絵がとても愛おしくなるのは何故だろうか。

「やっぱり絵心無いですよね…私」

しゅん、と項垂れる彼女も彼女で抱き締めたいくらいに可愛いがその可愛い彼女が「好きな物を」と言われて書いたのがぼくだと。この岸辺露伴だと!文では無くて絵だが最早これはラブレターと同等なのではなかろうか。これは彼女が愛情込めてぼくを描いた、愛を綴ったラブレターなのだ。

「とても上手いと思うぜ、何なら額縁に入れて飾りたいくらいだ」
「えっ、ほ、本当ですか?」
「ぼくが嘘をつく訳が無いだろ」
「私、絵を褒められたの生まれて初めてです…っ」

嬉しそうに彼女が胸元へと抱き付く。ああ、ぼくも今君を抱き締めようかと思っていた所だ。なだらかな額に唇を落としてから明日は額縁を見に行こうとぼくは心に決めたのであった。









※仗助とおやすみ。


「おいこら仗助」
「………」
「おいってば!」
「……んぁ」
「寝るんなら自分の家帰って寝てよね」
「…あー…。家まで運んでくんねー…?」
「ふざけんな。仗助みたいなでかい男運べる訳ないだろうが」
「…なんで。…家隣じゃん…」
「だから〜。家隣なんだし帰って寝てよ〜」
「う〜ん…」
「あっ、おいこら!」
「………」
「そこ私のベッドなんですけど!ねえ〜、ぬいぐるみ枕にするのやめてくんない?」
「…ベッド、いい匂いする」
「仗助きもい。ねえどいてよ。私寝れないじゃん」
「俺の隣で寝れば良いだろォ〜」
「やだよ。大体180センチの男と一緒に寝れる訳無いじゃん。狭いわ」
「…俺、185センチなんすけど」
「は?嘘つくなよ。サバ読むの恰好悪いぞ」
「嘘じゃねぇよ〜」
「億泰なんか178センチだってちゃんと自分で言ってんだよ?見習え」
「……何で俺といんのに他の男の名前出すかなァ…」
「え?」
「何でも無い」
「も〜、とりあえず床で寝よっと」
「……ん。俺退くからベッド使えよ」
「お、何だよ。やっと帰る気になったか。よしよし」
「……」
「は〜、やっぱりベッドで寝るのが一番…。…おい、ちょっと待て」
「え?」
「え?じゃなくてどうしてまたベッドに乗って来るの?せまい」
「俺もベッドで寝たいんだよなァ〜」
「いやだから、家帰ろうよ」
「一緒に寝たいんだけど」
「は、」
「なぁ。駄目?」
「いや、いやいやいや…。仗助くん純愛はどうされたのかしら?」
「純愛だろォ。好きな子にしかこんな事言わねーよ」
「……そうですか」
「おー」
「…ねえ、ちょっと待って。何でそんな下の位置にいるの?足はみ出てんじゃん」
「ん〜」
「抱き付かないでよ、暑苦しい」
「…風呂上りだから」
「うん」
「やっぱノーブラかァ」
「ざけんなよ!おっぱいに顔埋める為の位置調整かよ!」
「あ、背中向けやがって…」
「当たり前でしょ。何が純愛だ。ていうか本当に暑い。抱き付くのやめてよ」
「嫌だ。解いたら俺の隣からいなくなる気満々なんだろ」
「……仗助、本当にどかしてよ」
「嫌だ」
「……誰かさんがくっついてるせいで暑いから冷房の温度下げたいんですけど。じゃないとくっつくの禁止にします」
「…ん」
「はいどーも。はぁ〜、これでまた余計な電力使う羽目になったよ。エコじゃないな〜」
「髪の毛いー匂いする」
「人の話聞けよ」
「なァ。このままの体制で寝てもいー?」
「嫌だって言ってもするんでしょ。勝手にすれば」
「う〜ん、俺今日は良い夢見れそうな気がする」
「そうですか。良かったですね」
「ん、明日起きたら朝イチで見た夢報告してやるよ」
「もー、わかったわかった。…じゃあね、おやすみ」
「おー、おやすみ」








※露伴とおやすみ。


「夏だからホラー映画を見て涼もうって安易な考えだったのが良くなかった」
「そうだな。君のセレクトのお蔭でB級、いやC級映画を見る羽目になったんだからな」
「そういう訳で今日はお泊りしていきますね」
「帰れよ」
「嫌だ!もうこんな時間だよ!こんな暗い夜道絶対に何かが出るね!」
「何かって何だよ」
「え?いや、それはだから…。見えない何かと言うか…」
「ああ、幽霊か」
「ぎゃあああ!言うなよ!敢えて言わなかったのに!」
「此処だけの話だけどな」
「はい」
「幽霊って存在するんだよなァ…」
「え、え?ちょっと何言って…。やめろ。そんな非科学的な話は」
「見たんだよ」
「え?」
「首から血を流した犬を連れた若い女の子の幽霊を」
「ぎゃあああああ!ど、何処で!」
「オーソン近くだな」
「よく行くコンビニじゃん!もうやだあああ。もう今日絶対泊まるから!」
「あっそ。じゃあぼくはもう寝るから君はあの空いてる部屋使いなよ」
「え?」
「え?」
「一緒に寝ないの露伴くん」
「は?」
「一緒に寝ようよ!私一人で寝てて金縛りにあったらどうすんの?」
「いや…。ちょっと待て。それは色々とまずいだろ」
「そうだよ、金縛りはまずいんだよ。だから一緒に寝よ?ね?」
「いや、そうじゃない。そうじゃなくて…」
「大丈夫だよ、私いびきも歯軋りもしないから」
「………」
「……おお、ふかふかのベッド!」
「…なあ、本当に一緒に寝るのか」
「くどいぞ、露伴くん」
「……あっそ」
「あれ、何でそっち向いちゃうの」
「………」
「露伴くん?」
「………」
「露伴くんてば〜。寝たの?」
「………」
「き〜し〜べ〜ろ〜は〜」
「うるさいな!何なんだよ!さっさと寝なよな!」
「ねえ〜、露伴くん明日何するの?」
「ハァ〜?何でだよ」
「何ででも〜」
「…午前中に読み切りの原稿を書くつもりだが」
「それからは?」
「さァな。特に決めてない」
「じゃあ仕事終わったら一緒にランチ行こうよ〜」
「何でだよ…。ていうかいつになったら帰るんだよ君は…」
「ねえ、行こうよ〜。私とデートしようよ〜」
「……。いい加減寝なよ君」
「…らんち…」
「そうやっていつまでも起きてるから昼過ぎまで寝てる羽目になるんだろ。…自分から誘った癖に明日のランチ寝坊して行けないなんて承知しないからな」
「え!それって」
「フン」
「ふふふ〜。あのね、露伴くんのそーいう所好き」
「……そーかよ」
「明日頑張って早起きしよっと。露伴くん、おやすみ〜」
「ああ…、おやすみ」
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