※ジョルノとずっといっしょ。

「あれ?」
「どうかしましたか?」
「…今日の任務ってボスと一緒だったっけ」
「はい、そうですよ」
「……そうだっけ」
「はい。…ぼくと一緒の任務じゃ不満ですか?」
「え。ん〜〜、そういう訳じゃないんだけど」
「けど?」
「私、ボス以外の人と一緒に任務をこなした記憶が無いよ」
「それが何か問題でもありましたか」
「え、え〜〜。問題は無いけどさあ」
「じゃあ、良いじゃないですか」
「んん〜〜。でもね、ボス、私思うの」
「あ、その上目遣い、苛めたくなるくらいに可愛いですよ」
「え?」
「いえ、何でも無いです。続けて下さい」
「色んな人と任務をこなして、仲良くなった方がパッショーネの為にも良いんじゃないかって」
「ぼくとしてはぼくとだけ仲良くなってくれればそれで良いんですけどね」
「え?」
「いえ、何でも」
「あ、あ〜!思い出した!そうだ!今日の任務だって元々ボスと一緒じゃなかった!」
「そうでしたっけ」
「そうだよ!ミスタと一緒だった筈だ!」
「ああ、ミスタは急病で来られないそうです」
「え」
「なので、代わりにぼくが」
「急病?ミスタが?」
「何でもお腹が痛いとかで」
「え〜、そうなんだ…。せっかくミスタともっと仲良くなれるチャンスだと思ったのに」
「…一つ聞きますけど」
「うん」
「貴女はミスタともっと仲を深めたかったと?」
「?うん」
「(任務から帰ったら床に零した牛乳をミスタの服で拭いてやろう)」
「?」
「きっと、雑巾のような匂いがするに違いない」
「ボス?」
「あ、いえ、何でもありません」
「でもさ、ミスタの代理でボスが来てくれるなんてちょっと申し訳無いよ」
「構いません。ぼくがどうしようもなく貴方に会いたくなっただけですから…」





※露伴とおはよう


「さむい、さむい、さむい」
「………」
「朝は冷えるよぉ〜」
「………」
「ん?」
「…何処に行くんだ」
「あれ、いつの間に起きてたの露伴くん」
「君が「寒い寒い」うるさいせいで目が覚めた」
「ブランケットが落ちてるんだよ、取りに行きたい」
「フーン」
「手を離してくれないと取りに行けないんですけど」
「行くなよ」
「え」
「君がいなくなると寒い」
「湯たんぽ代わりですか」
「君もたまには役に立つんだな」
「露伴くんは寒いと思うなら全裸で寝るのやめようよ」
「うるさい」
「一緒に眠る私の気持ちになった事ある?ないよね?」
「うるさいって言ってるだろ」
「せめて下着ははこう?ねっ?」
「あの締め付けが嫌だ」
「くっ…何てわがままなんだ…」
「おい、離れるなって言ってるだろ」
「んん…。露伴くんちかい」
「ぼくは寒いのが嫌いなんだ。湯たんぽがいないのは困る」
「だから全裸で寝るのをやめればいいんじゃないかな」
「何だって君はこんなに体温が高いんだ」
「(無視された)」
「……眠い。もう少し寝る」
「はーい」
「ぼくが起きるまで何処にも行くなよな」
「…寝起きの露伴くんは甘えたさんなのだ」
「ふざけるなよ。湯たんぽの代わりだって言っただろ」
「はーい」
「………」
「……露伴くん」
「…何だよ、湯たんぽは喋るなよ」
「私もぎゅってしたい」
「…勝手にすれば良いだろ」
「ぎゅう」
「………ッ」
「おや…何かが私の太ももに当たっ…ギャー!」








※ジョルノとおはよう


「……んむ」
「おや、お目覚めですか」
「……あのさ」
「はい」
「ボスのパジャマって眠さが一気に吹き飛ぶくらいに眩しいよね」
「そんな…朝から褒められると照れます」
「そんなプリンの総柄パジャマなんて一体全体何処に売ってるの」
「気になりますか?」
「そりゃあまあ」
「それじゃあ今日は一緒に買い物に出かけましょうか」
「え?」
「貴女の分のプリンパジャマを買いに行くんです」
「え?」
「今日からはお揃いのパジャマですね」
「い、いいよ、いらない」
「そう遠慮せずに」
「いいって…、いや、マジで…」
「そうだ、このナイトキャップもお揃いにしましょう」
「だから何処でそんなプリン柄の帽子を見つけてくるの…」
「そんな急がずとも案内して差し上げますから」
「いや、でも私、そういうの似合わないと思」
「似合います」
「………」
「さあ、早く起きて」
「う〜ん」
「相変わらず朝が弱いですね」
「ボスだって起きたばっかりでしょ?パジャマ着てるし」
「僕は1時間ほど前から起きてます」
「え?何してたの?」
「天使のようなその愛らしい寝顔を眺めていました」
「………」
「口を半開きにして涎を垂らす様もとても可愛かったですよ」
「………」
「さあ、いい加減に準備しましょうか」
「今日はボスも仕事お休みなんだよね」
「ええ」
「じゃあ今日はジョルノって呼んでも良い日?」
「…もちろん」
「じゃあ今更だけど。おはよう、ジョルノ」
「おはようございます。…ああ、何て朝から愛らしいんでしょう」
「ジョルノ〜、苦しい。準備出来ないよ」
「もう少しだけ、抱き締めさせて下さい」
「んぐぅ…」








※猛特訓する件(連載夢主ちゃんと露伴)


土曜日のお昼。露伴先生のおうちを訪れていた私はパスタを作った。トマト缶を使ってシーフードミックスを入れた簡単な奴だ。おいしいですか?って聞いたら露伴先生は「ああ、美味いよ」と返してくれた。思わずえへへ、と笑えば目前の先生も柔らかく笑う。そんな顔をされたら恥ずかしくて直視出来ないよ。相変わらず格好良いんだもん、ずるい。誤魔化すように俯いてフォークにトマトが塗れた鮮やかな赤のパスタを巻き付ける。


ぐるぐる。

「?」

ぐるぐる。


違和感を感じて顔を上げれば露伴先生が舌をべえ、と出していた。そしてその舌には何とも器用に巻かれたパスタ。あ、と思った瞬間に露伴先生はもぐもぐと咀嚼をしてごくんと飲み込んでしまった。

「ろ、露伴先生、もっかい今のやって下さい!」
「ん、」

ぐるぐる。べえ。

相変わらず舌全体に綺麗にパスタが巻かれている。本当だったらお行儀が悪いって怒らなきゃ駄目なのかもしれないけど、あまりにも器用な行いに思わず見入ってしまった。どうやったらあんな事出来るんだろう?

くるくるとフォークに巻き付けたパスタを口に含んでもくもくと口内で弄ってみても、舌には全く巻き付いてくれない。何度試しても同じ。どうして、と眉を顰めれば露伴先生が可笑しそうに笑った。

「君には無理だと思うぜ」

そんな物言いをされては私だってむっとしてしまう。どうしてそんな事言い切れちゃうの?私だって練習したら出来るかもしれないですもん。







もくもく。もくもく。もくもく。
何も口内に含んでいない状態でひたすらイメージトレーニングをする。感覚としてはきっとさくらんぼのヘタを口内で結ぶ、っていうのに近いんだろう。まあそれも出来ないんだけど。うーん、と考え込めば後ろから抱き締めていた露伴先生が顔を覗き込む。

「おい、君が見たいっていうから借りてきたんだぜこの映画。全く見てないじゃないか」

あ、そうだった、と顔を上げれば露伴先生が呆れたように溜息を零した。テレビ画面では男女が何やら愛の言葉を囁き合っているけれど前後を見逃していた私にはさっぱり状況がわからない。

「まださっきの練習してるのか」

映画を一時停止させてから露伴先生は私を抱き上げて、対面になるように膝の上に座らせた。露伴先生の顔がゆっくりと近付いてくる。

「だって、」
「だから、君には無理だって言ってるだろ」

鼻の頭同士が触れ合って、露伴先生が喋る度に息が掛かって、それが何だかくすぐったい。そのまま露伴先生の手が頭の後ろに伸びて来て、ぐいと引き寄せられた。唇が重なったと思う瞬間に舌が割り込まれる。思わず奥へと引っ込めてしまった舌も露伴先生ので引き摺り出されて、あとは全部先生のペース。私も頑張ってみるけど、結局は露伴先生に翻弄されるだけ。

「ん、ふ…ぅ、あ、せんせ」

露伴先生がゆっくりと離れてにやりと口角を上げた。

「これぐらいで音を上げている君が、あんな風に出来る訳無いだろ?」

そういえばさくらんぼのヘタを結べる人ってキスが上手いんだっけ。じゃあ私が結べないのも、巻き付けられないのも全部合点がいく。だって、キス、上手く無いもん。いっつも露伴先生にされっ放しだもん。うん、と小さく頷けばもう一度露伴先生の顔が近付けられた。

「…どうしてもって言うなら、ぼくが特訓してやっても良いんだが」

そう言って唇に触れるだけのキスをされた。どうする?って意地悪く囁かれた私には頷く他以外の選択肢は最早無かったのである。

「露伴先生、特訓、してください」

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