「…無様だな」

露伴先生に心底呆れたように言われて返す言葉なんて無かった。代わりに唇を付き出して俯けば前髪から雫がぽたりと落ちて先生の家の玄関に痕を残す。

「迎えに行ってやるってぼくがせっかく連絡してやったのに…、全く君って奴は」
「…だって」

大丈夫だと思ったんですもん、なんて言葉は露伴先生がふかふかのタオルで頭を拭いてくれた衝動で喉の奥へと引っ込んでいってしまった。露伴先生のおうちのタオルいいにおいする。

天気予報の「夕立にご注意下さい」なんて忠告を無視して、露伴先生の優しい言葉を押し退けた結果がこれだ。私はまんまと凄まじい勢いの雨に打たれる羽目となってしまった。学校出る時はあんなに晴れてたのにな。ぼんやりしていたら露伴先生の綺麗な顔が目の前にあって唇を重ねられた。それから鼻先が触れ合う距離で先生が口を開く。息がかかってくすぐったい。

「唇まで冷えてるな。…ちょっと待ってろ」



そんな会話があったのが今から15分前の事。

「あったかい〜」

わざわざ露伴先生が風邪をひくといけないからってお風呂を用意してくれた。雨で冷えた身体には少しだけ熱めのお湯が心地良い。露伴先生ってばこんな大きいお風呂に一人で入ってるのかあ…、すごい。なんて考えていたら急に冷たい風が入り込んで身体がぶるりと震えた。あれ?扉ちゃんと閉めた気がしたんだけどな。

「…?」

振り返れば露伴先生が全裸で立っていた。

「わああ!ろ、露伴先生っ!何でいるんですか!」
「此処はぼくの家なんだからぼくがいて当然だろう」
「ち、違う!そういう事じゃ…!せ、せめて前隠して下さい…っ」

私の言葉が聞こえているのかいないのか。適当にシャワーを浴びてから露伴先生も浴槽へと浸かればその分溢れ行くお湯。ふう、と一息ついてから目元に掛かる前髪を掻き上げた露伴先生は格好良い。思わず見とれてしまった。…ていうか、何で一緒にお風呂入ってるんだろう?あれ…?ゆっくりと先生に背を向けてから逃げるように浴槽の隅へと寄れば腕を掴まれた。

「おいおい、こんなだだっ広い浴槽でそんな隅に行くなよ」
「い、いいです、私ここでいいです」
「ふーん…。…ところでなまえ。君、身体はもう洗ったのか?」
「え?あ、まだですけど…」

そう言った瞬間にそのまま腕を引っ張られて露伴先生の元へと引き寄せられる。見上げればにやり、なんて効果音が付きそうなくらいに口角を上げた先生。

「じゃあぼくが洗ってやるよ」



そんな会話があったのが今から5分前の事。露伴先生の前に座らされた私の身体をボディソープ塗れの手が這い回っている。恥ずかしくて手で胸を隠したら「それじゃあ洗えないだろ」って一蹴されてしまった。裸は何度も見られてるけどこんな明るい所で見られるのはやっぱり恥ずかしい。

首を横に振ってから顔を上げれば目の前の鏡越しに露伴先生と目が合った。目の芯が少しだけ意地悪く光を射出して、それなのに耳元で優しく「なまえ」なんて呼ぶのはずるい。そんな風にされたら逆らえる訳なんて無いし、さっきだって「自分で洗えますから」と必死に抵抗する私をその顔で丸め込んでしまった。結局、最初の抵抗虚しくゆっくりと胸元の手を退ける事となってしまう。

「…っ、んぅ…」

ふにゅふにゅと自分の胸が露伴先生の手によって色んな形に変わっていく。掌で包み込まれたり、下から持ち上げられるようにされたり、徐々に変な気分になってくる。これ、本当に身体洗ってるだけ?

「ん、ふ…ぅ。露伴せんせぇ…」

露伴先生の指先が胸の先端に触れる度に身体が反応してしまう。だってそんな風に触られたら我慢なんて出来る訳が無い。ぬるぬるしてて、いつもと違う…っ。

「だめ…、やです…っ。やっぱり、自分で洗うから、だから…ぁ…っ」
「ンン〜?遠慮するなよ。ぼくがちゃんと洗ってやるからさァ」
「ん、やぁ…っ。胸、両方一緒に、触るのいやです…っ」
「胸は嫌なのか?…ああ、じゃあこっちを洗ってやるよ」

切ない刺激に擦り合せていた太ももを撫でられてからそっと開かれて、そのまま露伴先生の指が自分の一番恥ずかしい所へと触れる。ぬるりとした感覚に自分の其処がどうなっているかを充分過ぎる程わかってしまって羞恥から顔を背けた。二、三回入口を撫でられてからつぷりと指が中に入ってきて思わず息を呑む。

「あ…ぅ。ろはん、せんせぇ…。入れちゃだめ…っ」
「は…っ、凄いぞ、なまえの中。ほら、自分でもわかるだろ?」
「ゆび、動かさないでくらさい…っ。ひ、あ…ぅっ」

自分の声にならない声とにちにちとした水音が浴室内に反響する。気付いたら自分の中に先生の指が二本入ってて、空いた手は相変わらず胸を触られてて、足ががくがくと震える。

「ろはん、せんせぇ…っ」
「そんな物欲しそうな声出すなよなまえ」

ゆっくりと指を引き抜くと露伴先生は私を自分の膝の上に座らせた。向かい合わせになるこの体制はいつもしているけれどそれは服を着ている時の話だ。強請る様に自分から唇を重ねればぬるりと舌を入れられて頭の芯が蕩けそうになる。それから唇を離されてぼうっとしていたらさっきまで指を入れられていた所に露伴先生のものを押当てられた。

「ん、ぅ…っ」
「今すぐ入れたい所ではあるが何せ此処には避妊具が無いからな…」

言いながら露伴先生がゆっくりと腰を動かせば自分の其処と先生のが擦り合う。落ちない様に必死に掴まって、あとはされるがままで。いつの間にか浴室にはまた自分の声と水音だけが響く様になっていた。

「あっ、あっ。せんせぇ…っ。は…ぅ…っ」

入れてないのに気持ち良くって思わず自分の腰もゆるゆると動いてしまう。動く度にぐちゅぐちゅと水音を響かせて、時折先生とキスして、舌を絡めて。何だか…、頭がぼうっとする…っ。露伴先生をもっともっと感じたくて密着するように身体の角度を変えた瞬間、身体にいきなり圧迫感が訪れた。

「っ、あ、やぁ…っ!」

恥ずかしいぐらいに濡れてしまっている自分の其処は体制を少し変えただけで、あまりにも簡単に先生自身を受け入れてしまった。いきなりの刺激に身体がついていけない。

「随分とすんなり入ったなァ?…まぁ、これだけ濡れてたら当然か」
「あ、ぅ。ろはん、せんせっ」

自分の一番奥に露伴先生のものがぐりぐりと当たる。さっきのも気持ち良いけど、やっぱり入れられると全然違う。それに、何だかいつもより先生のが熱い気がする。ゴム、付けてないから?わかんないけど、熱くて、先生のがびくびくって中で動いてて、すごく気持ち良い。

「ん、このままだと流石にやばいからな…」

はあ、と息を大きく吐いてから先生が私の腰を掴んで動かせば自分の中から先生のが少しだけ引き抜かれる。こんなに気持ち良いのに抜いちゃうの?露伴先生の事を感じられるのに?

「露伴せんせぇ…」
「なまえ?」

首を横に振って抜かないでと懇願する。だってせっかく満たされてたのに抜いちゃうなんて嫌なんだもん。もっともっとして欲しい。

「抜いちゃ、やです…っ」
「なまえ、本当にこれ以上は」
「やだぁ…。このまま、してください…。お願い、ろはんせんせぇ…っ」
「…ッ、ああ、もう知らないからな…ッ」

そのまま力強く腰を動かされてもう一度自分の奥に先生のが当たる。これ、凄く気持ち良い…っ。最初はあんなに痛かった行為が今ではこんなに蕩けそうな行為になっている。露伴先生のが、熱くて、硬くて、私の中にいっぱいいる。もっと私の事、露伴先生でいっぱいにして欲しくて堪らない。

「随分と厭らしい顔だなァ、なまえ。そんなに気持ち良いのか?」
「あっ、あっ!きもち、い…っ。ろはんせんせ、きもち、いよぉ…っ」
「は、あ…ッ。君ってば一体いつからそんなに淫乱になったんだよ?」

下から突き上げられるように一番奥を刺激されて色んな物が駆け上る。いつもと同じ事をしてるのにいつもよりもずっと気持ち良いのはどうして?ぐちゅぐちゅと響く水音と反響する自分の声と時折聞こえる露伴先生の荒い息。色んな物が相まってギリギリまで追い詰められる。びくびくってするのが来ちゃいそうで、でももっと繋がっていたい。まだ終わりにしたくないよ。

固く閉じていた目を薄らと開けると露伴先生と目が合った。いつもの挑発的な表情で、それでいて欲に濡れた射抜くような視線を感じてそれだけで達してしまいそうになっていたのに。先生の形の綺麗な唇がにやりと歪んだ。

「ほら、イきそうなんだろ?良いぜ、イけよ…ッ」

一際大きな刺激を受けてバランスを保っていた糸がぷつりと切れた。

「あ、あぁっ。らめ、れす…っ!あ、あ、あっ!〜〜〜っ!」

自分が受け止めるにはあまりにも大きな快感だった。一番大きな波を乗り越えれば身体を支える事も困難で先生の身体へと凭れ掛かる。朦朧とした意識の中で未だ脈打つ先生自身を感じた。欲を吐き出そうとする露伴先生からの刺激も余韻の残る身体では過剰に反応してしまう。ぎゅうと先生に抱き付いたままで耳元で名前を呼び続ければ露伴先生が苦し気に掠れた声で自分の名前を口にする。その瞬間に中から引き抜かれて気付いた時には自分のお腹の上にどろりと暖かい物を感じた。あったかくて…きもちいい…。そのまま私はゆっくりと意識を手放した。





「はぁぁ、そのシャツから薄く透ける桜色の乳首が、乳首が…!スケッチせざるを得ないッ」

声が聞こえた気がした。ドシュドシュとペンを走らせる音も聞こえるような。うっすらと目を開ければ、ぼんやりとした視界の中に居たのは間違い無く露伴先生だった。ベッド脇に座ってスケッチブックも持っている。

「…んぅ、せんせ…?」
「て、天使の目覚め…ッ」

上体をゆっくりと起こして右手でごしごしと目を擦る。しぱしぱと瞬きをしてから見上げれば露伴先生が両手で顔を覆って小刻みに震えていた。

「くそ…ッ、可愛すぎるだろうがその仕草は…ッ」
「露伴先生?」
「あ、いや。ところで身体は大丈夫か?」

憂わしげな表情で覗き込まれてついさっきまでの出来事を思い出す。そうだ、お風呂場で露伴先生とそーいう事をしたんだった。挙句の果てにそれで意識を手放してしまって。露伴先生、わざわざシャツまで着せてくれてベッドまで運んで来てくれたんだ。ブラとパンツをはいていないのが何だかすーすーして落ち着かないけれど。まだ乾いて無いのかな。

「へーき、です」
「…ん、なら髪の毛を乾かしてやるからこっちへ来なよ」

先生の言われるがままに椅子に座らされる。タオルドライしてからブラシでとかされて、それから高そうなオイルを塗られた。カチ、とスイッチを入れる音がして温風が髪の毛に向けられる。まさかこの歳になって美容師さん以外に髪を乾かされる事になるとは思わなかった。でも、露伴先生に髪の毛触られるの気持ち良くて好きかも。

「ハァ〜…、清純そうで淫乱って最強だよな。ハァ〜…」

鏡を見れば露伴先生が何かぶつぶつ言っているけれどドライヤーのせいで何て言っているかよく聞こえない。何だろう?って思ってじいって見てたら顔を近付けられて「熱くないか?」って聞かれた。こういう気遣いをしてくれる露伴先生はやっぱり優しくて大人だなって思う。

温風から冷風に切り替えられて気付いた時には髪はすっかり乾いていた。凄い、自分で乾かす時よりもさらさらだ!しかも何だか良い匂いがする。髪の毛を一束取ってくんくんと匂いを嗅ぐ。髪の毛からも、身体からも露伴先生と一緒の匂いがする!

「何一人で笑ってるんだよ」
「だって、露伴先生と一緒の匂いするのが嬉しいんですもん」

椅子に座ったままで見上げてそう言えばひく、と露伴先生が顔を引き攣らせた。

「別に、そんな事大した事じゃないだろ…ッ」
「…露伴先生にぎゅってされてるみたいだから、嬉しいなって」

言った後に急に恥ずかしくなって照れ隠しでえへへと笑えば露伴先生はその場で崩れ込んで暫く動かなくなってしまった。

「…死んでも、良い…ッ」

う〜ん、早くブラとパンツ乾かないかなあ。

20150728


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