すうすうと小さな規則正しい寝息が聞こえる。そっと覗き込めば甘えたような表情を作るあの大きくて丸い瞳は閉じられているし、幼さの残る声を漏らすあの紅い唇は何とも無防備な状態にあった。

そんななまえを見て思わず喉を鳴らす。何という愛らしさであろうか。はあ、と感嘆の溜息を吐いた所で携帯のカメラを起動させた。ソファで眠る彼女にピントを合わせてから画面を押せば「カシャ」と機械音がリビングに響く。

「…んぅ」

音に反応して身動ぎしたなまえを見てしまった、と眉を顰めたが不安気にもう一度顔を覗き込めば彼女は先程と同じようにすうすうと眠っていた。ほっと胸を撫で下ろす。考えてみればなまえの寝顔の写真というのは中々撮る機会が無かった。今このチャンスを生かして思う存分彼女の愛らしい顔を記録媒体に残しておきたい。こんな携帯電話なんかじゃなくてどうせなら一眼レフで撮っておこうか。

「…ろはん、せんせ」
「!」

いきなり名前を呼ばれてびくりと肩を震わせた所ですぐにそれが彼女の寝言だったのだと気付く。と、同時に極限まで緩む自分の頬。可愛い、可愛すぎる。寝言で自分の名前を呼ぶなんて卑怯じゃないか、畜生。

思わずその場で崩れ込んでから、はあはあと瀕死の状態でソファまで這いつくばってなまえの顔をまじまじと見つめる。可愛い。何度だって言ってやる。可愛い。彼女は一体どんな夢を見ているのだろうか。ぼくの名前を呼んだって事はぼくの夢でも見ているのか?

「……何だか妬けるな」

わかってはいたがぼくは相当なまえに参ってしまっている。それは彼女の夢の中の自分の存在にすら嫉妬してしまうほどに。

やりきれない思いを彼女にぶつけるように柔らかな頬を人差し指で突けば「ふにゃ」と声を漏らされて再びぼくは床に崩れ込む羽目となった。ぐうの音も出ない程に可愛いというのはこういう事を言うらしい。

ハァ…ぼくをこんなにして一体どうしたいんだよ君は…。アンニュイな雰囲気を醸し出してみた所で結局ぼくは欲に踊らされているだけなのだ。この寝顔の愛らしさに加えて、スカートから伸びる太ももにも自然と目が釘付けになってしまうのは男としては仕方の無い事なのである。

そっとなまえのさらけ出された太ももに手を伸ばす。白くてきめの細やかな肌は女特有の物だ。ゆっくりと内ももを撫でるように、その感触を焼き付けるように指先を滑らせる。

はあ、と今日何度目かわからない溜息が出た。挟まれたい。この太ももに挟まれて死んでしまいたい。この太ももによって窒息死させられるならそれは安楽死と言っても過言では無い。ああ、そうだ。どうせなら今度なまえと行為に及ぶ時は彼女に顔の上に跨って貰おう。顔面騎乗、うん、悪くない。「こんなのいやぁ…」とか何とか言いながら結局は快楽に負けてぼくの上で腰を振るなまえの姿が目に浮かぶ。羞恥と快感に塗れたなまえの太ももと秘所に圧迫されるなんてそれはまるでご褒美じゃないか。

目を瞑って悶々と考えれば「ムフ」と笑いが零れた。おっと、声を出したらなまえが起きてしまう。

案の定、なまえはむにゃむにゃと言いながら身体をもぞもぞと動かし始めた。起きるのだろうか。そう思って見つめていたが案外彼女の眠りは深いようですぐにまたすうすうと寝息をたてはじめた。

で、ここで問題が発生する。

なまえが身動ぎしてくれたおかげでスカートが捲れ上がってしまった。即ち、ぼくの目前にはなまえの何とも可憐な下着がちらりと姿を見せているのである。思わず前屈みになって右手をソファへとめり込ませればぎちぎちとカバーが音を立てた。

下着が、このサックスブルーの下着がぼくを試している…ッ!

何とか自分を抑えようにもふーふーと鼻息は荒いままで落ち着く気配はまるで無い。冗談じゃあない…ッ、こんな下着如きで彼女の寝込みを襲うような最低な男に成り下がって堪るか…ッ!大体見えているのは下着だ。下着なのだ。中学生じゃあるまいし、パンツが見えたぐらいで何をそんな…。所詮下着と言ってもただの布。ただの布っきれだぞ。…ふう、大分落ち着いてきたな。

すっと顔を上げて飛び込んで来たのはやはりあのサックスブルーの下着で。

「……」

そしてぼくは屈してしまったのである。下着に、あの下着に負けたのだ。

気付けば左手はなまえの太ももを撫で、右手は自分のベルトへと伸ばされた。そのまま片手で器用にベルトを外してから身に纏っている衣服ごと下着も降ろす。勃ち上がった自身が空気に触れてぶるりと身体が震えた。左手に感じる柔らかな感触と相反して右手に感じる硬い感触。静かなリビング。なまえの寝息に自分の荒い呼吸が被さる。

別にぼくがなまえを見て勝手に昂った所で自分で処理をしてしまえば良いのだ。そうすれば彼女がどうこうなる訳でも無いし、自分は欲を吐き出せるしでなまえの寝込みを襲うよりよっぽど良いじゃないか。言い訳染みた言葉ばかりが脳内に浮かんでは欲で掻き消されていく。

太ももを撫でて、なまえの寝顔を見つめて、そして右手を上下に扱けば次第に水音も部屋に響き始める。ちらりと目線を落とせば先端から透明な液体がとろりと零れかかっていた。親指でそれを掬って先端に擦り付ければ思わず声が出そうになるくらい半身が痺れる。

なまえ、なまえ、なまえ…ッ!

この時点でぼくの脳内は大分蕩けてしまっていた。正常な判断など最早不可能に近い。

なまえと交際関係にある以上はセックスだって勿論経験がある。濡れた唇で愛撫されたり、或いはその柔らかな胸で挟まれたり、そしてこの下着の奥にあるそれこそ蕾のような秘所でだって彼女を数えきれないくらいに感じてきたのだ。その時の興奮や快楽といったら的確な言葉が見つからないくらいに至高であったし、それを知ってしまったら自慰行為など実に無為な物だと思っていた、筈だったのに。

それなのに今はどうだ。右手で自分自身を扱いているだけ。なまえも下着が少し見えるくらいで決して性を意識した格好では無いというのにどうしてこんなにも興奮しているんだ。その内に太ももを触るだけじゃ足りなくなったぼくはそっとその白い肌に吸い付いた。ふわりと鼻孔をくすぐるのは紛れもなくなまえの香りで、それだけでぼくの質量はぐんと増してしまう。

「…っあ、なまえ…」

頬擦りするように太ももを愛おしんで、そして右手は猿のようにひたすら自分を慰める。何とも滑稽な恰好だ。

「はー…、はー…」

なまえを起こさないように舌先でそろそろと雪のような肌を確かめる。今すぐしゃぶり付いたり甘噛みしてしまいたい衝動に駆られるが、それでは彼女が起きてしまう。尖らせた舌先でつつー、となぞれば時折身体をぴくんと反応させたり「んっ」なんて小さく声を漏らすなまえに益々興奮した。身体中の血液が全て其処に流れていっているんじゃないかと思うくらいに自身が熱い。ああ、ずっとこのままでいたいくらいに気持ちが良い。

それでも限界という物は来るもので膨れ上がっていた精はいつ吐き出されてもおかしくない状態にあった。

「………」

ゆっくりと動かしていた右手を止める。ああ、どうしようか。何処に自分の欲をぶちまけてやろうか。どうやって吐き出してやろうか。ぎらぎらと光っているであろう視線を改めてなまえに向ける。愛くるしい顔に、制服の上からでもわかる二つの膨らみ、桜貝のような爪が主張するその指先、少女でありながら女でもある秘裂の柔肉。実に悩ましい。

それでもやはり今日は此処に、この柔い太ももに全てをぶつけてしまいたい。

ごくりと喉を鳴らしてからそっとソファで眠るなまえの上に覆い被さる。頬にそっとキスをしてから自身をあの真っ白い太ももに擦り付ければ、思わず小さく息が零れた。

先程自分が散々舐め回したお蔭で滑りが良くなっている肌に自身を擦り付けて、それでも右手で根本を扱いて。抑えていた息がどんどんと上がる。声だってあんなに我慢していたのに徐々に漏れてしまう。

「あ、なまえ、なまえ…ッ。ぼくだけのなまえ…ッ!」

起きないように君を本にして書き込んでしまえば確実だというのに、この起きるか起きないかの瀬戸際に堪らなくぼくは興奮してしまっている。こんな姿を見られたら、こんなはしたない声を聞かれたら。きっと全てが終わる。だけどこのとめどない背徳感にずっと浸っていたい。

荒ぶる息がなまえにかかる度に彼女は小さな反応を見せる。その度にどんどんと限界が近付くのが自分でも痛い位によくわかる。押し寄せる興奮に絶頂がすぐ其処まで来ていた。

「は、あ、ぁ……!なまえ、出すぞ。君の、この可愛い顔を見ながら、君の太ももに…ッ!……く、ぅ…ッ」

右手を三回程、早急に動かせば大きな快感がぼくの身体を飲み込んだ。同時にどろりと太ももに吐き出された自分の欲。

「はあ…はあ…」

もう一度その頬に唇を落としてからゆっくりと身体を起こす。汚れた右手を見て今までの興奮が嘘のように冷めていく。

ぼくは何て事をしてしまったんだ。しかし後悔先に立たず、である。見れば当たり前のように太ももにはぼくの精液がこれでもかというくらいにぶちまけられていた。ああ、何ともエロい。完全な賢者モードに入る前に携帯電話でその様子も写真に収める。眠るなまえの太ももにぶっかけとは中々の興奮材料である。今度一人でする時用のネタとしてこれは永久保存版だな、なんてほくそ笑んだ所で再びぼくは罪悪感に苛まれた。はあ、完全に賢者モードに突入してしまった。すっかり勢いを無くした自身から零れた液体がソファに染みを作っていた。はあ。溜息が零れる。とりあえずティッシュはどこだ…。

一枚、二枚適当にティッシュを手に取ってから思わずげえ、と声を上げた。染みを作っていたのはソファにだけでは無かった。

「オイオイ…、制服にまで飛んでるじゃあないか…」

未だ眠るなまえを起こさぬようにごしごしと拭ってみても妙にてかてかと紺色のスカートで痕跡を残す自分の精液。はあ…、何てなまえに言おう。はあ…。賢者モードつらい。









水中でぐるぐると廻るスカートを眺めながら洗剤を適量投入する。次第に水が泡立っていく様子を見てぼくの邪念も一緒に落ちればいい、なんて事を思ってみたりする。

「わざわざ洗濯して貰ってごめんなさい。スカートの汚れ全然気付かなかったです」

いつ汚したんだろ、なんて言いながらなまえはぼくの腰に甘えるように抱き付く。寝起きで頭が働いていないなまえに何やかんやと理由をつけて無事にスカートを洗濯するまでに至った訳だが何だかどっと疲れた気がする。なまえにばれぬように溜息をついた。

「洗濯が終わるまでもう少しかかるな。紅茶でも淹れて待つとするか」
「………」
「なまえ?」
「ん、あの、えっと…」
「?」
「……、し、したい、です」
「は?」
「あの、だから。露伴先生と、その、したいんです」

何を、と言い掛けた言葉はそのまま喉の奥に飲み込まれた。もじもじと恥ずかしそうに、そして羞恥によって紅く染めた顔でそんな事を言われたらそれは最早一つしかない。予想外のおねだりにあんなに賢者モードだった下半身がずくりと疼き始める。

「何だ、珍しいじゃないか。君がそんな事を言いだすのは」
「う、だって、だって…。何でかわかんないですけど、変な気分なんです…。だめ、ですか?」

制服を脱いでいわゆる彼シャツ状態のなまえは切なそうに太ももを擦り合わせて、ぼくを見上げた。彼女が変な気分になった原因は十中八九ぼくが原因であろう。だったらぼくが責任持ってなまえの昂ぶりを抑えるしかないよなァ〜?あ、どうせなら顔面騎乗も頼んでみようか。太もも最高。

先程の後悔なんて何処へやら。既に下半身は臨戦態勢である。男って本当性に踊らされる生き物だよな、なんてだらしない顔を見られないようにぼくはそっとなまえを抱き寄せた。



20151216

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