嘘をつくのが下手な人間に限って嘘をつこうとするのは何でなんだろーなァ?例えそれが相手を傷つけまいとした嘘だったとしてもばれちゃ仕方ねーと思うし、それだったら最初っから素直に全部ぶっちゃけてくれた方がよっぽどマシだとも思う。まぁ、嘘をつくって事はよっぽど他にも何かを隠してたりするんじゃねーのかなあ、って俺は勘繰っちまう訳で。

「なまえさんはどー思う?」

さっきからずっと俯きっぱなしのなまえさんの顎を持ち上げて視線を重ねれば小さく息を呑まれて再び目線を外された。ひっでぇ、それが彼氏に対する態度っスかねぇ?ちょっぴりイラッときたので腰を動かせば悲鳴染みた声を漏らしたなまえさんの肉壁が俺自身に纏わり付くようにしてきゅうきゅうと伸縮を繰り返す。

「なぁ、なまえさん。俺の質問には答えてくんねーの?」
「…ご、ごめ…なさい…」
「何で俺に嘘ついて合コンなんか行ってんの?」
「それ、は」
「職場の先輩に頭数合わせでどうしても来て欲しいって言われたんだっけ」

目を瞑ってこくこくと何度も頷くなまえさんは今にも泣き出しそうで、その姿を見ていると憐憫の情って奴がじわ〜っと湧いてきたりもするんだけどそれでもやっぱり素直に許す事が出来ないのはなまえさんが俺に嘘をついたからだと思う。確かに合コン行っても良い?なんて聞かれた所で俺は良い顔なんてしないし、それをわかっていたからなまえさんだって俺に「残業があるから」なんて嘘をつく羽目になったんだと思う。それでも俺に内緒で他の男が何人もいる場所に出向いて、挙句の果てに連絡先まで交換してちゃ最早それは救えねえ訳だ。「先輩にどうしてもって誘われて」とか「全員で連絡先交換しようってなって」なんて言葉はただの言い訳にしか聞こえないし、なまえさんが自分を正当化しようとしているようにも思えて、ただでさえ機嫌の悪い俺には謝罪の言葉も憂いを帯びたその表情も全てが怒りを増長させるきっかけとなってしまう。

「ど、したら…許して、くれる…?」

ようやく自分から目を合わせてくれたなまえさんににい、とわざとらしく口角を上げてみせてからその細い腰を固定してもう一度下から突き上げるようにすれば面白いように華奢な身体が跳ねた。どうしたってこの人はこの状況でそんな事を言えるんだか。一糸纏わぬ姿で男に跨って自身を咥えさせられて、挙句の果てには「お仕置き」と称してベルトで両手を縛られて自由も奪われたそんな恰好でいたら自ずとやる事もわかるような気がすんだけどなァ。やるってまあ、ヤるんだけどさ。

「なまえさんが俺の事ちゃんと気持ち良くしてくれたら許してやっても良いっスよ」

どうしても?と瞳で問い掛けられたのでもう一度唇を歪ませれば観念したかのようになまえさんの纏められた両手がぺたりと腹の上に置かれた。捲れ上がった部屋着の隙間にベルトのバックルの部分が触れてちょっと冷たい。それから両手に少しだけ力が込められたかと思えばなまえさんの腰がゆっくりと前後に動き始める。

「っあ…、ひ、ぅ…っ」
「ほらもっとちゃんと動かねーと一生このままっスよ〜?」
「ん、んぅ…。じょ、すけ、くん…っ」

思えばこうやって女性上位な体位というのはするのは初めてだったかもしれない。なまえさんも俺も成年済みな訳だけども俺は相変わらず10代かよってぐらいの性欲を持て余していたので、結局こういう行為をするきっかけを作るのはいつでもこっちで、そうなれば自然とセックスの主導権を握るのも俺になっていた訳で。正常位が一番多いけどたまには違う体位で、と立ちバックって奴をこの前やったら俺の身長がでかいのかなまえさんの身長が小さいのかイマイチ噛みあわなくて結局正常位で果てた記憶がある。騎乗位で攻められるのも悪くねーかなあ、とか思ってみたけどそういう事に積極的では無いなまえさんが自らそんな事をする筈も無く結局はこんな形でしか俺の願望は実現しなかったのである。しかもなまえさんが攻めるっつーより俺が攻めてるし。

とかそんなどーでも良い事を考えてしまうくらいに不慣れななまえさんの騎乗位は退屈だった訳で。

「ね、それ本気でやってんの?」
「ひゃ、ぅ…。だって、だって…ぇ…」

相変わらず泣き出しそうななまえさんにこれ見よがしに盛大に溜息を吐いてから冷たく突き放すように「ヘタクソ」と言葉を投げ付ければ、元々下がっていた眉が更に下がって遂にはその瞳からはぽろりぽろりと幾つもの雫が頬を伝っていく。あーあ、泣いちゃった。

「ごめんなさ、い、ごめ、なさい…」

子供みたいに嗚咽しながら謝って、それでも腰はゆっくりと動かして。そんななまえさんがいじらしくて痛ましくて思わずそっと指で涙を拭えばそろそろと開けられた瞼から此方を伺う大きな瞳とぶつかった。よいしょ、と上体を起こして対面で向かい合ってから、涙で濡れた指先で震える唇をそっと撫でれば途端に緩むなまえさんの表情。「仗助くん、許してくれるの?」そんな想いがひしひしと伝わるくらいに安心しきったなまえさんの瞳。


……許すわけねーっての。


「そんな顔されたら逆にもっと苛め倒したくなるんスけどねぇ」
「え、あ、」

そのままフローリングの床に押し倒して挿入したまますぐさま四つん這いにさせれば両手の自由が効かないなまえさんはお尻だけを上げる格好でまるでそれは「犯して下さい」って懇願してるみてーだなァ、なんて思ったりして。立ちバックは噛みあわなかったけどふつーのバックならいけそーだし、何より犯してるみたいでこっちのが興奮する。

「あ、やだ、この格好、やだあ…っ!」
「だから言っただろ?お仕置きだって。なまえさんの嫌がる事しねーとお仕置きになんねーだろ」

目前の小さなお尻を掴んで拡げればダイレクトに見える結合部が何ともエロい。ギリギリまで引き抜いてから一気に貫けばなまえさんは身体を撓らせて泣き声のような嬌声をあげるばかりだった。

「あ、あ、らめ…っ。やだ、ぁ、やらよぉ…っ!」
「はは、なまえさんもしかしてM?犯されて感じてんの?」

なまえさんは必死に「ちがう」と言いたいみたいだったけどいつもよりも感じてるのは明白で声もきゃんきゃん鳴くし、中もめちゃくちゃ締め付けるし俺もいつもより興奮してるしで色んな物が混じってもうぐちゃぐちゃだった。それでもいい、ぐちゃぐちゃでも、すんげー気持ちいい、これ。

「両手縛られて、犬みたいな恰好で犯されてんのにこんなに濡らして。なまえさん相当な淫乱っスねえ」
「いん、らんじゃな…っ。あ、ぅ…っ、あ、あ…っ。そこ、ばっかり、やだぁ…っ」
「淫乱だろ?他の男にもこういう事されたくて合コン行ったんじゃねーの?」
「ちが、う、ちがう…っ!じょ、すけくんしかやだ、よ…っ」
「は…、かわいー。もっかい言ってなまえさん」
「仗助、くんにしか、こんな…の…っ、されたくないよ…ぉ…」

う〜ん、可愛い。顔が見えないという難点はあるけれどなまえさんが苛められると感じるM体質だという事と俺が案外苛めっ子気質なSだという事が判明したバックという体位の何という素晴らしい事か。濡れた声で途切れ途切れに「仗助くん」と呼ばれてしまうとさっきまでの苛々が簡単に飛んでしまうくらい興奮する。

「ね、ちゃんと言って。仗助くんに犯されるのが好き、って、ほら」
「や、あ、ぅ…。そんなの、言えな…っ。ん、んん…っ!」

ぐりぐりと一番奥を刺激しながら左手の人差し指と中指を無理矢理なまえさんの口に突っ込んで乱暴に出し入れすれば、それだけでなまえさんの中が俺のを更にきつく締め上げる。あー、やっぱこりゃとことんM気質っスね。唾液塗れになった指を引き抜いてそのまま胸を撫でればすぐに主張し始める先端部分。優しく撫でるだけでもなまえさんは感じちゃうんだろーけどきっとそれだけじゃ物足りない。

「ほら、ちゃんと言ったらもっと気持ち良くしてやるぜ?」
「あ、あ…っ。じょうすけ、くん…っ」

焦らすようにわざとずらした部分ばかりを攻めて、胸だって至極優しく撫でる程度にすればなまえさんは呆気なく陥落してしまった。

「じょうすけくんに…、おかされるの、すきぃ…っ」

まさにグレート。めちゃくちゃ可愛い。これ以上無いくらいに膨張した自身でもう一度最奥を付いて、固くなった胸の先端を指先できつく抓れば一際大きく身体を震わせてなまえさんは達してしまった。大きな収縮を繰り返す肉壁に耐えて腰を動かすと迫り上がる吐精感。はあ…、俺も持ちそうに無い。ゆっくりとなまえさんの上に覆い被さって首筋に噛み付けば痛さだけじゃなくて明らかに快感を含んだ声を漏らされてそれだけで背中がぞくぞくとする。

「は…あ、なまえさん…。も、俺出ちゃいそー…」
「あ、あ、じょ、すけくんっ。じょーすけくん…っ!」
「…っ!っく…、う…っ!」

ぴったりと少しの隙間も作らないようにぎゅうっと身体を密着させたままで自分から出た液体がそのままなまえさんの中に充満していって、注ぎ込んだのは俺の筈なのに何故だかとてつもなく満たされる感覚がする。汗とか涎とか精液とか、或いは嫉妬心とか独占欲とか恍惚感とか色んな物がぐちゃぐちゃになって混じったこの部屋は何だか変な匂いがした。






なまえさんの両手を拘束していたベルトは緩く付けたつもりだったけれど思いの外、肌にこれでもかと赤い痕を残す羽目になってしまった。うーん、これはこれで悪くねーんだけどなァ、と考え込んでみたもののこれじゃあDV彼氏に間違えられ兼ねん、と結局はクレイジーダイヤモンドに頼る事となる。

「ばかばかばか!」

両手の自由が与えられた途端にぽかぽかと降り注ぐ小さな拳たち。手数の割には痛くは無い。同棲しているアパートの狭い風呂に二人で入るにはよっぽどくっついて入らなければいけない訳だがそのせいもあって無数の拳が容易く自分の胸へと振りかざされる。その度に浴槽のお湯がぱしゃぱしゃと音を立てていた。

「あんなの、ひどいよ仗助くん…っ!」
「ひでーのはどっちだよ。俺に嘘ついて合コン行った癖に」
「う、うぅ…」
「それに俺まだ許したなんて一言も言ってねーんだけどォ?」
「え」

途端に凍り付く表情に思わず吹き出してしまいそうになる。打って変わってなまえさんの顔が曇り始めて「どうしよう」とあからさまな焦りを浮かび始めた。心なしか俺と少しばかりの距離を取っている気がする。だけども何度も言うけどこの狭い浴槽に入っている限りはいくら距離を取ろうにもそれは不可能な事で。細い腰に手を廻してぐいと引き寄せればほんの少しあけられた距離は何とも簡単に再び縮められる。

「…許して欲しい?」

濡れた長い前髪を掻き上げてから額同士をくっつければなまえさんは息を呑んでからこくりと頷く。

「…じゃあ、もっかい仗助くんに犯されるの好きって言って?」

そう言えば顔を真っ赤にしたなまえさんが再び「信じられない」とか「ばかじゃないの」なんて事を大声で言う物だから音を反響する浴室内では必要以上に耳に届いてしまって煩わしさから奪う様な口付けで誤魔化してみる。だけども結果としてその口付けが仲直りの行為だと気付いた頃には既にお互い顔を見合わせて笑い合うだけになっていた。


20160122

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