※喧嘩して仲直り。

ここ最近なまえがまともに口を利いてくれない。どうかしたかと聞いても「何でも無い」と一点張り。どう見てもその態度は何でも無い訳ないだろうに。俺が何かしたかと問えば「自分の胸に聞いてみれば」と返された。そっと自分の胸に手を当ててみる。特に何も思い当たる事は無い。益々首を傾げればなまえに枕を投げつけられた。やれやれ、どうしたものか。


自分で考えてもどうにもならず本人に聞いても突き放される場合はどうすれば良いのだろうか。ここはやはり第三者の意見を取り入れるべきか。この町において第三者と言われて一番に思い付くのは年下の叔父の事であった。しかしながら仗助に相談した所で「俺今まで女の子と付き合った事無いし、そーゆうのわかんないっす…」と至極申し訳無さそうに言われた。溜息交じりにそうかと返せば仗助は「でもこーいう相談が得意そうな奴なら知ってますけど」と口を開いた。誰だそれは。



「こーいう相談はお前のが向いてると思ってよ〜。なあ頼むよ、康一」

特徴的な凛々しい眉毛を下げて困ったように頭を掻く仕草は頼りない。けれども小さな身体からは想像もつかない多大な勇気を持ち合わせた彼はいわゆる「頼りになる男」であった。

「うーん、まあ一応聞くだけ聞きますけど…」

そこから今までの事を洗い浚い彼へと話した。2週間ほどなまえと口を利いていない事、その癖たまに此方に意味有り気な視線を寄越す事。女心というのは未だによくわからない。

「どう思う、康一くん」
「それだけじゃ原因がわからないですけど…。本当に思い当たる事無いんですよね?」
「ああ…、そうだな」
「とりあえず原因はわからずとも謝ってみるとか」
「それはもうやった。「何で私が怒ってるかわかんない癖に謝らないでよ」と益々怒りを喰らう羽目になったがな」

それを聞いて仗助と康一くんはお互い目線を合わせて困ったように笑ってから嘆声を洩らした。溜息を零したいのは此方だ。毎日毎日ホテルに戻って不機嫌ななまえと同じ時間を過ごす俺の身にもなって欲しい。

「なまえさんがそういう風になったのって2週間前なんですよね?じゃあその2週間前に何かあったんじゃないんですか?」

人の記憶なんて物は限りなく曖昧だ。2週間前の自分がなまえに何をしたか思い出すだけでも手間取る。

「俺が承太郎さんに会いにホテル行ったのも2週間前じゃなかったでしたっけ?」

そう言われたらそうだったかもしれない。そのまま仗助と落ち合って杜王町を周って適当なカフェで一息ついて、……ホテルに戻ったらなまえが不機嫌になっていた。なまえの様子がおかしくなったのは仗助と会ったあの日からだ。しかしそれがわかった所で自分がなまえに特別何かをしたのかと問われるとそれはわからない。結局行き詰ってしまった。

「もしかしてなまえさん、寂しかったんじゃないですかね?」
「寂しい?」
「だって、なまえさんは承太郎さんの後を追って杜王町まで来たんですよね?それなのに承太郎さんは仗助くんとスタンド使いについて調べたり、海洋学の仕事だったりで忙しくて…」

そう言われて妙に納得してしまったのは自分でもそう思う部分があったからだ。確かに同じ部屋に滞在している物のなまえの相手を十分に出来ていたかと言われるとそれは違う。杜王町を探索して、暇を見ては海に赴き、なまえの事は手つかずになっていた。何ならなまえとの時間は杜王町に来る前の方がよっぽど取れていたかもしれない。

「康一くんの言う事は一理あるかもしれない」
「きっとそうですよ!女の人ってそういうものですから…」

そう言って康一くんは何処か遠くを見つめた。彼は彼で色々気苦労があるのだろう。あのスタンド使いの彼女を思い浮かべて小さく吹き出せば「笑い事じゃないですよ」と康一くんが恨めしそうな表情を見せた。

何はともあれそれらしい原因は解明出来た。後はその事を謝ってなまえの機嫌を直してやれば良い。康一くん、君は本当に頼もしいヤツだ。



ホテルに戻れば今日も今日でなまえはベッドの上で丸くなっていた。物音に気付いてちらりと此方を見た物のワザとらしく背中を向けられる。そういう仕草も寂しさから来ているのかと考えれば可愛いとすら思えてくるから不思議だ。なまえの傍に腰掛ければギシリとベッドが軋む。

「なまえ」

名を呼んでも何の反応も無い。そっと覗き込めば抱き抱える枕に顔を埋めて表情を隠された。仕方が無いのでそのままなまえの上に覆い被されば更にベッドが沈む。驚いたようになまえが顔を上げたが目が合ってすぐに逸らされた。

真っ黒なままの髪の毛を梳いてから毛束を少し取って毛先に唇を落とせばなまえの匂いが広がる。そのまま距離を近付けて丸い額へと唇を寄せる。そのまま鼻先、そして頬へと続ければ抱き抱えていた枕を胸元に押し付けられた。

「いきなり何すんの…っ」

「なまえさんも意地になってる部分があると思いますから、多少強引に行くのも有りだと思いますよ」なんて康一君の言葉が頭の中で蘇る。そうだな、なまえも中々意地っ張りな人間だからな。押し付けられた枕を取り上げて適当に投げればぼふ、と床に無残にも叩き付けられた音がした。これでもうなまえとの間を邪魔する物は何も無い。戸惑った表情のままのなまえの唇に自分のを重ねて何度も角度を変えて啄めば、うっすらと開かれた隙間から舌を捻じ込む。舌先で触れ合おうとすれば奥へとなまえの舌は逃げ込み、両手で肩を押し返されたがそんな事は気にしない。なまえは意地になっているだけなのだから。逃げ惑う舌を捉えて吸い上げればなまえの身体がびくんと跳ねた。時たま漏れる艶っぽい声を聞くのは何日ぶりだろうか。唇を離せば肩で息をしているなまえが俺を見上げる。やっと俺と目を合わせたな。

「なに、承太郎ぉ…」

そんな涙目で睨まれても何の効力も無い。首筋に何度も口付けをしながら服の中へと手を潜り込ませる。こうやって素肌に触れたのもえらく久しぶりな気がする。脇腹を撫でながら首筋を舐め上げて鎖骨に軽く甘噛みすれば髪をぐしゃりと掴まれる。そろそろと手を背中の方へと回して下着のホックを外しに掛かるが上手く外せない。ベッドとなまえの身体の間にまるで隙間が無い。

「おい、なまえ。ちょっと身体浮かせろ」

そう言えば首を横に振られ再び力の入っていない手で身体を押し返された。そうか、なまえはまだ意地になっているのか。しょうがない奴だ。少々無理矢理になまえの身体を浮かせて直ぐに下着の留め具を外してから服ごとたくし上げれば滑らかな二つの膨らみが姿を見せた。

「や、やだやだっ。承太郎…っ」

「女の人って嫌だ嫌だも好きの内って言うじゃないっすか〜。本当俺には女心理解出来そうに無いっす」そう言えば仗助がそんな事を言っていた。そうか、嫌だと言いながらなまえの本心はそうでは無いという事だな。ふむ、と自分の中で納得してから既に外気に晒されて勃ち上がっている先端を口に含めば大きくなまえの身体が跳ねてもう一度髪を覚束ない手で掴まれる。それはもっとしてくれと言う事だろうか。口に含みながら舌先を尖らせて舐め上げて、反対は指で扱けばなまえは身体を捩じらせた。

「やらぁ…っ。じょ、たろぉ…っ!あ、あ、だめぇ…っ!」

ちゅうちゅうと赤子の様に吸い上げて指先で弄っていた方を少し強めに抓み上げれば一際大きくなまえが嬌声を上げて頭をぎゅうと抱きかかえられた。そのまま力無くなまえの身体がベッドへと沈む。

「…なまえ、お前まさか乳首だけでイったんじゃねーだろうな」
「あ、あぅ…。だって、だって…承太郎がぁ…」

羞恥に染まった顔をして見上げたなまえの瞳はみるみる内に涙を溜め込み始めた。今にも零れそうな涙を耐えるなまえの頬に唇と寄せてから下半身の衣類へと手を掛ければ今度は素直に腰を浮かせる。そのまま難なく全てを取り払ってから足を拡げればなまえの其処はすっかり出来上がっていた。未だ明るい室内の光を浴びててらてらと光る割れ目をなぞり上げてからゆっくり指を埋め込めば何の抵抗も無く其れは受け入れられる。出し入れをする度になまえの身体がぴくぴくと反応する物だから、思わず指の本数を増やして中のざらついた部分を撫でれば耐えられないと言った風に手を押し退けられる。そうは言っても全く力は入っちゃいないが。

「あっ、ひぅ…っ!もうやらぁ…っ。だめ、だめ、ぇ…っ!」
「何だ、またイきそうなのか。ほら我慢するな」
「じょうたろ、あああっ、じょうたろぉ…っ!」

きゅんと指が締め付けられてびくびくとなまえの身体が震えた。はーはーと必死に呼吸をするなまえを見て指を引き抜けばとろりと液が漏れて、ああ頃合いだなと思った。視点の定まらないなまえの足をもう一度広げてからすっかり勃ち上がっていた自身を擦り付ければ「今はまだ駄目…、やだぁ…」と拒まれた。「嫌よ嫌よも好きの内」だったよな。ゆっくり先端を宛がえばつぷりと飲み込まれる。後はそのまま腰を推し進めれば自身の全てがなまえの中へと埋め込まれた。

「あ、あっ!じょ、たろぉっ」

久しぶりのなまえの中はこれでもかと言うくらいにきつかった。それでも肉壁は拒む訳でも無く奥へ奥へと自身を誘うので気付けば力任せに何度も腰を打ち付けていた。耳元でなまえと呼べば「承太郎ぉ」と甘えた声を出しながら細い腕で抱き締められたので思わず口付けしたままで腰を動かす。先程まで逃げ惑っていた舌は自ら絡み付いて来る。

やばい、今日は俺も早いかもしれない。そう思っている内になまえの中が益々ひくついて限界が近い事を知らせていた。我慢しなければと思っているのに包み込む肉壁の柔らかさとなまえの嬌声とその蕩けた表情で持ち応えそうに無い。

「あっ、もう無理らよぉ…っ!イっちゃうよぉ…っ、あああっ!」
「……なまえ…っ」

ぎゅうとなまえに強く抱き締められた瞬間に中も同じようにぎゅうと締まって思わず奥深くで精を吐き出した。未だびくびくと震えながら全てを受け止めるなまえが愛しい。





いわゆる腕枕という物をしながらなまえに沢山の口付けを降らせれば恥ずかしそうに身体を摺り寄せられた。素直に甘えてくる姿を見ると数時間前の剥れた姿が嘘のようだと思う。

「…今日の承太郎、いつもと違う」

少し嬉しそうにぽつりとなまえが呟いた。髪を撫でれば擽ったそうに目を細める姿は小動物かと見紛う。

「なまえに今まで全然構ってやれなかったからな」

だから怒っていたんだろう、と続ければ驚いたように目を見開かれて直ぐにまたなまえは剥れた。けれども何処か冗談ぽいその表情は先程までとの剥れとはまるで違う。

「承太郎、それ本気で言ってるの?私が承太郎に構って貰えなくて怒ってると思ってたの?」

今度は俺が目を見開く番だった。何だ、その言い方だと別の理由で怒っていたような言い方じゃないか。思わず目を泳がせればなまえが笑いながら抱き付く。

「私のプリン食べたでしょ」
「……プリン?」
「冷蔵庫に入れてたのに無くなってたもん」

そんな物を食べた記憶が無い。甘い物はあまり摂取する事が無い。はて、と思い返した所で2週間前の出来事が今になって蘇る。そう言えば仗助がホテルの冷蔵庫を開けながら「このプリン食べて良いっすか」なんて言っていた気がする。書類を作成していた自分は大してそれを確認する事もなく「構わない」なんて返事をして。食べたのは仗助だが元はと言えばちゃんと確認しなかった俺が悪い。そうか、なまえが2週間も機嫌が悪かったのはプリンのせいだったのか。そうか、プリン…。なまえに悟られない様に小さく溜息を零せば「でも」と切り出される。

「承太郎に構って貰えなくて寂しいなって思ってたのは本当だよ」
「…なまえ」
「ね、承太郎。…キスしたい」

せがまれる様に甘えられてお望み通りに唇を重ねれば頬を緩めたなまえが其処にいた。何はともあれ結果オーライと云う事か。俺も釣られて口角を上げた。




20150629

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