※承太郎の妹


なまえの帰りがやけに遅かった。普段なら夕方には滞在しているこのホテルに戻ってくる筈なのに結局、なまえが帰って来たのは6時を過ぎてからだった。遅い。しかも、兄である俺の電話にもすぐに出ず、聞けば「着信あったのに気付かなかったの」と返す始末。あれだけ長いコール音だったにも関わらずに気付かない訳がないだろう。そもそもこんな時間まで何をしていたんだ。「散歩したり色々。でも何か記憶が曖昧なんだよね」何だそれは。俺がどれだけ心配しているのかわかっているのか。未だ黙ったままで眉間に皺を寄せる俺を見てなまえは「遅くなってごめんなさい」と甘えたように身体を摺り寄せた。そんななまえを見てしまうといつも許さざるを得なくなってしまう、俺も鬼ではない。が、今回はそうもいかなかった。抱き寄せたなまえの髪に顔を埋めるといつもと違う匂いがしたからだった。僅かだが確実になまえとは違う匂いがする、少しだけ鼻を刺すようなこの匂いはまるでインクのような。…まさかとは思うが確かめるに越した事は無い。














「なまえ、もっと尻を上げろ」
「あ…ぅ…」

乾いた音が部屋に響く。軽く叩いた割にはやけに痛そうな音だったと思う。なまえのその白くて果実の様に丸みを帯びた尻が少しだけ赤くなってしまった。叩かれておずおずと尻を突き出した格好になったなまえは何も身に付けずにベッド上で犬のように四つん這い状態でいた。

「おにいちゃ…、この格好…、いやぁ…」
「お前が大人しくしていれば直ぐに終わる」

目前に差し出された尻の割れ目を拡げるかのように両手でぐい、と引っ張ればなまえの全てという全てが見えた。いつもは自分を受け入れているその場所さえはっきりと見て取れる。中々良い光景ではあるが、未だ自分の気持ちは靄がかかったままである。

「やだやだあ…っ、ひろげ、ないで…ぇ」
「なまえ、もう一度聞く。今日は外出先で何をしていたんだ」
「…っ、だ、から、いろいろ…」
「……やはり確かめるしかないな」

拡げたままのそこをまじまじともう一度見つめる、濡れていない。ならば中は。ぐい、と指を無理矢理なまえの中に押し込む。受け入れる準備の出来ていない肉壁が指を押し返すがそれを気にせず奥まで挿入する。

「おにぃ…ちゃ、いた、い…」

泣きそうな声のなまえに少しばかり良心が痛むが、そのままなまえの中を確かめるかのように指をぐりぐりと動かす。……、他の男が侵入した形跡は見当たらない。だが、それだけではまだ安心出来ない。

「今日は誰かと会ったか」
「…っ、ゆび、うごかすの、だめ…っ」
「なまえ、俺の質問に答えろ」

もう一度尻を叩くとなまえが身体を震わせた。尻を叩かれて感じているのか先程よりも其処はすんなりと指を受け入れ始めている。時折びくんと跳ねるその身体は確実に熱を持ち始めていた。なまえは快感に非常に従順な人間であり、そこが可愛い所でもあり、心配な所でもある。自分以外の誰かがもしなまえのこんな姿を見たら、と思うだけで身体が憤怒で燃えそうになる。

「ろは、せんせ、に会った…ぁ…っ」

やはり、と言った所であった。十中八九あの男が絡んでいると匂いを嗅ぎながらそう思っていた。これでなまえの記憶が曖昧な点も全て辻褄が合う。どういった経緯かは不明だが確実にあの男はなまえにスタンド攻撃を仕掛け、そして記憶を改ざんしている。何故、なまえにスタンドを使う必要があったのか。何故、なまえの記憶を消す必要があったのか。疑問が湧き上ると共に歪んだ感情も自分の中で渦巻き始める。

「…で、露伴先生と何してたんだ」
「ろはん、せんせに、頼まれて…っ、絵のモデル…、」
「絵のモデル?」
「でも、私、途中で寝ちゃったみたい、で、…ひ、ぅっ!」

指を動かしながらなまえの尻を叩く。遂になまえの其処は水音を立て始め、俺の指をぎゅうぎゅうと締め付け奥まで誘い込むようになっていた。はあ、と溜息を零してから被っていた帽子をベッド脇へと置き、なまえの中の指をもう一本増やす。

「おい、俺がいつも言ってるだろう。知らない人にはついて行くなと」
「あ、あ…っ、せんせ、はしらな、人、じゃないよぉ…っ」
「そうじゃなくても、だ。他の男の家にノコノコ着いて行くな」
「ごめ、なさい…っ、んぅ…、お兄ちゃ…ぁっ」
「もう少しお前は危機感をという物を持て。隙がありすぎる」
「んっ、あ…っ、ごめんなさ、い、…あ、あっ」

中のざらざらした部分を二本の指で集中的に攻めるとその内になまえはびくびくと身体を震わせながら達してしまった。シーツを両手で握りしめ、未だ余韻に浸っているようだが休む暇は与えさせない。気付けの意味合いも兼ねてすっかり赤くなっているなまえの尻を叩く。

「ひ…っ、お、おしり、たたかないで…」
「何を一人で気持ち良くなってるんだ、お前は」

言いながらなまえの身体を仰向け状態にする。俺と目が合うと何が起こるかわからない、といったようにしぱしぱと瞬きをしたが、足を拡げるように手を掛けると流石に察したようだった。

「あ、まって、まってお兄ちゃん…っ!」
「待たねぇ」
「だって、今イったばっかりだから、だから…っ」

だめ、と抗うなまえを気にせずに自身を其処に宛がって一気に腰を進める。相変わらず中がきつい。なまえはと言えば身体を撓らせて相変わらずシーツを掴み、声にならない声をあげていた。目尻に溜まった涙を拭ってやってから覆い被さるようにして唇に口付ける。腰を動かしながらそのままでいると呼吸が上手く出来なくなったのか、力の入らない手で肩を押し返されたのでそのまま唇を離してからその小さな手に自分の手を重ねる。中からも外からもなまえの体温を感じる、熱い。

「あ、ぅ…っ、あ、あっ」
「なまえ、お前が愛しているのは誰だ」
「あ、あっ、おにいちゃ…ぁ…っ、ん、ぅ」
「…聞こえねぇ」
「んぅ、…お兄ちゃ、んが、すきぃ…っ、おにぃ、ちゃ、しかこんなの、しない…っ!」
「…俺もだ、なまえ愛している」
「すき、すき…ぃ、あ、あ、あ…っ!」

ぎゅう、となまえが俺の手を握り返した瞬間に中も同じぐらいに締め付けが強くなった。随分と達するのが早いと思ったが、一度達してしまっている事を考えるとまあ妥当だろうか、とも思う。はあはあと大きく呼吸をして酸素を取り込もうとするなまえから手を離せば、虚ろな目が不安そうに俺を見上げた。一度、頬に軽く口付けしてから離した手でなまえのか細い腰をそっと掴んでもう一度ゆっくりと動き出す。

「なまえ、俺はまだイっていない」
「え…あ…、やらぁ、も、むりらよぉ…っ」
「なまえ」
「あ、あ、おねが、も…っ、ゆるし、てぇ…っ!」




















昨日の事を思い返してぼくは原稿を仕上げながら思わずにんまりとしてしまった。昨日は遂に念願叶って"あの"空条承太郎の妹であるなまえの記憶をぼくのリアリティとする事が出来た。あの、という言い方が適切かどうかは不明だが少なくともぼくにとってはあの男は非常に興味を惹く対象であった事は間違いない。しかし、あの強大なスタンド能力を持ち、実戦経験も豊富な彼にスタンド攻撃を仕掛けるのは危険極まりない行為である。それならば、と目を向けたのが妹のなまえである。彼女もまた財団に属する人間であり、スタンド能力を持つ人間。これだけでもぼくの興味を惹くには十分だが、それに加えてあの空条家の血を継ぐ者。そして兄の承太郎に比べ随分と人懐っこい性格は、やはり、というべきか簡単にぼくを信用してしまった。何かと理由をつけて家に上げるのも容易である。人を簡単に信用するのは良くないよな、女としても、人としても。

そこから先はヘブンズ・ドアーで彼女を本にしてそれこそなまえを読み耽った。そこには実の兄である承太郎との生々しい男女関係も記されていたが、その事実はぼくを興奮の絶頂へと駆り立てた。天真爛漫な性格で周りから愛され、特異な能力を持ち、そして誰にも言えない秘密を持ち合わせている。そんな魅力的なキャラクターを嫌う人間がいるだろうか?良い、実に良い。なまえをキャラクターにしたらきっと面白い漫画が描ける。次に彼女に会えるのはいつだろうか。まだ彼女の読んでいない部分をもっと知りたい。早く、早く。と、そこにインターホンが鳴り響いた。

「誰だよ、ぼくの創作活動を邪魔する奴は…」

ゆっくりと扉を開けるとそこに居たのは予想だにしない人物であった。

「…承太郎、さん」
「……先生、すまないな。急に訪ねてしまって」
「え、あ、いえ構いませんけど…」

何故この男が自分の家に、と思ったがすぐに見当がついた。間違いなくなまえの事であろう。何故、昨日確かに『岸辺露伴の家であった事は全て忘れる』と書いた筈なのに。絵のデッサンをしている途中で寝てしまった、と本人に伝えて帰路につかせた筈なのに。何故。そして、この状況は非常に不味いのではなかろうか。

「あ、の、どうぞ、あがって下さい」
「いや、ここで良い。すぐに済む」
「え、」
「…先生、うちの妹が随分と世話になったみてぇだな」
「あ、」

ガチャリ、と後ろ手で扉を閉められご丁寧に鍵までかけられてしまった。自分の家なのに居心地が悪い、悪すぎる。じりじりと距離を詰められ、見上げれば帽子の下からあの特徴的な翡翠色の瞳とぶつかった。ぼくの視界が暗転するまで、残り3秒。


20150331


ALICE+