※連載の番外編。






堪らん、実に堪らん。言っておくがぼくは別にロリコンでは無い。

「露伴先生…、恥ずかしいからあんまり見ないで下さいよぉ…」

いや、しかしそうは言ってもだな。これを見ずして何を見ようか。薄く栗色に染められた今の髪とは違い真っ黒なままの髪の毛だとか、全く化粧の施されていない幼さの残るその顔だとか、膨らみがまだ控えめなその胸だとか。ああ、辛抱堪らん。

「やっぱり中学生時代の私を見せるのは恥ずかしいです…」

小さな声でそう呟いて俯いてしまったなまえとぼくが手にしているアルバムの中のなまえを見比べる。良い、どちらも良い。実に良い。

「クラスの仲良い子達と中学生時代のアルバムを見せ合いっこしたんです」なんてなまえが言う物だからふーん、じゃあぼくにも見せてくれよ、なんて軽く言ったらこんな大惨事になってしまった。何処が大惨事かなんて言わせないでくれよ、恥ずかしい。目前で「見るのは少しだけって言ったのに〜…」なんて唇を尖らすなまえも大層可愛いが、アルバムの中で笑うなまえも抜群に可愛い。

体育大会の写真で曝け出されたなまえの太ももにしゃぶり付きたい。宿泊合宿で布団の上で友達と戯れるなまえの首筋に首を埋めて匂いを嗅ぎたい。文化祭のメイド喫茶でメイドの格好をしている(死ぬほど行きたかった。死んでも死にきれない)なまえの絶対領域を撫で回したい。あとは修学旅行でカメラに向かってピースサインをするなまえのその指を甘噛みしてしまいたい。やばい、考えれば考えるほど大惨事じゃないか、これじゃ。

「…ねえ、露伴先生の学生時代の写真て無いんですか?」

つん、とぼくの服を引っ張りながらなまえが口を開く。どうでも良いがその少しだけ服を引っ張る仕草も堪らん可愛い。

「さぁな。探せば何処かにあるかもしれないな」
「そうですかあ…。露伴先生の高校生時代とか、見たいです」
「今のぼくと大して変わらないと思うぜ?」
「んん〜、確かに露伴先生って歳を重ねてもあんまり変わら無さそうですもんね。30歳くらいの露伴先生も見てみたいなあ」
「…その内見られるだろ」

「ぼくとずっと一緒にいればな」と続ければなまえが恥ずかしそうに「うん」と頷くものだから思わず口角が上がる。それから「露伴先生とずっと一緒にいられるように頑張る」なんて言う物だから遂に参ってしまった。頑張らなくてもぼくは十分なまえに音を上げていると言うのに。


「先生、ばいばい。また明日ですね」

送って行くという言葉を押し退けてなまえはぼくの家を後にした。明日は土曜日。明日もなまえと会える。明日は何処に連れて行ってやろうか。ぼんやりと明日の事を考えて食事を摂り、少しだけこの前買った本を読んで、そしてぼくは眠りについた。








うっすらと目を開けた。朝日が差し込んで部屋が明るい。何回か瞬きをして視界をクリアにした所で寝返りを打った。一体今は何時なんだ。手元だけで携帯電話を探すも一向に探し当てられない。低血圧なせいもあり少しだけ苛付きながら舌打ちをして結局は上体を起こす羽目になった、のだが。

「案外、遅いお目覚めだな」

………。思わず目を擦ってしまった。誰だお前は。いや、誰だというよりぼくだった。寝室にもう一人ぼくが存在していた。昨日、寝るまで読んでいた付箋が付けられた本を片手にしてベッド脇に座っていたのは紛れも無くぼくである。

「…は?なん…?」
「随分と間抜けな顔だな。ぼくの顔でそんな間抜けな顔するなよ、みっともない」

朝から随分な言い方で再びぼくは苛付き始める。というかこいつは一体何者なんだ?まじまじと見ると確かにぼくだが少しばかり外見が若い。髪は真っ黒なままだし、その白いシャツはぼくが学生時代によく身に着けていた物だ。じゃあこいつは学生時代のぼくという事か?何故?まさか新手の

「スタンド使いじゃない」

思っていた事を言い当てられて思わず眉間に皺を寄せた。睨むようにもう一人のぼくを見るも相手は全く気にする様子も無い。

「何で自分が二人いるかって思ってるだろ?」
「何だよ、ぼくが思っている事までわかるのはやっぱりお前もぼくだからか?」
「まあそうだな。でもぼくは17歳の岸辺露伴だけどお前とは少し違う」
「……どういう事だ?」
「そのまんまの意味だ。そもそもぼくがこうやってここにいるのは彼女が願ったからだ」
「…彼女って、」
「なまえだよ。昨日言っただろ?学生時代の岸辺露伴を見たいって」

言った、確かになまえは学生時代のぼくを見たいと言った。けれどもたったそれだけで何でこんな事になる?いや、でも待て。何でこいつもなまえを知っているんだ、それもこいつがぼくだからか?寝起きの頭じゃ処理しきれない。

「可愛くて堪らない、愛しい、大事にしたい」
「何?」
「お前がなまえに抱いてる感情だよ。不思議とその感情はぼくにもある」
「…言っておくけどな、なまえはぼくのだ。お前のじゃない」
「でも昨日のなまえが求めたのは学生時代のぼくだ。だからお前には今日は大人しくして貰う」

何を勝手に、と口を開いた瞬間だった。見慣れたスタンドが飛び出してぼくへと勢いよく向かって来て一瞬の内に自分が本になってしまった。両手で顔を確認しても指先に感じるのは紙の感触でしか無い。

「な、んで、お前がスタンドを使える…ッ?ぼくが弓矢で射抜かれたのは…ッ」
「だから言っただろ?ぼくは17歳の岸辺露伴だけどお前とは少し違うって」
「………ッ」
「『岸辺露伴はこの部屋から出る事が出来ない』よし、じゃあ今日はぼく達でなまえを可愛がってやるから。君はここで大人しくしてなよな」

ばたん、と扉は閉められた。まさか自分が自分にスタンド攻撃を仕掛けられるとは思いもしなかった。これはこれで貴重な経験が出来て悪くない。いやだが、問題は其処じゃない。あいつはなまえと接触を試みるつもりだろう。接触して、それで何をするつもりだ…?…いや、あいつもぼくだ。ぼくが思っている事とあいつが思っている事は大して相違が無いに違いない。考えろ、岸辺露伴。なまえと接触して何をしたいか。………クソッ、エロい事しか思いつかない!どうする、なまえが来るのは11時で今は10時前だ。それまでに何とかしなくては、何とか…!




結局何も思い付かずに時刻は11時を回ってしまった。インターホンが先ほど聞こえた辺りなまえは来てしまったようだ。どうする、どうすれば良い。しかもよく考えたらあいつは「ぼく達でなまえを可愛がる」と言っていた。「ぼく達」だと?複数形?だとすればもしかして30歳くらいのぼくもいるのか?あああ、考えれば考える程頭がおかしくなりそうだ。この書き込みを消すにはどうしたら…。

「あ」

何故ぼくは気付かなかったんだろうか。あいつのスタンドがヘブンズ・ドアーならぼくのスタンドだってヘブンズ・ドアーだ。だったら自分をもう一度本にして書き込み部分を擦ってしまえばいいんじゃないのか。直ぐに自分を本にしてごしごしと顔を擦ってから恐る恐るドアノブを捻る。そうすれば先程までは開かなかった扉がガチャリと音を立てて開いた。こんなに簡単な事が何故わからなかったんだ、ぼくの馬鹿野郎!ああ、でも今はそんな事よりなまえの貞操が無事かどうかを確認するのが先だ。どうかなまえが無事でありますように。







「何だよ、思ったよりも遅かったなァ」

リビングにてにやにやと人の悪い笑みを浮かべたのはぼくでは無いぼくだった。ただし、その見た目はぼくよりも幾分か老けている。鮮やかな緑の髪に青いヘアバンド、青い縁取りが特徴的な服を身に纏うぼくは未来のぼくと言った所だろうか。いや、しかしそんな事はどうでも良い。

ソファの上で二人のぼくに挟まれているなまえは下着も殆ど身に着けていない状態でひたすら嬌声を上げていた。17歳のぼくが胸の膨らみの先端を口に含んで脇腹を撫でればなまえが身動ぎしてソファが軋んだ。何かを求めるように内ももを擦り合せたなまえに気付いた未来のぼくがそっと脚を開かせて、このぼくだってまだ1度しか触れた事の無い彼女の中心部に指を這わせる。

「なまえ、もう何回イった?」
「わ、かんな…ぁ…っ!いや…ぁ…っ、も、むり…れす…っ」
「20歳のぼくにもなまえがこんなに厭らしい子だっていうの見て貰わなきゃ駄目だよなァ」
「や…あ、ぅ…っ。ろは、せんせ…っ、やだ、やだ…ぁ!」
「ほら、さっき教えたみたいにイっちゃいます、って言いながらイけよなまえ」
「ひ、ぅ…っ!せんせぇ…っ。らめ…ぇ、イっちゃうよぉ…っ!あ、あ、あ…っ!」

片方のぼくが先端を甘噛みしたまま開いた方の手でもう一つの先端を指先で扱いて、もう片方のぼくが身体の中心の一番敏感な肉芽を弾いた瞬間になまえは声にならない声を上げて身体を震わせた。

「随分と達するのが早かったな」
「やっぱり見られると感じるのかもな。なぁ、なまえ」

指先に付いた愛液を舐め取りながらそんな事をぼやく未来のぼくと力の入らない様子ではあはあと呼吸をするなまえに愛おしそうに口付ける17歳のぼく。本当ならば今すぐ怒りをぶちまけてこの二人をなまえから引き剥がしてやりたい。

けれども、ぼくは今まで無い位に興奮してしまっていた。他人ならまだしも外見は完全ぼくと一緒な二人にここまでなまえは乱れて、しかもあんなに性に無知な彼女が厭らしい言葉を口走って。怒りと興奮とが入り混じってどんな顔をしたら良いのかわからない。

「なあ、そんな怖い顔してても雄の部分が反応してちゃ何の意味も無いぜ?」
「お前ら…なまえから離れろ…ッ」
「拗ねるなよ、仲間外れにされて寂しかったんだろ?」
「よ…っと、ほら、こっちはお前の為に取ってある。…感謝しろよな?」

言いながら二人はなまえの脚をぐいと持ち上げるようにして広げた。未だ照明を点けずとも十分に明るい室内で、なまえの普段は隠されていた部分が丸見えになってしまって自分の雄の部分がずくりと反応してしまった。

「こっちはお前じゃなきゃ嫌だってなまえが言って聞かなかったんだよ。全く…20歳のぼくの何処が良いんだか」
「なまえ、ちゃんとお願いしなきゃ駄目だろ?」

二人に促されてなまえが熱に浮かされたままの表情でぼくを見つめる。目の縁を赤らめたままで何かを期待する彼女に思わず喉を鳴らす。

「ろはん、せんせ」
「…なまえ…ッ」
「なまえのココに…、せんせぇのください…」

おねがいします、とあの少し舌っ足らずな声で強請られてそれを無視できるほどぼくは理性のある人間では無い。なまえがぼくを求めているという事実に心を焦がして、遂にぼくは彼女の上へと覆い被さる。

「ろはんせんせぇの、好きにしてくらさい…」

もう止まれないかもしれない。最早、悪魔に魂を売ったような気分だった。あんなになまえを大事にすると言っていた癖に。ああ、でももういい。この際どうにでもなってしまえ…ッ!









うっすらと目を開けると真っ白なシーツが見えた。……まさか、まさかこれは。ごしごしと目を擦って確認するもやっぱり真っ白なシーツしか見えない。それを確認してからぼくは盛大な溜息をついた。どうやら夢だったようだ。普通に考えたらわかる事だよな、確かに。非現実的で有り得ない。はあ、自分は何て夢を見てしまったんだ。二人のぼくに攻められるなまえの夢を見るなんてどれだけぼくは邪なんだ。はあ…。夢ならなまえとちゃんとセックスすれば良かった。自身が勃ち上がっているのはきっと朝の生理現象のせいだけでは無い筈だ。

そもそも今何時だ?ごそごそと手で携帯電話を探すも見当たらない。ああくそ、結局起き上がる羽目になるのか。そうやって上体を起こした瞬間だった。



「案外、遅いお目覚めだな」









無限ループに陥る件

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