閃光のフラッシュ。
S級ヒーローの一角である彼は、なかなかにして変わった人物だ。
あんまり喋らないのかと思えば、ものすごい勢いで相手を挑発することもある。
ナルシスト……とまではいかないが、自分に絶対的な自信があるのは確かだ。
「どこへ行く」
そんなヒーロー様が、なぜ私にやたら構ってくるのか。最近の悩みはもっぱらこれである。
「冷蔵庫からジュースとってくるだけですよ」
「ふん」
我が家のソファを陣取っている彼は、それはそれは様になっていて、カッコイイ。
カッコイイが、とりあえず他所でやってくれないだろうか。お陰で私は床に直座りだというのに。
頭の中で愚痴りながら、グラスにアップルジュースを注ぎ、その場でぐいっと飲み干す。
酸味と甘みのある爽やかな液体が、喉を通り体に染み渡るのを感じると、つい「くう〜!」とか「ぷはーっ!」とか、ビールを飲んだおっさんみたいな声を上げたくなるのは、なぜだろう。
空になったグラスをシンクに置いて、部屋に戻れば、フラッシュさんはどこか退屈そうにテレビを見ていた。
「何見てるんですか?」
「ドラマだ」
「へぇー、意外」
フラッシュさんもドラマ見たりするんだ。
何を見ているのだろうか?と、私もテレビに視線を移す。あまり大きくないその画面には、男女が抱き合っている姿が映っていて。
「……恋愛ドラマですか」
「全くもってくだらんな」
じゃあ見なければいいのに、と言いかけてギリギリ口を噤んだ。下手な言葉を吐けば、彼の眉間に皺が寄る可能性がある。
「あの男は女を裏切って泣かせたのに、なぜ今、抱き合っているんだ?」
「さ、さあ?私に聞かれても……」
「俺なら裏切らないし、泣かせない」
「そ、そうですか」
なんで私を見ながら言うのかな。
変に期待しちゃったらどうするんだろう。
……まあ、フラッシュさんの事だから、特に考えなんてないのかもしれないが。
「お前は俺を裏切るか?」
「え?」
「裏切るのか、と聞いているんだ」
「多分……裏切りはしないかと」
「そうか」
フラッシュさんは、恐ろしく綺麗に微笑むと私の頬を軽く撫でた。
部屋の照明に照らされた彼の髪が、キラキラ輝いて、それがさらに彼の美しさに拍車をかける。
「あの、フラッシュさん?」
「なんだ」
「……心臓が爆発しそうなんですけど」
「安心しろ。残った骨は拾ってやる」
「死にませんよ!」
どうやら私達の関係は、テレビドラマみたいに都合の良い展開を迎えるわけではないようだ。
(比喩ですよ!例え話!本当に爆発したりしません!)(? 怪人は心臓が爆発することもあるが?)(私は怪人ではありません)
20180809
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