冬椿


しんしんしん、と空から真っ白な雪が降り世界を純白に染め上げていく。 寒さを感じにくい体質ではあるがスっと肺に吸い込んだ空気が心なしか冷たいように感じられこれも自分達にこと細かく気温の違いについて語る彼女の影響なのかもしれないなと自然と陶器のように滑らかで冷えた頬が緩む。

【白蛇よ何をやっている】
【おおっちょうどいいところに。 見てくれ完璧な出来栄えだろう】

人にはわからない言語を話しそう微笑む白蛇の手のひらの上には可愛らしい雪うさぎが怪訝そうに手の中を覗き込んだ黒天狗を見つめている。

【だいぶ身体が丈夫になってきたとはいえこう寒いと外には出られないだろうからね後
人の子は俺達と違って脆いからな。たかだか雪が降ってるくらいで軟弱な】
【またそんな維持の悪いこと言って】

完成した雪うさぎが溶けないよう呪いをかけながら白蛇は懐あたりをぽんぽんと軽く叩き揶揄うような目線を居心地悪そうな黒天狗に送る。肩に積もった雪を払い黒天狗は山中で摘んだ美しい冬を収めた懐を大事そうにひと撫でしふんっと鼻を鳴らす。

【・・・たまたま見頃の椿が咲いていただけだ】
【たまたま、ね】
【その不細工な雪うさぎ粉砕されたいのか】
【ああ怖い怖い。 昔から天狗は気が短いと言うけれどその中でも黒天狗は一等短気だね】

黒天狗にその気がないことはわかっているので泣き真似を交えながら白蛇は薄く笑いながら雪うさぎを懐にしまう。 万華鏡のように微笑ましくくるくると表情を変えるあの人の子がこれらの贈り物を見たらどんな顔を見せてくれるのか想像するだけで不思議と胸の奥があたたかくなる。 早くあの子に逢いたいと思っているのはきっと自分だけではないだろう。隣で空を見上げる黒天狗がふと此方を見やり視線がかち合う。

【喜んでくれるといいね】

この天邪鬼な黒天狗の瞳が和らぐのはあの人の子の前だけなのを知っているのは白蛇だけなのだ。